娘の「応援したい」が家族を動かした日
2025年4月11日（金）午前2時06分から放送されたNHK総合のミニドキュメンタリー『Jリーグと私 あの試合を忘れない #10 名古屋』では、名古屋グランパスを愛する一家の、娘の成長と家族の挑戦が描かれました。発達障害を抱える7歳の少女が「ゴール裏で応援したい」と言った一言から始まるこの物語は、たった5分の映像の中に、サッカーの持つ力と家族の愛情、子どもの勇気が詰まった心動かされる内容でした。
スタジアムから遠ざかっていた理由
主人公は愛知県碧南市に暮らす山田理沙さん。小学2年生の女の子です。理沙さんは2歳のころから、大きな音に強く反応し、パニックになることがありました。人がたくさん集まる場所も苦手で、外出する際も慎重な対応が求められてきました。
3歳のとき、医師からは**注意欠如・多動症（ADHD）と自閉スペクトラム症（ASD）**の診断を受けました。音や光、視覚・聴覚の刺激に過敏に反応する特性があることから、家族は理沙さんの安心を第一に考え、にぎやかな場所への外出はできるだけ控えるようになっていたのです。
理沙さんの両親である加奈さんと一輝さんは、もともと熱心な名古屋グランパスのサポーターでした。理沙さんもその影響を受けてグランパスが大好きになりましたが、スタジアムでの観戦は「難しい」と家族全員が思っていた夢のような出来事でした。
小さな「行きたい」が家族を動かす
理沙さんの気持ちに変化が現れたのは、小学生になってからです。学校では特別支援学級に通いながら、地域の養育支援プログラムにも参加し、少しずつ社会との関わりが増えていきました。家族以外の大人や友達と関わる中で、不安定だった気持ちが落ち着く場面が増え、自分の考えを言葉にできるようになってきたといいます。
ある日、理沙さんは両親に「ゴール裏で応援したい」と伝えました。これは家族にとってまさに予想外の言葉でした。スタジアムの中でも特ににぎやかで刺激の強いゴール裏は、サポーターの熱い声援が集まり、絶えず旗が揺れ、鳴り物や手拍子が響く場所です。
これまで避けてきたような空間に、理沙さんが自ら行きたいと願った。その思いは、理沙さんの中にある「グランパスを応援したい」という気持ちが、本物であることを示すものでした。
初めてのスタジアム、家族の準備と思いやり
理沙さんの一言を受けて、家族は真剣に話し合いました。そして「やってみよう」と決断し、スタジアム観戦を実現するための準備を始めました。理沙さんが安心して観戦できるように、多くの配慮がなされました。
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音への刺激を抑えるために耳栓やノイズキャンセリングのヘッドホンを準備
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万が一に備えて、すぐに休めるスペースや避難ルートを事前に確認
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理沙さんが落ち着けるアイテム（ぬいぐるみやお守りなど）を持参
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家族がすぐそばにいてサポートできるよう座席位置にも配慮
そして迎えたのが、2024年のJリーグカップ準決勝、名古屋グランパスと横浜F・マリノスの対戦が行われた豊田スタジアムでした。
響きわたる応援の中で見せた成長の姿
試合当日、スタジアムには多くのサポーターが集まり、キックオフ前から熱気があふれていました。大歓声の中、理沙さんはゴール裏で応援団と一緒に手拍子をし、身体を動かしながら応援する姿を見せました。
それは両親にとって想像以上の姿でした。周囲の大きな音に過敏に反応することなく、理沙さんは堂々とその場に立ち、チームを応援していたのです。心配していたパニックも起こらず、むしろ理沙さん自身が楽しそうに応援している様子に、両親は驚き、そして感動したといいます。
この瞬間、家族は「娘の成長」を心から実感しました。そして、これまでの不安や心配、悩みがあったからこそ、この日の喜びはとても大きなものとなったのです。
サッカーがもたらすつながりと勇気
今回のエピソードが教えてくれたのは、「好き」という気持ちが持つ力と、その気持ちに寄り添う家族の支えです。理沙さんが見せた「応援したい」という想いは、小さな願いかもしれませんが、その一歩が大きな変化を生みました。
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サッカーはただのスポーツではなく、人と人とを結びつけ、勇気を与える存在であること
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発達障害というハードルがあっても、思いを持ち行動することで未来が開けること
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そして、どんな状況でも「家族の思いやり」があれば、不可能と思えたことも実現できること
これらはサッカーの試合を通じて理沙さんが体験し、家族が再確認した大切な価値でした。
番組情報まとめ
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番組名：Jリーグと私 あの試合を忘れない #10 名古屋
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放送日：2025年4月11日（金）
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放送時間：午前2時06分〜2時11分
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放送局：NHK総合
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舞台：豊田スタジアム（名古屋グランパス vs 横浜F・マリノス）
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登場人物：加奈さん・一輝さん・理沙さん（愛知県碧南市在住）
家族にとって“あの試合”は、ただの試合ではありませんでした。それは、娘の未来への第一歩となった特別な1日だったのです。
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