柳樂倫さん一家の「月2万円生活」を支える山暮らし
『The秘境生活〜何もなくてもそれが幸せ〜(2026年8月22日)』で取り上げられる、広島で月2万円の原始生活を送る4人家族。東広島市の山中で自給自足の暮らしを続ける柳樂倫(なぎら・りん)さん一家は、食べ物だけでなく家具や暖房まで「買う前に作る」生活を実践しています。その原点には2014年の広島土砂災害があり、現在は縄文柴犬と里山を守る活動にも取り組んでいます。
この記事でわかること
- 柳樂倫さん一家が送る自給自足生活
- 月2万円生活につながる「買わずに作る」工夫
- 山暮らしを始めるきっかけになった人生の転機
- 現在の仕事と縄文柴犬を使った里山での活動
柳樂倫さん一家は東広島の山で月2万円生活を送る4人家族
柳樂倫さん一家が暮らしているのは、広島県東広島市河内町の山中です。
夫の倫さん、妻の由美子さん、長男の一朗太さん、長女のあるさんという4人家族で、自給自足を目指した山暮らしを続けてきました。2025年の紹介では、この場所で暮らし始めて約8年になるとされています。
特徴的なのは、単に「田舎へ移住した」というだけではないことです。
食べるものを育て、家具や生活用品を作り、薪を利用しながら、暮らしに必要なものをできるだけ身近な自然から得ています。
2026年7月に紹介された暮らしでは、畑で年間100種類以上の野菜や米を育て、食材の多くを自給。お風呂も薪で沸かす五右衛門風呂でした。
冬には冷蔵庫の電源を入れず、食材をクーラーボックスで保存することもあります。子どもたちも幼い頃から、おもちゃやペットボトル飲料をほとんど買わない生活に親しんできました。
節約そのものを目的に我慢を重ねるというより、「必要なものを自分たちで生み出す」ことが日常になっている家族です。
約6000坪の山と築130年の古民家で続ける自給自足生活
一家の暮らしを象徴するのが、広大な土地と古民家です。
過去に自宅が紹介された際には、敷地は約6000坪。母屋は築約130年で、家賃は月8000円と紹介されました。家のすぐそばには古墳もあります。
ただ、古民家をそのまま使っているわけではありません。
20年ほど空き家だった建物を借り、廃材を利用して自分たちで改修。ストーブ、囲炉裏、床暖房まで手作りしています。
家具だけでなく、バッグやサンダル、カトラリーといった身近な道具まで自作するのが柳樂家のスタイルです。
一見すると不便に感じる暮らしですが、必要なものを店で買うことが当たり前ではないため、生活費を大きく抑えられます。
畑では野菜や米を育て、味噌や調味料、発酵食品なども手作り。由美子さんが語った「不便も学びになる」という考え方からも、便利さを捨てた生活というより、自分たちで暮らしを組み立てることそのものを大切にしていることが伝わってきます。
月2万円で暮らせる理由は家賃8000円と「買わずに作る」暮らし
4人家族で月2万円という数字を見ると、「食費だけでも足りないのでは」と驚きます。
柳樂家の暮らしを見ると、一般家庭では毎月支出になるものを、そもそもお金を払って手に入れない仕組みがいくつもあります。
まず住居費は、紹介された家賃が月8000円。さらに食材は畑から取れ、年間100種類以上の野菜や米を栽培しています。
暖房には薪を活用し、風呂も薪で沸かします。冬には冷蔵庫の電源を使わず、家具や生活用品も廃材や山にある材料から作ります。
つまり、
家賃を抑える
+食料を育てる
+エネルギーを自然から得る
+生活用品を作る
という暮らしが重なることで、現金を使う場面そのものが少なくなっています。
とはいえ、完全に買い物をしない生活ではありません。
柳樂家でも家族で「食べたいもの」を話し合い、パンなどを購入することがあります。何も買わないことをルールにするのではなく、自分たちで作れるものは作り、欲しいものにはお金を使うというメリハリがあるのも興味深いところです。
