クレイジージャーニーSP
丸山ゴンザレスが踏み込むハワイの裏側と、Awichが向き合うカンボジアの過去。その二つの旅は、まるで光と影が交錯するように、私たちの心へ静かに迫ってきます。
このページでは『クレイジージャーニーSP(2026年2月9日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
楽園のすぐ隣に潜む危機、そして歴史に刻まれた傷跡と未来への鼓動。旅人たちが見た“真実”を、ここから一緒に辿っていきましょう。
楽園の裏側へ:丸山ゴンザレスが見たハワイの現実
TBSの人気紀行バラエティクレイジージャーニーSPでは、裏世界ジャーナリストの丸山ゴンザレスとラッパーAwichが、それぞれハワイとカンボジアの“表と裏”に踏み込みました。楽園リゾートとして語られる場所に、ドラッグや貧困、虐殺の記憶といった重い現実が重なっていることを、旅の目線で伝えていく回でした。
スタジオにはMCの設楽統と小池栄子が登場し、日本人にとって身近なハワイが、実は深刻なドラッグ問題に直面していること、そして観光パンフレットにはまず載らない“裏側”の景色があることを紹介します。丸山ゴンザレスはドラマ「リブート」の裏社会監修も務める、世界の裏社会に詳しいジャーナリスト。その経験を生かし、観光客が普通は足を踏み入れないエリアまでカメラを連れて行きました。
後半では、沖縄出身の人気ラッパーAwichが、独裁者ポル・ポトに音楽を奪われたカンボジアを旅します。現地の国民的スターラッパーVannDaと出会い、スラム街や地雷被害者の現状に触れながら、最後は観客1万人以上が集まったスタジアムライブのステージへ。音楽が過去の悲劇とどう向き合い、未来を変えようとしているのかが、大きなテーマになっていました。
観光天国ワイキキとホームレス、物価高騰のいま
まず番組が向かったのは、日本人の定番リゾートハワイのワイキキです。ハワイ州の人口はおよそ145万人ほどと言われますが、観光客は年間約1000万人。番組でも紹介されたように、まさに“観光で成り立つ島”になっています。ワイキキビーチ沿いには高級ホテルやショッピングモールが並び、プール付きコンドミニアムやブランドショップに囲まれた「夢のバケーション」の世界が広がっています。
しかし丸山ゴンザレスが足を延ばしたのは、その華やかな表通りだけではありませんでした。ビーチから少し離れたアラモアナ周辺では、新築マンションの家賃が月70万円ほどという話が紹介され、現地の人にとってどれだけ生活コストが高いかが伝わってきます。ハワイは食料の多くをアメリカ本土から輸入しており、番組内でも食料自給率は約10%と説明されました。輸送費がそのまま物価に上乗せされるため、スーパーの食パンやトイレットペーパーに至るまで日本よりかなり割高になっているのです。
その一方で、アラモアナビーチパークやワイキキビーチの芝生には、多くのホームレスがテントや寝袋で暮らしている様子も映し出されました。観光客から見ると「少し物価が高い南国リゾート」ですが、現地住民の中には家賃高騰で住まいを失い、車や公園で生活する人が増えている現実があります。世界的な観光地ワイキキの光と影が、同じ画面の中に同居していました。
フェンタニルトライアングルとハワイをむしばむ殺人ドラッグ
ハワイ編の核心として取り上げられたのが、フェンタニルという“殺人ドラッグ”です。フェンタニルは本来、医療の現場で使われる強力な合成オピオイドですが、ヘロインの数十倍とも言われる強さがあり、少量で致死量に達してしまいます。アメリカ本土ではここ数年、フェンタニル関連の死亡事故が急増しており、オアフ島でも薬物の過剰摂取による死者が島全体で増えていると報じられています。
番組が注目したのは、ホノルルのダウンタウンにある「フェンタニルトライアングル」と呼ばれる一帯です。ここは救急隊や警察が「オーバードーズ(薬物過剰摂取)」の出動要請を繰り返し受けているホットスポットで、チャイナタウン周辺のごく限られたエリアに、路上生活者や薬物依存症の人々が集まっていると紹介されました。現地メディアの調査でも、この“トライアングル”は島内でも特に救急搬送が多い地区の一つとされています。
丸山ゴンザレスの取材班は、日中のチャイナタウンを歩き、路上に座り込む人々や、明らかに意識がもうろうとしている人たちの姿を映し出します。声をかけても会話にならないケースも多く、「これが観光パンフレットには載らないハワイのもう一つの顔」として、視聴者に突きつけていました。
