鳥取のすなば珈琲は今?地図業界のゼンリンは?お金で見える意外な真実
テレビ東京の新感覚経済番組『LIFE IS MONEY 〜世の中お金で見てみよう〜』が2025年6月3日(火)に放送されます。林修さんをMCに迎え、テレ東報道局が手がける本番組は、「心が豊かになり、懐も豊かに、なるかも…」をテーマに、日常にある事象を“お金の視点”から読み解く内容です。今回は、地元発カフェチェーン「すなば珈琲」の今と、無料地図全盛の時代に健闘する「ゼンリン」の戦略に迫ります。
スタバ進出でも揺るがなかった、すなば珈琲の成長の理由
すなば珈琲は、もともと「鳥取にスタバはないが、砂場はある」という平井伸治元鳥取県知事のダジャレから生まれた地元主導のカフェブランドです。このユーモラスな発言は、全国的にも注目を集め、2014年に鳥取駅前に1号店がオープンしました。当時、鳥取県は全国で唯一スターバックスが出店していない県であったため、その空白を埋める“鳥取の顔”として地元に深く根づくカフェが誕生したのです。
そのわずか1年後、2015年にはついにスターバックスが鳥取に出店。地元メディアだけでなく全国ニュースでも「すなばvsスタバ」という構図で話題になり、一時は競合との共存が危ぶまれる声もありました。しかし蓋を開けてみれば、すなば珈琲はその波に飲まれるどころか、2025年5月時点で県内に12店舗を展開。さらに、岩手県の道の駅高田松原にも1店舗を構えるまでに成長しています。一方、スターバックスは県内に5店舗にとどまっており、地元の支持ではすなば珈琲が優位に立っている状況です。
この成長の背景には、すなば珈琲独自の地域密着型の戦略があります。観光地や空港、市役所、大学などに出店し、観光客と地元民の両方が自然に立ち寄れる立地を重視。
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鳥取空港や鳥取大学医学部附属病院内にも出店
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観光施設との連携で、県外客への“鳥取らしさ”を発信
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市役所や公共施設とのコラボも積極展開
店舗の空間づくりも特徴的で、木目調の温かみある内装が「カフェにいるのに旅館のロビーにいるような安心感」を演出しています。これが、幅広い年齢層に受け入れられている理由の一つです。
提供するメニューも地元ならではの魅力を打ち出しています。特に、鳥取砂丘の砂を使って焙煎した「砂焼きコーヒー」や、鳥取の海の幸をふんだんに使った海鮮丼、さらには地元産の食材を活かしたカレーライスやサンドイッチなど、ただのカフェ飯ではない「旅の食体験」を楽しめる内容になっています。
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「砂焼きコーヒー」:ほんのりスモーキーな香りが特徴
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海鮮丼:その日仕入れた新鮮な白イカや紅ズワイガニを使用
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カレー:鳥取牛や地元野菜が入った具だくさんタイプ
さらに、スターバックスが鳥取に出店した際には、「大ピンチキャンペーン」と称して、スタバのレシートを持っていくと割引になるというユニークな施策を展開しました。これは「ピンチをチャンスに変える」発想として多くの地元客の心を掴み、地域とともに戦う姿勢が強く印象づけられました。
こうした、ユーモアと地元愛に満ちた運営方針が、単なるカフェチェーンではなく、「鳥取らしさ」を体現するブランドとしての地位を確立させています。すなば珈琲は、スタバに対抗するのではなく、スタバとは違う価値を提供することで、共存しながら独自の存在感を高め続けているのです。
無料地図が当たり前の時代に、なぜゼンリンは成長し続けているのか
スマートフォンを開けば、Google マップやAppleマップがすぐに使える現代。「地図=無料」の常識が定着した今、有料で地図帳を販売し続ける企業「ゼンリン」が注目されています。実はそのゼンリン、この10年間でおよそ120億円も売上を伸ばすという驚きの成長を遂げていました。
その秘密は、他には真似できない圧倒的な現地調査力と、用途に応じた“地図のカスタマイズ販売”にあります。ゼンリンの社員は今も全国を歩き回り、建物の入り口や階段の位置、企業名など細かな情報を1軒ずつチェック。こうして集められた精緻なデータが、信頼性の高い地図として蓄積されています。
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ビル名や施設名だけでなく、入り口の位置・階段・通用口まで記録
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現地確認に基づく情報なので、誤差が極めて少ない
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更新頻度が高く、数か月単位で最新版が反映される
この緻密な情報こそが、「機械では真似できない価値」として、各業界から高く評価されています。特にゼンリンの地図は以下のような分野で欠かせないものとなっています。
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自動車業界向けの高精度地図:自動運転車が正確に道路を認識するためには、数センチ単位での地図情報が必要。ゼンリンの詳細データがそのベースになっています。
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官公庁・自治体向け防災マップや都市計画:災害リスクを可視化し、避難ルートの設定や復旧計画に活用されています。
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物流・営業分野でのルート最適化:配達時間や営業効率を上げるために、建物の入口情報や道路幅などが重要になります。
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観光業での案内図や施設マップ:スマホでは見づらい全体像や、歴史ある街並みの情緒を伝える紙の地図も需要があります。
また、個人向け商品も依然として根強い人気があります。小学生向けの地図帳、シニア層に向けた昔ながらの全国地図帳、地図をモチーフにした文房具や雑貨なども展開。
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「地図帳を読むこと自体が楽しい」という愛好者も多い
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旅行先の事前計画や、過去の思い出を振り返るツールとしても重宝
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紙地図は災害時や電波圏外での心強い味方にもなる
さらに、近年ではスマートシティや高齢者支援、インフラ整備におけるデジタル化が進む中で、ゼンリンのデータがさまざまなサービス基盤にも活用されています。たとえば、地域の高齢者向けの見守り地図や、バリアフリールートの整備にも役立っています。
このようにゼンリンは「有料で売れる地図」を作っているのではなく、“地図を軸にしたソリューション企業”へと進化を遂げているのです。単に場所を示すだけでなく、人・モノ・サービスが効率的につながるためのインフラとしての役割を果たしており、それが売上拡大にもつながっています。
無料サービス全盛の今こそ、「有料でも選ばれる」理由がある──ゼンリンの成功は、価格だけでなく価値と信頼が選ばれる時代であることを示しています。
経済を「お金の視点」で見ることで見えてくる、新たな価値
番組では、MCの林修さん、テレ東アナウンサー藤井由依さんの進行のもと、日本経済新聞の原田亮介氏が解説を担当。ゲストには俳優の谷田歩さん、芸人のバービーさん(フォーリンラブ)、松陰寺太勇さん(ぺこぱ)が登場し、ユーモアを交えながらも、経済の本質に切り込んでいきます。
「無料が当たり前」になった現代社会で、“あえて”有料サービスに価値を見出し、それを武器に成長する企業たち。その姿を通して、「お金」という切り口から見る新しい日本の形が見えてきそうです。
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