内密出産の“知られざる現場”へ
このページでは『テレメンタリーPlus「内密である理由」(2026年2月8日)』の内容を分かりやすくまとめています。
追い詰められた女性たちが、最後の救いとして選ぶ 内密出産。
熊本市の 慈恵病院 では、誰にも言えない妊娠を抱えた人たちが身元を伏せたまま出産し、これまでに60例もの命が救われてきました。
なぜ彼女たちは周囲に打ち明けられないのか。
そして、医療者たちはどんな覚悟で受け入れ続けているのか。
静かに、しかし確かに積み重なる“命の物語”に迫ります。
内密出産とは何か?テレメンタリーPlus「内密である理由」が映す現実
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テレメンタリーPlus「内密である理由」(2026年2月8日放送予定)は、熊本市の慈恵病院で行われている内密出産に焦点を当てた1時間の特別編です。過去のテレメンタリーに新たな取材を大幅に加えた構成で、番組全体を通して「なぜ、そこまでして身元を隠して産まざるをえないのか」という問いを突きつけます。
番組の中心にいるのは、「赤ちゃんを遺棄して捕まるつもりだった」と語る女性です。彼女は、妊娠を誰にも言えないまま追い詰められ、最後の一線で慈恵病院の内密出産にたどり着きました。内密出産は、妊婦が病院のごく一部の医療者のみに身元を明かし、それ以外には名前を伏せたまま出産できる仕組みです。目的は、孤立出産や乳児遺棄を防ぎ、母子ともに命の危険から守ることにあります。
番組では、単に制度の説明をするのではなく、「もしこの仕組みがなかったら、この命はどうなっていたのか」という問いを、具体的なケースを通して描きます。同時に、現場で受け入れを続ける医師や看護師たちの葛藤、行政と病院がどこまで責任を分かち合えるのかといった、現実的で重いテーマも浮かび上がります。
熊本市・慈恵病院の内密出産60例が語る、追い詰められた妊婦たちの背景
熊本市にある慈恵病院は、2007年から「こうのとりのゆりかご」(いわゆる赤ちゃんポスト)を運営してきたことで知られています。ここには16年間で170人以上の赤ちゃんが預けられてきました。
この病院が内密出産を始めたのは2021年12月。そこから4年で、内密出産による出産は60例に達しています。院長は会見で、帝王切開が必要となったケースが10例あり、その中には大量出血を伴う命に関わる事例もあったことを明らかにしました。もし、こうした妊婦たちが自宅などで一人きりで出産していたら、母子ともに命の危険が極めて高かったと考えられます。
慈恵病院には24時間365日対応の「SOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談」電話があり、令和2〜4年度だけでも1万4千件以上の新規相談が寄せられました。相談の多くは、「誰にも妊娠を言えない」「家族に知られたら生活が壊れる」といった、深刻で複雑な事情を抱えた女性からのものです。その中には、内密出産や赤ちゃんポストと背景が重なるケースも多く、「潜在的な内密出産候補」ともいえる妊婦たちが全国に存在していることがわかります。
番組では、60例の内密出産の背後にある共通点にも光を当てると考えられます。例えば、親からの虐待や過干渉、DV、経済的困窮、宗教的・文化的な制約など、「妊娠が知られた瞬間に自分の生活が崩壊する」という恐怖が、女性たちを追い詰めています。実際、60人すべてが親からの虐待や過干渉を経験していたという分析も報じられており、「望まない妊娠」の背景には、長年の家庭環境や人間関係の問題が積み重なっている現実が浮かび上がります。
東京・賛育会病院と大阪・泉佐野市へ…内密出産と赤ちゃんポストの広がり
内密出産は当初、熊本市の慈恵病院だけの取り組みでしたが、近年は徐々に広がりを見せています。東京都墨田区にある賛育会病院は、2025年3月31日に、親が育てられない乳児を匿名で受け入れる「ベビーバスケット」(赤ちゃんポスト)と、病院の一部の職員のみに身元を明かして出産する内密出産の受け入れを開始しました。
制度開始から間もなく、賛育会病院では初の内密出産が行われています。東京都はこの動きを受けて、2025年6月に研究者や医療関係者からなる検証チームを設置し、「母子の安全をどう確保するか」「どのような支援が必要か」を検討し始めました。
さらに、大阪府泉佐野市は、自治体主導で内密出産の仕組みを導入する方針を表明しました。望まない妊娠や孤立出産から起きる悲惨な事件を防ぐために、行政が積極的に関与すべきだという問題意識から、市議会も関連予算案を可決しています。
