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パンフォーユー矢野健太|京大・電通から群馬へ戻り「パンスク」を生んだ人生【ガイアの夜明けで紹介】

起業家

京大・電通から群馬へ戻り、パン業界を変えた矢野健太

『ガイアの夜明け(幸せを生む!パンとおにぎり~成長より持続、食の新戦略~)(2026年8月21日)』で描かれるのが、パンフォーユーを創業した矢野健太さんです。京都大学を卒業して電通に入社しながら、地元・群馬へ戻って起業。地域のパン店と全国の消費者を冷凍技術とITで結び、パンの定期便「パンスク」へ発展させました。失敗から生まれた事業は、常設店やAI活用へと広がっています。

この記事でわかること

  • 矢野健太さんがパンフォーユーを創業するまでの経歴
  • 電通を辞めて群馬へ戻った人生の転機
  • 冷凍パンの定期便「パンスク」が生まれた背景
  • 食品ロスや長時間労働を減らす新しい取り組み

矢野健太はパンフォーユーを創業した経営者

矢野健太さんは、群馬県桐生市に本社を置く株式会社パンフォーユー代表取締役です。

1989年生まれ。群馬県太田市出身で、京都大学経済学部を卒業後、電通に入社しました。その後は教育系ベンチャー、地域系NPOを経験し、2017年1月にパンフォーユーを設立しています。

会社が掲げているビジョンは「魅力ある仕事を地方にも」。地域のパン店が抱える販路や経営上の課題を、冷凍技術とITを使って解決する事業を展開してきました。

現在は個人向けのパン定期便だけではありません。

企業向けの福利厚生サービス、事業者向けのパン流通、ギフト、実店舗などへ事業領域を広げています。2026年6月には栃木県鹿沼市の福田屋鹿沼店にインストアベーカリーも開設しました。

「パンをネットで売る会社」というより、地域のパン店が場所に縛られず商売できる仕組みを作る会社と考えると、その事業が分かりやすくなります。

京都大学卒業後に電通へ進んだ異色の経歴

起業家として目を引くのが、京都大学から電通へ進んだ経歴です。

矢野さんは2011年に京都大学経済学部を卒業し、新卒で電通へ入社しました。しかし2014年に退職しています。

その人生観に大きな影響を与えた出来事として語られているのが、東日本大震災です。

大手企業で働き続ける道もありましたが、震災をきっかけに自分の生き方を考え直し、「地方にいい仕事をつくりたい」という方向へ進んでいきました。

電通退職後すぐに現在の会社を完成させたわけではありません。

教育系ベンチャーや地域系NPOでの経験を重ねた後、地方で雇用を生み出す事業を模索し、2017年の創業へつながっています。

華やかな学歴や大企業勤務そのものよりも、そこで決められた道を歩き続けず、地方で仕事を生み出す側へ回ったことが大きな転機でした。

東京から群馬へUターンした人生の転機

矢野さんと群馬とのつながりは、単に会社の所在地を地方に置いたというものではありません。

1989年に生まれ、小学生の頃に群馬県桐生市へ移り住んでいます。その後、大学進学と就職で地域を離れましたが、再び群馬を事業の拠点に選びました。

ここで重要なのが、地方へ戻ること自体を目的にしなかったことです。

目指したのは、地方に住みながら全国を相手にできる仕事を作ることでした。

パンは地域との結びつきが強い一方、販売できる範囲には限界があります。店から遠く離れれば、焼きたての商品を届けることは難しくなります。

そこで、地域にある魅力的な商品を店の商圏を越えて流通させる仕組みへ目を向けました。

群馬へ戻ったことと、全国の地方ベーカリーを支える現在の事業は別々の話ではありません。

「地方にも魅力ある仕事を」という考えが、そのまま会社のビジネスモデルへつながっています。

地方のパン店を支える事業を始めた理由

現在の成功だけを見ると、最初から冷凍パンの定期便を思いついたようにも見えます。

しかし、創業期には失敗が続いています。

当初は業務用冷凍パンメーカーと提携し、冷凍パンをインターネットで販売する事業に挑戦しました。ところが思うように売れず、提携先から契約解消を告げられるほど厳しい状態になりました。

