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大澤曉空の経歴|第29世住職が東光院を地域の駆け込み寺へ変えた理由【ザ・ノンフィクション】

住職

葬儀だけではない「町の寺」をつくる大澤曉空の挑戦

2026年9月6日放送のフジテレビ『ザ・ノンフィクション 人生 最期までお付き合い 前編~型破りな2人の駆け込み寺~』では、神奈川県大磯町の東光院で、町の人の日常から人生の最期まで寄り添う住職・大澤曉空(おおさわ・ぎょうくう)さんと古井昇空さんが特集されます。大澤さんは2017年に第29世住職となり、約300年以上続く寺を守る一方で、フリースペース、多世代食堂、医療・介護相談、さらには遺体搬送から葬儀までを僧侶自身が担う仕組みを広げてきました。なぜ一般的な寺とはかなり違う形になったのか。その背景をたどると、大澤さんが考えてきた「これからの寺の役割」が見えてきます。

この記事でわかること

  • 大澤曉空さんが第29世住職となり東光院を変えてきた経緯
  • 寺を誰でも立ち寄れる地域の居場所へ開いた理由
  • 僧侶が遺体搬送から納棺・葬儀まで担う東光院独自の仕組み
  • 多世代食堂や暮らしの保健室が行政にも注目される理由

大澤曉空が第29世住職として進めた寺の改革

東光院の紹介 – 宗教法人東光院

出典:宗教法人東光院 公式サイト

大澤曉空さんは、神奈川県大磯町にある東寺真言宗・東光院の第29世住職です。

2017年9月20日、住職就任にあたって書いた本人の文章には、大澤さんが寺に生まれながらも、最初から迷いなく僧侶の道を歩んでいたわけではなかったことが記されています。

本山での修行へ向かう前、「寺とは何なのか」「僧侶とは何なのか」という疑問を抱えていたと振り返っています。修行から東光院へ戻った後、その答えを見つけるきっかけになったのが、地域の人たちとの交流でした。

特に大きかったのが、後に副住職となる古井昇空さんの存在です。

大澤さんによると、古井さんは寺の常識とは違う視点を持ち、地域の祭りや活動へ大澤さんを連れ出しました。寺の中だけにいるのではなく、町へ出て人と知り合う。その積み重ねによって、大澤さん自身も「地域のために寺や僧侶だからこそできること」を考えるようになります。

2017年に第29世住職へ就任すると、その考えを具体的な形にしていきました。

翌2018年には、東光院の客殿を地域の人が自由に利用できる「海近寺巣(うみちかてらす)」として開放。約1000冊の本を置き、車いす対応トイレや授乳室も備え、飲み物まで用意するという、一般的な寺の客殿とはかなり違う空間を作りました。

法事や葬儀がある時だけ行く寺ではなく、何も用事がなくても立ち寄れる寺へ。

これが大澤さんによる東光院改革の大きな出発点でした。

東光院を地域の駆け込み寺へ変えた背景

東光院公式サイトで大澤さんは、自分たちの寺を「この地域では珍しい、変わったお寺かもしれない」と紹介しています。

なぜ、そこまで従来の寺とは違う活動を広げているのでしょうか。

大澤さんが強く意識しているのが、少子高齢化、単身世帯の増加、家族の個人化、多死社会です。

これまでなら、高齢になった時や亡くなった後のことを家族が支えるケースが多くありました。しかし、一人暮らしの高齢者が増え、子どもが遠方や海外に住んでいる家庭も珍しくありません。

大澤さんは、少子高齢化や個人化そのものを問題と決めつけるのではなく、社会の変化に仕組みや人々の感覚が追いついていないことに課題があると考えています。だからこそ寺も時代に合わせて柔軟に変わり、人に寄り添う新しい仕組みが必要だという考えです。