こうした流れから、「熊本市の一病院の取り組み」だった内密出産は、東京都・大阪府といった大都市圏に広がりつつあります。同時に、赤ちゃんポストと内密出産、電話相談を三本柱とする動きも出てきており、「命を守る最後のとりで」を地域ごとにどう作るかが、全国的な課題として見えてきます。
子どもの「出自を知る権利」と、日本で進まない法整備のギャップ
内密出産を語るうえで、必ず出てくるのが「子どもの出自を知る権利」です。国際的には、子どもの権利条約が、子どもが自分のルーツを知ることの重要性を認めています。しかし、日本では「出自を知る権利」が法律として明文化されておらず、その位置づけは今も曖昧なままです。
内密出産については、2022年に法務省と厚生労働省が連名で通知(いわゆる「内密出産ガイドライン」)を出しました。ここでは、「妊婦が身元情報を医療機関の一部の者のみに明らかにして出産した場合」の取り扱いが示される一方で、匿名での出産は「可能な限り避けるべき」とされています。ただし、ガイドラインはあくまで行政上の指針であり、法律ではありません。そのため、出自情報の保管方法や開示のルールは、現場の医療機関と自治体に大きく委ねられているのが現状です。
熊本市と慈恵病院は、「緊急下の妊婦から生まれた子どもの出自を知る権利の保障等に関する検討会」を立ち上げ、出自情報の分類・収集・保存・開示のあり方を具体的に議論してきました。報告書では、「出自を知る権利」と母親の匿名性のバランスをどう取るかが最大のテーマとなっています。また、将来的に他の医療機関でも内密出産が広がることを想定し、国などの公的機関で情報を保管する案も議論されています。
一方で、「出自を知る権利の法整備はまだ検討段階で、提供者の匿名性を優先する考えも根強い」という指摘もあります。生殖補助医療の分野でも同様の議論が続いており、日本全体として「子どもが自分のルーツを知ることを、どこまで権利として保障するのか」が問われています。テレメンタリーPlusは、この大きなテーマを、具体的な母子の物語を通して視聴者に突きつける構成になると考えられます。
医療現場が引き受けるリスクと金銭的負担、それでも続く命のセーフティネット
内密出産は、妊婦と赤ちゃんの命を守るための仕組みですが、その裏側では医療機関とスタッフが大きなリスクと負担を引き受けています。
まず医療リスクとして、妊婦の多くが適切な妊婦健診を受けておらず、妊娠週数や母体の健康状態が正確につかめないまま、緊急に帝王切開や輸血が必要になるケースもあります。慈恵病院の60例の分析では、帝王切開が必要だった事例が10例あり、その中には大量出血を伴うものも含まれていました。これは、医療者側が「最悪のケースを想定しながら、常に受け入れ態勢を整えておく」ことを意味します。
次に、金銭的な負担です。内密出産では、妊婦が医療費を支払えないケースも少なくありません。慈恵病院では費用を無料または大幅に軽減して受け入れているとされ、その穴を埋めるために病院独自の負担や寄付が欠かせません。同様に、賛育会病院のベビーバスケットも、明確な公的制度に基づいた仕組みではなく、「一医療機関の挑戦」として運営されており、「民間だけでは限界がある」という声も現場から上がっています。
さらに、出産後の子どもの行き先を整えるために、児童相談所や乳児院、里親、特別養子縁組など多くの機関が連携する必要があります。慈恵病院では、内密出産で生まれた子どもを要保護児童として通告し、その後、乳児院や児童養護施設、里親を経て、養子縁組につなげる流れが整えられています。しかし、出自情報の管理や真実告知のタイミングなど、現場が個別に判断しなければならない課題も山積しています。
テレメンタリーPlus「内密である理由」は、こうした「現場が自らのリスクで支え続けている命のセーフティネット」を、1人の女性の告白と60例のデータ、そして東京や大阪へ広がる動きと重ね合わせながら描き出します。制度的な裏付けが十分でないまま、なおも匿名を望む女性からのSOSは止まりません。その現実を、視聴者にどう受け止めてもらうのかが、この回の大きなポイントになります。
注意事項とまとめ
本記事の内容は可能な限り番組情報をもとに構成していますが、実際の放送内容と異なる場合があります。
熊本市の 慈恵病院 が担う 内密出産 の現場は、女性たちの深い事情と、医療者の強い覚悟が交差する重いテーマです。制度の広がりや課題、子どもの権利など、多くの問題が複雑に絡み合っています。
番組で描かれる事実を確認し、必要な情報は放送後に追記します。
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