会社設立時には、オーダーメイドのパンを作る構想もありました。

試した事業が次々とうまくいかなかったからこそ、「何を作って売るか」だけではなく、すでに地域に存在する優れたパン店をどう支えるかへ発想が変わっていきます。

地方の小さなパン店には、おいしい商品を作れても販売範囲が限られるという問題があります。

一方で、多くの種類を店頭に並べれば売れ残りが発生し、作った分が廃棄につながることもあります。

そこで全国から注文を受けられれば、店の立地だけに売上を左右されにくくなります。

矢野さんがたどり着いたのは、パンそのものを作る会社になるよりも、パン職人が作った商品を全国へ届けるための裏方になることでした。

冷凍技術で焼きたてのおいしさを届ける仕組み

この事業を成立させた重要な技術が、パンの冷凍方法です。

通常、パンは時間がたつにつれて水分が失われ、食感や風味が変化します。

パンフォーユーでは、独自の袋と冷凍するタイミングを組み合わせ、一般的な冷凍庫を使いながらパンの品質を保つ仕組みを構築しました。

店側にとって大きいのは、専用の大型冷凍設備を新たに導入しなくても利用できる点です。

焼き上げたパンを専用袋へ入れて冷凍することで、遠く離れた消費者へ配送できるようになります。購入した人は解凍や温め直しをして食べられます。

つまり冷凍する目的は、「長期間置いておく」ことだけではありません。

店頭でしか売れなかったパンに、新しい商圏を作ることが重要なのです。

群馬の店が東京へ、北海道の店が九州へ、といった販売が可能になれば、人口や店の立地に左右されにくくなります。

地域のパン店を守りながら全国へ販売するという事業は、この冷凍技術があって初めて成立しました。

パンの定期便「パンスク」が生まれるまで

冷凍技術と全国のパン店とのネットワークから生まれた代表的なサービスが、「パンスク」です。

サービス開始は2020年2月。全国の提携店の中から選ばれたパンが、冷凍された状態で利用者へ届く定期便です。どの店から届くのかが事前には分からず、知らなかった地域のパン店と出会えることも特徴になっています。

店側にもメリットがあります。

注文に応じて必要な量を生産できるため、店頭に大量の商品を並べて売れるのを待つ方法とは異なります。

日本サービス大賞では、受注生産によって時間に融通を持たせられること、食品ロスの削減につながること、全国への販路拡大によって地域活性化へ貢献する点などが評価され、第4回の農林水産大臣賞を受賞しました。

2020年に始まったサービスは、2023年9月時点で会員数4万人、提携ベーカリー約100店まで広がっていました。

売れない商品を冷凍するのではなく、全国に買ってくれる人を確保してから作れる流通へ変えたところに、このサービスの強みがあります。

小さなベーカリーが抱える食品ロスと長時間労働

パン店は、店を開けている時間だけ働けばよい仕事ではありません。

営業前には生地作りや発酵、成形、焼成があり、営業中も商品を追加します。閉店後には片付けや翌日の準備があります。

さらに品ぞろえを増やすほど、売れ残った商品の廃棄という問題も大きくなります。

パンフォーユーが目を向けたのは、この「たくさん作って店頭で待つ」働き方そのものでした。

定期便では必要な数量が分かってから製造できるため、パン店はオーブンや天板を効率よく使いやすくなります。

実際に過去の取材では、来店客が少なく経営が厳しかったベーカリーが参加したことで、パンをまとめて焼けるようになり、店頭販売以外の売上を得られた事例も紹介されています。

食品ロスを減らすことと、パン職人の働き方を改善することは別々の課題に見えます。

しかし、売れる量を予測しやすくして無駄な製造を減らすという部分ではつながっています。

パンの配送サービスが、実はパン屋の経営や労働時間まで変える可能性を持っているわけです。

AIと常設店で挑むパン業界の新しい仕組み

2026年には、事業がオンラインの定期便からさらに広がっています。

6月1日には、栃木県鹿沼市の福田屋鹿沼店1階にパンフォーユー福田屋鹿沼店をオープンしました。全国のパン店とのネットワークを生かし、実際の売り場でさまざまな地域の商品と出会える拠点です。

8月7日からは同店で冷凍パンの販売も始まり、全国各地のパンを店舗で購入できる展開も加わりました。

さらに新たなテーマになっているのがAIの活用です。

食品ロスや長時間労働といったパン業界の課題に対し、AIも使いながら解決を目指す取り組みを進めています。

ここまでの歩みを見ると、事業の中心は一貫しています。

京都大学、電通という道を進んだ後に群馬へ戻り、何度も事業に失敗しながら冷凍技術に可能性を見つけました。

そこから定期便、企業向け販売、事業者向けサービス、実店舗、そしてAIへ。

目指しているのは、単純に大量のパンを売ることではありません。

地方の小さなパン店が無理なく作り続け、その商品を必要とする人へ届けられる仕組みを作ることです。2026年の取り組みも、規模を大きくするだけではなく、食品ロスや働き方を改善しながら商売を続けられる状態を目指す延長線上にあります。

矢野さんの経歴で最も興味深いのは、京大や電通という肩書ではなく、失敗した事業を捨てるのではなく、失敗の中から次の仕組みを作ってきたことなのかもしれません。

パンフォーユーの現在は、パンを冷凍して全国へ届けるビジネスから、地域のパン店そのものが長く続けられる環境を作る事業へと広がっています。

参考リンク

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