夜になると雰囲気はさらに一変し、路地裏では違法薬物の売人が暗躍します。丸山が声をかけた売人に爆竹を投げつけられるシーンは、取材の危険さと緊張感を象徴していました。その後、別の売人への直接取材では、「フェンタニルはまだ一部だが、覚醒剤の方が人気」「生活が苦しくてドラッグに手を出す人が多い」といった生々しい証言も飛び出します。
スタジオパートでは、ハワイ州でのフェンタニルによる死者が2019年から6倍に増えているというデータも紹介されました。フェンタニルは粉末だけでなく、偽造された錠剤や電子タバコのリキッドにも混入されることがあり、本人がオピオイドを使っている自覚がないまま依存や致死量に達するケースもあると指摘されています。
ポル・ポト大虐殺が残したカンボジアの深い傷跡
後半は舞台をカンボジアに移し、ラッパーAwichが現地で人気のラッパーVannDaと共に、独裁者ポル・ポト政権の影をたどる旅に出ます。カンボジアは世界遺産アンコール・ワットで知られる観光地ですが、1970年代後半にクメール・ルージュ政権のもとで大虐殺が起き、当時の人口の4分の1にあたる170万〜180万人が命を落としたとされています。
番組では、ポル・ポト政権が「完全な農業国家」を目指し、都市から農村への強制移住を行ったこと、眼鏡をかけた知識人や教師、芸術家が“思想的に危険”とみなされ、無条件に処刑されたことが紹介されました。音楽やポップカルチャーも“不要なもの”として禁止され、多くのミュージシャンが命を落としたり、演奏の場を失ったりしました。まさにポル・ポトは、国から音楽そのものを奪った存在だったのです。
現在もカンボジア各地には、クメール・ルージュ時代に敷設された地雷が数百万個単位で残されていると言われ、番組でも地雷被害にあった男性へのインタビューが放送されました。足を失った人々が、NGOや日本の支援団体の職業訓練を受けながら、縫製や工芸など新たな仕事を得て生きている姿は、過去の戦争の爪痕と、そこから立ち上がろうとする今の社会の両方を映し出していました。
さらに、富裕層向けの開発で立ち退きを迫られた人たちが押し込められたスラム街「パンコ地区」にもカメラが入りました。ここでは、インフラや教育から取り残された子どもたちが暮らしており、元ギャングのKKがスラムの子ども向けの学校を運営している様子が紹介されました。犯罪に流れざるをえなかった背景には、内戦と虐殺の歴史、そして経済格差が複雑に絡み合っていることが伝わってきます。
VannDaとAwich、音楽で過去と向き合う歴史的ライブ
旅の終盤、Awichはシアヌークビルの市場でVannDaと対面します。VannDaは、カンボジアで“彼を知らない若者はいない”と言われるほどの人気ラッパーで、伝統音楽とヒップホップを融合させた楽曲『Time To Rise』がYouTubeで数千万回再生され、一躍アジアを代表するアーティストの一人となりました。
VannDaが尊敬する番組として「料理の鉄人」を挙げ、日本のポップカルチャーへの憧れを語る場面も印象的でした。自宅では父親を紹介し、内戦やポル・ポト時代を生き抜いた世代と、その子どもである自分たちの世代が、音楽を通じてどのように価値観を受け継ぎ、変えていこうとしているのかがにじみ出ていました。
クライマックスは、プノンペンのオリンピックスタジアムで行われた大規模ライブです。ここはかつてプロパガンダ集会にも使われた場所ですが、この日は1万人以上の観客がスマホのライトを掲げ、ステージのVannDaとAwichのパフォーマンスに熱狂しました。政治や歴史によって押しつぶされてきたスタジアムが、今は若者たちの自由な表現の場として再び光を放っている――そんな象徴的なシーンでした。
ラストには、Awichが今回の取材をもとに書き下ろしたラップを披露し、Wax On Wax Off Japan Remixが配信中であることも紹介されました。日本・沖縄とカンボジア、そして過去と現在をラップでつなぐ取り組みは、「音楽を奪われた国が、音楽で未来を作り直す」プロセスそのものに見えます。
この記事は、放送内容をもとに構成していますが、編集の都合などにより実際のオンエアと細部が異なる場合があります。


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