コスメディ製薬が目指すのは注射に代わる「貼るワクチン」
2026年9月23日(水)放送の『アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~』では、「もう注射はいらなくなる!?痛くない“貼るワクチン”が医療の常識を変える!」をテーマに、京都のコスメディ製薬が特集されます。登場するのは代表取締役社長の権英淑(けん・えいしゅく)さんと、医薬品開発課課長の鹿取建志さんです。
同社が開発を進めているのが、髪の毛よりも細い微細な針「マイクロニードル」を使った次世代の薬剤投与技術です。すでに歯科分野では「アネスパッチ」が全国1000以上の医療機関に導入され、その先に注射針を使わずワクチンを届ける「貼るワクチン」の実用化を目指しています。
この記事でわかること
- コスメディ製薬と権英淑さんが進める貼るワクチン研究
- マイクロニードルが皮膚から薬剤を届ける仕組み
- 全国1000以上の医療機関で使われるアネスパッチ
- 鹿取建志さんや「ムコライス」など次世代ワクチン技術
貼るワクチンを開発するコスメディ製薬と権英淑
コスメディ製薬は京都市に本社を置く、TTS(経皮吸収治療)を専門とする研究開発企業です。
代表取締役社長を務める権英淑さんは薬学博士。京都薬科大学薬学科博士課程を修了し、国内外の製薬・化粧品・医療機器会社で技術コンサルタントを経験した後、2001年に神山文男さんと前身となる有限会社コスメディを共同設立しました。2021年に代表取締役社長へ就任しています。
同社が長年追い続けてきたテーマは、薬を飲んだり注射したりする以外の方法で体内へ届けることです。
その中心にあるのがマイクロニードル。現在、会社が次の大きな目標として掲げているのが「貼るワクチン」の実用化です。
重要なのは、2026年9月時点で「貼るワクチン」が一般向けに実用化・販売されているわけではないことです。
すでに実用化されているマイクロニードル製品と、その技術を応用して研究が進められているワクチンは分けて見る必要があります。
マイクロニードルが皮膚へ薬剤を届ける仕組み
マイクロニードルは、その名前の通り長さ数百マイクロメートルほどの極めて小さな針を使う技術です。
コスメディ製薬の溶解型マイクロニードルでは、ヒアルロン酸など水溶性の成分を基材として針を作ります。
皮膚へ貼ると、微細な針が皮膚内部へ入り、針自体が溶けながら含まれている有効成分を届ける仕組みです。通常の塗り薬では通過しにくい皮膚のバリアを、非常に短い針で越える発想です。
一般的な注射針と比べて針が非常に短く、皮膚の痛覚神経を刺激しにくいため、痛みや出血を抑えられることが期待されています。
さらに針が皮膚内で溶ける方式なら、使用後に鋭い注射針が残らないという特徴もあります。
コスメディ製薬は2008年に溶解型マイクロニードルを実用化し、まず化粧品分野で製品化。その後、医療・医薬分野へ用途を広げてきました。
アネスパッチは全国1000以上の医療機関で導入
マイクロニードルが研究室だけの技術ではないことを示しているのが、歯科用医療機器の「アネスパッチ」です。
アネスパッチは2023年10月10日に発売された、歯科表面麻酔用のマイクロニードル医療機器です。
開発の出発点は「注射で泣く子を、ゼロにしたい」という課題でした。
歯科治療では麻酔注射そのものに痛みや恐怖を感じる患者もいます。そこでマイクロニードルを利用し、麻酔処置の負担を減らすことを目指しました。
2025年9月時点で、アネスパッチは全国1000以上の医療機関に導入されています。
つまり、
- マイクロニードルという基礎技術
- 化粧品での実用化・量産
- 歯科医療機器「アネスパッチ」
- 貼るワクチンなど医薬品分野
と、少しずつ用途を広げてきたことが分かります。
貼るワクチンはまだ未来の技術ですが、その土台となるマイクロニードルそのものは、すでに実際の医療現場で使われ始めています。
常温保存・運搬できる貼るワクチンを目指す研究
貼るワクチンが注目される理由は、単に「注射が怖くなくなる」だけではありません。
現在使われる多くのワクチンには、保管から輸送まで一定の低温を保つコールドチェーンが必要です。
冷蔵設備や物流網が十分ではない地域では、それ自体がワクチン普及の大きな壁になります。
コスメディ製薬が実用化を目指しているマイクロニードル型の貼るワクチンでは、常温保存できることが大きなメリットとして想定されています。さらに貼付するだけの簡便な方法になれば、将来的には自己投与や医療従事者の負担軽減も期待できます。
想定されている利点を整理すると、
