「立川こはる」から真打へ、芸歴20周年を迎えた立川小春志
『徹子の部屋(立川小春志&蝶花楼桃花 人気の女性噺家2人が登場)(2026年8月21日)』に出演する立川小春志さんは、立川談春さんの一番弟子として古典落語を磨き続けてきた真打落語家です。2006年に「立川こはる」として入門し、2023年に真打へ昇進。2026年は芸歴20周年を迎え、全国で記念落語会を開催します。女性が少なかった落語界へ飛び込み、現在まで歩んできた20年をたどります。
この記事でわかること
- 立川小春志さんが立川談春さんへ弟子入りした経緯
- 「立川こはる」から「立川小春志」へ改名した節目
- 女性落語家として歩んできた20年間
- 2026年の20周年ツアーや初の落語アルバムCD
立川小春志は立川談春門下の真打落語家
立川小春志(たてかわ・こしゅんじ)さんは、1982年10月7日生まれ、東京都港区出身の落語家です。
師匠は立川談春さん。談春一門の一番弟子でもあります。
2006年3月に入門し、2012年6月に二ツ目へ昇進。2023年5月5日に真打へ昇進しました。出囃子は「二人椀久」、紋は「左三階松」です。
立川流では、2023年の真打昇進によって初の女性真打となりました。
ただ、小春志さんの経歴で興味深いのは、子どもの頃から落語家を目指していたわけではないことです。
大学では農学を学び、研究対象としていたのは「トゲトビムシ」。大学院まで進んで研究を続けていました。
落語との出会いは大学の落語研究会でした。
最初は落語そのものより、先輩たちの雰囲気に引かれて入部したほどです。それが寄席へ通うようになると次第にのめり込み、立川談春さんの高座を見たことで人生の方向が大きく変わりました。
談春さんが演じる「らくだ」「富久」「文七元結」といった大きな噺に圧倒され、初めて本気で「落語家になりたい」と考えるようになったのです。
2006年に「立川こはる」として落語の世界へ
落語家を志した小春志さんですが、すぐに弟子入りできたわけではありません。
当時は現在以上に女性落語家が少なく、小春志さん自身も「女性には厳しい世界だ」と感じていました。
それでも、
落語家になるなら立川談春さんの弟子になりたい
という思いは変わりませんでした。
大学院を中退して弟子入りを申し込みますが、最初は断られます。
談春さんの師匠である立川談志さん自身が、当時は女性が落語を演じることに否定的な考えを示していた時代でもありました。
それでも諦めず、2006年3月31日に談春さんのかばん持ちを経験。見習いとして修業を始め、その後「立川こはる」という名前をもらって前座となりました。
前座時代は落語だけを覚えればいいわけではありません。
師匠の着替えを手伝う、着物を畳む、楽屋で立ち働く、太鼓を打つなど、落語家として必要な作法を身につけていきます。
さらに立川流で二ツ目になるためには、多くの落語を覚えるだけでなく、かっぽれ、三味線、都々逸、太鼓、講談など幅広い芸を身につける必要があります。
こうした修業を重ね、2012年6月に二ツ目へ昇進しました。
2023年の真打昇進で立川小春志に改名
大きな節目が訪れたのが2023年です。
5月5日に真打へ昇進し、17年間名乗ってきた「立川こはる」から「立川小春志」へ改名しました。
落語家の「真打」は、単に経験年数を重ねれば自動的になれる肩書ではありません。
真打になると一門や興行の中でも大きな責任を担い、自分の名前で高座の最後を務める「トリ」を取る立場にもなります。
小春志さんの場合、真打昇進披露興行は2023年10月28日から11月1日まで有楽町朝日ホールで開催されました。
師匠の立川談春さんとともに、柳家三三さん、柳亭市馬さん、柳家喬太郎さん、立川志の輔さん、春風亭一之輔さん、笑福亭鶴瓶さん、春風亭昇太さんなど、多くの落語家・ゲストが日替わりで出演しています。
「こはる」という名前で長く知られていただけに、現在でも過去の出演情報や記事では「立川こはる」の名前を目にします。
こはる=現在の立川小春志さん
と覚えておくと、これまでの活動を追いやすくなります。
女性落語家として歩んだ20年
現在では女性落語家も珍しい存在ではなくなりましたが、小春志さんが入門した2006年は状況が違いました。
本人も若い頃、女性落語家の出番になると客が席を立つ場面を目にし、「女性には厳しい世界なのだ」と感じていたと振り返っています。
修業の場も周囲は男性ばかり。
それでも小春志さんが続けられた原動力は、非常にシンプルでした。
落語そのものが好きだったことです。
大学時代から好きな噺家が出演すれば何日も寄席へ通うほど熱中し、弟子入り先についても「修業しやすい一門」を選ぶのではなく、立川談春さん以外は考えられないという姿勢を貫きました。
そして、小春志さんが特にこだわってきたのが古典落語です。