2014年の広島土砂災害が山暮らしを選ぶ転機になった
柳樂倫さんが最初から自給自足生活をしていたわけではありません。
以前は広島市内で約10年間、整体師として働いていました。
人生の方向を大きく変えたのが、2014年8月に発生した広島土砂災害です。
当時、柳樂さんは安佐南区に暮らしていました。身近な地域が大きな被害を受け、子どもの頃から遊んできた阿武山の姿も変わりました。
この経験から、「子どもたちに自然環境を残すために生きる」という思いを強くし、山での暮らしへと向かっていきます。
ここが柳樂家の暮らしを見るうえで、とても大事な部分です。
月2万円で生活するために山へ入ったのではなく、自然とどう付き合って生きるのかを考え直した結果が、現在の低コストな自給生活につながっているからです。
その後、長男の一朗太さんに自然の中でのびのび育ってほしいという思いも重なりました。山へ移った後、不登校だった一朗太さんに笑顔が増え、学校へ通うようになったというエピソードも紹介されています。
暮らす場所を変えたことが、家計だけでなく家族の生活そのものを変える転機になりました。
整体師から転身した倫さんの現在の仕事と家族の収入
山暮らしには、少ないとはいえ現金収入も必要です。
倫さんは現在、山などに長期間埋まった古い木である**「埋もれ木」を使ったインテリア家具作り**を仕事にしています。
木を探しに山へ入る際には縄文柴犬を連れて行き、クマやイノシシなどの野生動物が近づいていないかを犬たちに察知してもらうこともあります。仕事と犬との生活が完全に分かれているのではなく、山での暮らし全体がつながっています。
柳樂家では、体のことを考えたヴィーガン弁当の製造・販売にも取り組んできました。動物由来の食材を使わない弁当で、自宅には手作りの調味料や発酵食品も並んでいます。
さらに倫さんは、美しいちきゅう創造team木靈の代表として里山再生にも取り組んでいます。
森林の間伐、薪の活用、河川整備、子どもが遊べる森づくり、ツリーハウスや間伐材遊具などを通して、荒れた里山へ人の手を入れる活動です。
会社員として一定の給料を得る生活とは違い、暮らし・ものづくり・食・森林活動を組み合わせて生きているのが倫さんの現在です。
縄文柴犬と里山再生に取り組み「3家族で暮らせる村」を目指す
柳樂家の暮らしでもう1つ外せない存在が、縄文柴犬です。
縄文柴犬は、縄文時代の遺跡から見つかった犬の骨格に近い特徴を持つ日本犬です。一般的な柴犬より鼻先が長く、引き締まった体形などに特徴があります。
柳樂家では縄文柴犬を育てるだけでなく、野生動物と人間の生活圏を分ける役割にも生かしています。
クマやシカなどが近づいた際には犬が追い払いますが、深追いはさせません。動物を倒すことが目的ではなく、**人間の暮らす場所から野生動物を遠ざける「棲み分け」**を目指しています。
倫さんはNPO法人縄文柴犬研究センターの活動にも関わり、森林整備と縄文柴犬を組み合わせた鳥獣被害対策を実践しています。
そして柳樂家の山暮らしは、今の4人家族だけで完結するものではありません。
倫さんが思い描いているのは、果樹園を作り、3家族ほどが集まって一緒に暮らせる村を作ることです。
約6000坪の土地、自給できる食料、森から得るエネルギー、縄文柴犬との暮らし。
現在の生活は、便利な都市生活から離れただけの「原始生活」という言葉では収まりません。
2014年の災害をきっかけに生き方を変えた柳樂倫さんが、自然を次の世代へ残しながら、人と動物が共に暮らせる小さな共同体を作ろうとしている途中と見ると、この家族の暮らしがより深く見えてきます。
参考リンク


コメント