この考えが、『ザ・ノンフィクション』で描かれる88歳の画家・藤井兼弘さんへの支援にもつながります。

藤井さんは妻を亡くし、娘はイギリス在住。施設ではなく自宅で暮らしたいという本人の希望に対し、大澤さんと古井さんは生活面まで含めて支えています。

番組では、食事や介護の相談だけでなく、古井さんが髪を切る姿まで登場します。寺の仕事というより、近所の家族や親戚に近い関わり方です。

東光院が「駆け込み寺」と呼ばれる理由は、大きな事件や特別な悩みだけを受け入れるからではありません。

一人で暮らすのが不安。
病院や介護について相談したい。
夕食を一人で食べている。
亡くなった後を頼める人がいない。

そんな日常の延長にある困りごとを受け止める場所になっているからです。

遺体搬送から葬儀まで自分たちで担う理由

東光院の活動で特に特徴的なのが、葬儀社を介さず、僧侶が葬送の実務まで担う本堂葬です。

東光院公式によると、僧侶自身が病院や自宅へ故人を迎えに行き、搬送、化粧、納棺、遺影の準備、式進行、行政手続きまで行います。寺には搬送専用車両も用意されています。

一般的な葬儀では、僧侶は主に読経や宗教儀礼を担当します。

ところが東光院では、亡くなった直後から葬儀まで、ほぼ一貫して僧侶が家族と一緒に進めます。

これには、費用を抑えることだけが目的ではありません。

東光院は公式サイトで、葬儀を「ビジネス」ではなく、人が人を送る大切な時間として過ごしてもらいたいと説明しています。葬儀社へすべてを任せるのではなく、生前からその人を知っている僧侶と家族が一緒に送り出す形を大切にしています。

東光院では葬儀そのものに一般的な意味での葬儀費用を設定せず、棺や骨壺、布団などの実費と御布施を基本とする仕組みも案内しています。公式サイトでは、多くの場合、物品の実費は5万円以下としています。

ただし、この記事で大切なのは金額よりも考え方です。

大澤さんたちは、亡くなってから初めてその人と関わるのではありません。

元気な時には地域の居場所で会い、体調が悪くなれば介護や医療の相談に乗り、一人で暮らせなくなれば生活について考え、そして亡くなった時には葬送まで付き合う。

だからこそ「人生 最期までお付き合い」という番組タイトルにつながっています。

多世代食堂と暮らしの保健室を始めた経緯

東光院の地域活動を象徴するもう1つの場所が、多世代食堂「おむすび」です。

2023年10月に始まった「おむすび」は、東光院のすぐ隣にある一軒家を利用しています。

この家には以前、一人暮らしの高齢男性が住んでいました。男性が亡くなった後、長く空き家になっていましたが、家族の厚意によりほぼ無償で借り、地域の食卓として再利用することになりました。

きっかけの1つになったのは、「海近寺巣」で大澤さんが見かけた子どもでした。

神奈川県の取材によると、放課後にフリースペースでコンビニのチキンを食べていた子どもの姿から、家庭の事情で一人で夕食を取る子どもたちの存在が見えてきたといいます。

一方で、地域には一人暮らしの高齢者もいます。

そこで「子ども食堂」のように利用者を限定するのではなく、子ども、大人、高齢者まで誰でも一緒に食事ができる「家庭の食卓の延長」のような場所を目指しました。

食事を通して普段から顔見知りになる。

すると「最近姿を見ない」「体調が悪そう」「介護で困っているらしい」といった変化にも気付きやすくなります。

同じ考えから生まれたのが「暮らしの保健室・安養」です。

東光院では2022年8月から、医療や介護について専門職へ無料・予約なしで相談できる「暮らしの保健室」を開催してきました。古井副住職のほか、地域包括ケアの専門家や地域包括支援センターの職員などが関わっています。

