人生を変える寿司〜東京 板前物語〜前編
フジテレビで2025年6月22日に放送された『ザ・ノンフィクション』では、「人生を変える寿司〜東京 板前物語〜 前編」が取り上げられました。舞台は都内に7店舗を展開し、年商16億円を誇る人気寿司店。そこでは経歴や年齢を問わず、さまざまな背景を持つ人たちが板前としての人生を歩みはじめています。本記事では、番組で描かれたリアルな板前修業の様子と、人との向き合い方に悩みながらも奮闘する人々の姿を紹介します。
人生を変える寿司〜東京 板前物語〜前編
2025年6月22日にフジテレビで放送された『ザ・ノンフィクション』は、「人生を変える寿司〜東京 板前物語〜 前編」と題して、寿司店を舞台にした感動の物語を描きました。主人公は、都内に7店舗を構える人気寿司チェーンの社長・阿部浩さん(53歳)。年商16億円を誇るこの寿司店では、一般的な就職とは少し違った経緯で集まった人たちが、板前としての人生を歩もうと努力しています。番組は、その中でも特に注目される一人の板前・サワさん(31歳)に密着しました。背景や苦労を抱えた若者たちと向き合う阿部さんの姿、そしてサワさんの葛藤が丁寧に描かれていました。
年齢も過去も関係ない、板前の世界へ飛び込む人々
2024年3月、新しい仲間を迎える入社式が行われました。集まった人たちは、年齢もこれまでの経歴もバラバラで、全身に入れ墨がある人や障がいのある人、児童相談所から紹介された若者なども参加していました。阿部さんの会社では、これまでの人生を問わず「やる気があるかどうか」を重視しており、過去の経験に関係なく、誰にでもチャンスが与えられています。
阿部さん自身が板前歴35年のベテランでありながらも、弟子を厳しくも温かく育てる人柄で、多くの若者たちにとって希望の存在になっています。弟子が独立することも応援しており、ただの雇用主という立場ではなく、「育てる」ことに重きを置いています。
繰り返す無断欠勤…サワさんの苦しみと阿部さんの支え
この日、特に阿部さんが気にかけていたのが、東北出身のサワさんです。高校卒業後に上京し、寿司職人を目指して努力してきました。技術もあり、中堅どころとして店の板場を任されている信頼の厚い存在です。ところが、最近は無断欠勤が続き、職場でも心配の声が上がっていました。
この日もサワさんは出勤後3時間で「体が痛い」と言って板場を離れました。病院に同行した阿部さんが医師から聞かされたのは、サワさんが「痛風」を患っているという診断でした。無断欠勤をしたばかりの中での体調不良という事態に、サワさんは自分に対して責める気持ちを抑えきれず、涙を流しました。阿部さんはそんな彼に「大丈夫」と声をかけ、そっと寄り添いました。
家賃の滞納と支援の決断
サワさんの勤務日数が減るにつれて、生活にも影響が出てきました。給料が下がったことで、家賃の支払いができなくなってしまったのです。阿部さんは、その事実を知り、自ら家賃を建て替えるという判断をします。ただし、それには条件がありました。「仕事ができないなら退去してもらう」という現実的な対応です。情だけで支援するのではなく、きちんと自立への道筋を示した形でした。
5時間に及ぶ説得と職場復帰
阿部さんはサワさんの自宅を訪れ、出勤するよう促しますが、サワさんの気持ちはすぐには動きません。話し合いは5時間にも及びました。時間が経過する中で、ようやくサワさんが決意し、阿部さんに連れられて久々に職場に戻ってきました。仲間たちは温かく迎え入れ、サワさんは再び板場に立つことができました。
その日の厨房では、阿部さんが用意した「まかない料理」がテーブルに並んでいました。実家から送られてきた食材を使い、毎朝3時に起きて手作りしているというこのまかないは、23年間一度も欠かしたことがありません。弟子たちを思いやる心がそこにも込められており、食事を通して支える阿部さんの姿が印象的でした。
再び姿を消すサワさん、そして阿部さんからの通告
順調に思えた復帰から数日後、店の従業員からサワさんと連絡が取れないという連絡が入りました。不動産屋から預かった鍵を使って部屋に入ると、そこにはサワさんの姿はなく、行方がわからなくなってしまいました。
翌日、ようやくサワさんからメールが届きました。電車で通勤中に降りる駅を乗り過ごし、気まずくてそのまま友人の家に泊まっていたというのです。阿部さんはサワさんにすぐ店に来るよう伝えました。1時間後、サワさんは戻ってきましたが、阿部さんはこのとき初めてサワさんを突き放す態度をとりました。それは、これ以上同じことを繰り返させないための、最後の通告でした。
2日後の決断、サワさんが選んだ道
阿部さんの通告から2日後、サワさんから連絡が入りました。「伝えたいことがある」という内容でした。話の中でサワさんは、「実家に戻る」と決意を語りました。しかし、阿部さんは実家に戻ればまた引きこもってしまうのではないかと心配しています。苦労しながらも東京で努力を続けてきたサワさんが、これからどう生きていくのか。答えはまだ出ていません。
今回の『ザ・ノンフィクション』では、技術だけでなく、人としてどう支え合い、どう育っていくかという深いテーマが描かれていました。次回の後編では、サワさんのその後と、阿部さんの店に集まる新たな若者たちの物語が語られることが期待されます。
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