- 注射による痛みを減らせる
- 投与方法を簡単にできる
- 使用済み注射針を減らせる
- 常温で保存できる
- 冷蔵設備の乏しい地域にも届けやすくなる
- 大規模な感染症流行時の医療負担を軽減できる
といったものがあります。
コロナ禍のように短期間で大量の人へワクチンを届けなければならない状況を考えると、薬の成分だけではなく「どうやって接種するか」も重要な技術になります。
京都薬科大学の研究から2001年創業へ進んだ経緯
コスメディ製薬の始まりは2001年です。
京都薬科大学薬剤学教室で研究していた神山文男さんと権英淑さんが、研究成果を社会で使える技術へ変えるために会社を立ち上げました。
当初から取り組んでいたのが、皮膚から薬剤を吸収させるTTSでした。
皮膚は体を外部から守る強力なバリアなので、薬を塗るだけでは十分に体内へ届けにくいという課題があります。
そこで2人が注目したのが、皮膚表面に非常に小さな針を通すマイクロニードルでした。
会社の歩みは、
- 2001年5月:有限会社コスメディ設立
- 2006年:コスメディ製薬株式会社へ社名変更
- 2008年:溶解型マイクロニードルを実用化
- 2023年:歯科用医療機器アネスパッチ発売
- 現在:貼るワクチンなど医療・医薬分野の研究を推進
と続いています。
2026年5月には創業25周年を迎えました。
小さな大学発ベンチャーから始まり、現在は182人の従業員を抱える研究開発企業へ成長しています。
鹿取建志が担うマイクロニードル医薬品の開発
『アンパラレルド』には、権英淑さんとともに鹿取建志さんも出演します。
鹿取さんはコスメディ製薬の医薬品開発課課長で、番組公式ページではマイクロニードル技術の開発をリードする人物として紹介されています。
会社としてすでに実用化しているアネスパッチから、さらに医薬品やワクチンへ。
マイクロニードルの針の長さや形状、薬剤の量、安全性、製造方法などを用途に合わせて設計しなければならないため、「小さな針を作れば完成」という技術ではありません。
コスメディ製薬は2026年時点で、国内外に多数のマイクロニードル関連特許を保有しています。5月1日時点では、マイクロニードル関連だけで国内35件、海外50件が公式に確認されています。
鹿取さんら医薬品開発チームが担っているのは、長年蓄積してきたこの技術を、実際に患者へ使える医薬品へつなげていく部分です。
飲むワクチン「ムコライス」など次世代技術
番組では、貼るワクチンだけでなく「飲むワクチン(ムコライス)」など、注射に頼らない次世代ワクチン技術も紹介されます。
ここは混同しやすいポイントです。
ムコライス(MucoRice)はコスメディ製薬の商品ではありません。
東京大学医科学研究所などが研究してきた、コメを利用する経口ワクチンです。
コメの中にワクチン抗原を作らせ、それを口から摂取することで免疫を誘導する仕組みで、コレラなどの下痢症を対象とした「MucoRice-CTB」では、健康成人を対象とした第1相試験で安全性、忍容性、免疫原性が確認されています。
ムコライスにも、
- 注射器や針が不要
- 常温保存が可能
- コールドチェーンが不要
- 経口投与できる
という特徴があります。
つまり今回の番組では、コスメディ製薬の「貼る」という方法と、ムコライスの「飲む」という方法の両面から、ワクチン=注射という常識を変えようとする技術が描かれることになります。
まとめ
2026年9月23日放送の『アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~』で特集されるのは、京都のコスメディ製薬と代表取締役社長の権英淑さん、医薬品開発課課長の鹿取建志さんです。
コスメディ製薬は2001年、京都薬科大学で研究していた神山文男さんと権英淑さんによって創業されました。
長年研究してきたのが、髪の毛より細い微細な針を使う「マイクロニードル」です。
すでに歯科用医療機器「アネスパッチ」は全国1000以上の医療機関に導入され、その技術の先にあるのが常温保存や簡便な投与を目指す「貼るワクチン」です。
2026年9月時点では貼るワクチンそのものは研究・実用化を目指している段階ですが、マイクロニードルは化粧品から医療機器へとすでに用途を広げています。
注射針を使うことが当たり前だった薬やワクチンを「貼る」「飲む」という方法へ変えられるのか。今回の放送は、その最前線を知る回になりそうです。
参考リンク


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