つまり「おむすび」と「暮らしの保健室」は別々の活動ではありません。

食べる場所がある。
雑談できる場所がある。
困った時には専門家へつながれる。

その仕組み全体で、孤立しにくい地域を作ろうとしているのです。

高齢者の暮らしと終末期まで支える活動

高齢者支援というと、介護事業所や医療機関を思い浮かべる人が多いかもしれません。

東光院が特徴的なのは、そこへ寺だからできる役割を重ねている点です。

介護や医療そのものは専門職へつなぎながら、日常生活の相談、孤独への対応、死後の葬送までを1本の流れとして考えています。

東光院公式では、身寄りがない人や、自分が亡くなった後を任せられる人がいない人に向けて、寺が死後のことを引き受ける「弔い委任」という仕組みも用意しています。

これは、これから単身高齢者が増える社会では特に気になる取り組みです。

「お墓をどうするか」だけではなく、

誰が看取るのか。
亡くなったら誰が迎えに来るのか。
誰が葬儀をするのか。
その後、誰が供養するのか。

こうした問題まで寺が関わろうとしています。

大澤さんの改革を「変わった寺の面白い取り組み」だけで見ると、本質を見落としてしまいます。

背景にあるのは、家族だけですべてを担うことが難しくなった社会で、寺がもう一度「地域の人をつなぐ場所」になれないかという問いです。

行政も注目する大磯の地域ケア拠点

東光院の取り組みは、寺の中だけにとどまらず、行政からも地域共生の事例として注目されています。

神奈川県は2026年7月16日、孤独・孤立対策の取り組みとして東光院の視察会を実施しました。

県は東光院について、寺を誰でも気軽に立ち寄れる「サードプレイス」として開放し、暮らしの保健室や多世代食堂「おむすび」などを行っていると紹介。子どもから高齢者までが自然につながる「先進的な実践」と位置づけています。視察会では「二十九世住職 大澤曉空」さん自身がナビゲーターを務めました。

また神奈川県が2024年に実施した企業・NPO・大学などの交流事業でも、大澤住職と古井副住職が、寺院運営の中で見えてきた地域課題や子どもたちとの関わりについて事例発表を行っています。

宗教施設の取り組みが、孤独・孤立対策や地域福祉の事例として行政に共有されている点は興味深いところです。

大澤さんが目指してきた「寺を地域に開く」という考えが、約10年かけて食事、健康相談、高齢者支援、終末期支援へ広がり、今では地域づくりのモデルとして見られるようになっています。

大澤曉空と東光院の実用情報

東光院は神奈川県中郡大磯町大磯1525にあり、JR東海道本線・大磯駅から徒歩約8分です。

寺では一般的な法要や墓地だけでなく、本堂葬、多世代食堂「おむすび」、暮らしの保健室、弔い委任などさまざまな活動を行っています。

ただし、食堂や相談会は開催日時が決まっている場合があります。番組を見て訪れたい、相談したいと思った場合は、最新の日程や利用方法を東光院公式サイトで確認してから向かうのがおすすめです。

まとめ

大澤曉空さんは、2017年に約300年以上続く東光院の第29世住職となりました。

そこから進めてきたのは、単純な寺のリニューアルではありません。

客殿を「海近寺巣」として地域へ開き、多世代食堂「おむすび」を作り、医療・介護について相談できる「暮らしの保健室」につなげ、さらに人生の最期には僧侶自身が遺体を迎えに行き、納棺や葬儀まで担っています。

一見するとバラバラに見える活動ですが、すべてに共通しているのは「人が孤立する前からつながっておく」という考えです。

元気な時に食卓を囲み、困った時に相談し、年を重ねても地域で見守られ、亡くなった時には顔を知っている僧侶が送り出す。

2026年9月6日の『ザ・ノンフィクション』で描かれる大澤曉空さんの姿は、「これからの時代に寺は何ができるのか」という問いへの、東光院なりの答えなのかもしれません。

参考リンク

宗教法人東光院 公式サイト

神奈川県「緩やかなつながりづくり」東光院視察会

フジテレビ『ザ・ノンフィクション』公式サイト

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