古典落語には男性を主人公にした噺も多く、長年男性の噺家によって演じ継がれてきました。
女性だから演じ方を大きく変えるのではなく、声や身体の違いを受け止めたうえで、古典落語そのものをどう伝えるか。
小春志さんは長い時間をかけて、この課題と向き合ってきました。
2023年の真打昇進は、単に階級が上がっただけではなく、そうした積み重ねの大きな節目でもありました。
蝶花楼桃花とは同期世代として節目を迎える
2026年8月21日に一緒に出演する蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)さんも、2006年に落語界へ入った同期世代です。
桃花さんは春風亭小朝さんに入門し、当初は「春風亭ぽっぽ」、その後「春風亭ぴっかり☆」として活動。2022年に真打へ昇進し、現在の蝶花楼桃花を襲名しました。
所属する一門や修業環境は違いますが、小春志さんとは同じ2006年入門です。
2026年9月1日には、小春志さん、蝶花楼桃花さん、春風亭柳枝さんの3人による入門20周年記念落語会も開催されます。3人は二ツ目時代から同じ時代を歩んできた落語家です。
さらに小春志さんと桃花さんは、9月12日に東大阪市文化創造館、9月13日に神戸朝日ホールで「芸歴20周年記念二人会」を開催します。
2人が並ぶことで見えてくるのは、単なる「女性落語家2人」という共通点だけではありません。
女性落語家がまだ少なかった2006年から、それぞれ違う一門で修業し、二ツ目、真打へ進み、20年後にも高座へ上がり続けているという共通の時間があります。
2026年は、その20年間を振り返る節目の年になっています。
2026年は芸歴20周年記念ツアーを開催
小春志さんは2026年3月で、立川談春さんへの入門から20周年を迎えました。
その節目に合わせ、2026年9月から芸歴20周年記念落語会を各地で開催します。
スタートとなる東京公演は9月18日、文京シビックホール小ホール。
その後も大阪、仙台、埼玉、釧路、阿寒湖、名古屋、幕別、旭川、福井、横浜などへ続き、2027年には松山、高知、福島、福岡、神戸、山梨でも公演が予定されています。
しかも、すべて同じ噺を演じるツアーではありません。
公式スケジュールには、
「五人廻し」
「百川」
「五貫裁き」
「居残り佐平次」
「夢金」
「牡丹灯籠より忠僕孝助の槍」
「鼠穴」
「御神酒徳利」
「文七元結」
など、会場ごとに異なる演目が並んでいます。
芸歴20周年という節目を記念しながら、20年間で磨いてきた古典落語を各地で披露するツアーになっています。
テレビで初めて小春志さんを知った人にとっては、実際の高座を見る入口にもなりそうです。
初の落語アルバムCDも発売へ
20周年は高座だけではありません。
小春志さんは、落語5席を収録した自身初の落語アルバムCD「FLAME SCALE 01」を制作しています。
公式SNSでは2枚組のアルバムとして案内され、2026年9月18日の20周年東京公演に合わせたリリースが告知されています。
これまでにも「立川こはる」時代に音楽CD「あこはる。」「あこはる。2」を発表していますが、今回の作品は落語そのものをまとめた初のアルバムという点が違います。過去のCD作品については公式プロフィールにも掲載されています。
寄席や落語会は、その日の客席との間で生まれるライブ芸能です。
一方、音源として残れば、20周年時点の小春志さんの高座を後から繰り返し聴くことができます。
20年という節目に「現在の芸」を形として残す作品にもなります。
真打昇進後の現在の活動
2023年に真打へ昇進してからも、小春志さんの中心にあるのは変わらず高座で古典落語を演じることです。
2026年8月だけを見ても、文京シビックホールでの独演会、横浜にぎわい座での公演、立川流の寄席など数多くの高座へ出演しています。
一方で活動は落語会だけに限りません。
これまでテレビ、ラジオ、アニメ、出版などにも活動を広げてきました。アニメ『昭和元禄落語心中』では、助六(初太郎)の幼少期の声も担当しています。
そして2026年は、入門20周年記念落語会、蝶花楼桃花さんとの二人会、初の落語アルバムCDと、大きな企画が続きます。
2006年、「女性には厳しい」と感じながらも大学院を中退して立川談春さんの門を叩いた立川こはるさん。
2012年に二ツ目となり、17年間使った名前を2023年に「小春志」へ改めて真打へ。
そして2026年には芸歴20周年を迎えました。
立川小春志さんにとって20周年は到達点というより、真打として古典落語をさらに磨いていく新しい区切りといえます。


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