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溝田友里は何者?がん検診を動かすナッジと希望の虹プロジェクト【トリセツショーで紹介】

研究者

与那国島の大腸がん検診受診率を動かした「受けたくなる仕掛け」

2026年9月3日放送「あしたが変わるトリセツショー」で、大腸がん検診を受けてもらうための「トリセツ祭」を仕掛けた人物が溝田友里さんです。

単純に「大腸がんは怖いから検診へ行きましょう」と説明するのではなく、足指綱引き、うんち脱出ゲーム、検便キットを届けるタイミングまで設計。

番組では与那国島の受診率が51%に上昇する様子が紹介されました。

一見テレビ番組らしいイベントですが、その背景には、溝田さんが長年研究してきた行動科学、ナッジ、ヘルスコミュニケーションがあります。

この記事でわかること

  • 溝田友里さんの現在の肩書と専門分野
  • 「ナッジ」とはどのような方法なのか
  • なぜ説明だけでは検診受診につながらないのか
  • テレビと検診案内を同時に届ける仕組みの狙い

溝田友里は行動科学とヘルスコミュニケーションの研究者

溝田 友里 | 教員一覧 | 静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)

出典:溝田 友里 | 教員一覧 | 静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)

溝田友里さんは現在、静岡社会健康医学大学院大学の准教授で、行動医科学・ヘルスコミュニケーション学領域長を務めています。

学位は博士(保健学)。専門分野は健康社会学、健康教育学、行動科学です。研究テーマには、ナッジなどの行動科学、メディアを活用した社会実装、リスクコミュニケーションなどが挙げられています。

つまり溝田さんの研究対象は、

「病気について詳しく説明すること」

だけではありません。

どう伝えれば、実際に人が行動するのか。

ここを研究している専門家です。

「わかった」と「実際に検診へ行く」は全く別

番組では、がん検診に行ったことがない男女20人に専門家が検診の必要性を説明する実験も紹介されました。

説明直後は好感触だったものの、2週間後に実際に予約・受診していたのは3人。

これは今回の企画の核心部分です。

人間は、

「大事なのはわかっている」

「そのうち行こうと思っている」

だけでは、必ずしも行動しません。

仕事が忙しい、申込方法を調べるのが面倒、キットを取りに行く必要があるなど、小さな障害が一つ加わるだけでも後回しになります。

そこで使われる考え方の一つがナッジです。

ナッジは「禁止する」のではなく行動しやすくする

ナッジは、人に強制するのではなく、選択肢の見せ方や環境を工夫することで、望ましい行動を取りやすくする考え方です。

溝田さんと山本精一郎さんによる研究では、ナッジやソーシャルマーケティングを取り入れたがん検診受診勧奨資材を2015~2018年に787市町村から約430万人へ送付。

効果を確認できた167市町村のうち141市町村、83%で受診率が上昇し、全体では前年度から2.6ポイント、倍率では1.44倍になったと報告されています。

テレビ企画だけで突然思いついた方法ではなく、長期間にわたる研究と社会実装の延長線上に今回の企画があります。

テレビ放送と検査キットを同じタイミングで届ける意味

今回の「トリセツ祭」で特に興味深かったのが、祭りが終わった後です。

島民の大腸がんへの関心が高まったタイミングで、検診案内と検便キットを届けました。

ここが重要です。

テレビを見て、

「検診を受けようかな」

と思った瞬間に、

申込先を検索する
↓
電話する
↓
キットを受け取りに行く

という工程が何段階もあると、その間に気持ちは薄れてしまいます。

ところが目の前に検査キットがあれば、

「今やろう」

までの距離が一気に短くなります。

番組で使われた「衝動受診」という考え方は、この行動のタイミングを利用したものです。

実は過去にもテレビ放送とがん検診を連動させている

溝田さんらの研究では、過去にもテレビ番組と自治体の受診勧奨を組み合わせています。

乳がん検診をテーマにしたテレビ番組の放送に合わせ、市町村が対象者へはがきを発送したところ、放送後3か月間で前年同月比1.5~7.6倍の受診率向上が確認されたと報告されています。

翌年には同様の手法を大腸がん検診の精密検査受診勧奨にも応用しました。

今回の「あしたが変わるトリセツショー」で行われた、

テレビで関心を高める
↓
自治体から案内する
↓
すぐ検査できる状態を作る

という流れにも、これまでの研究蓄積が生かされていることがわかります。

与那国島では遊びから検診へつなげた

今回の企画では、最初から「大腸がん検診説明会」としなかった点も特徴的でした。

足指綱引きでは運動不足へ関心を向け、うんち脱出ゲームでは便がポリープと接触して出血する仕組みを体験。

「勉強してください」と求めるのではなく、

まず参加したくなる入口を作り、その後に必要な情報を伝える。

これもヘルスコミュニケーションの工夫といえます。

さらに自治体が検査キットを届けることで、「知識を得る」から「実際に検査する」までを一続きにしたことが今回の仕掛けのポイントでした。

奈良県でもテレビと連動したがん検診について講演

溝田さんはテレビ以外でも自治体と連携しています。

奈良県の「がんネットなら」では、溝田さんを講師に迎え、テレビとコラボしたがん検診の受診勧奨について講演が行われたことが紹介されています。

現在も静岡社会健康医学大学院大学で、ナッジ、メディア、社会実装、ヘルスコミュニケーションなどを研究しています。

実用情報

今回の放送を見て大腸がん検診を受けようと思った場合、40歳以上ならまず居住する自治体の大腸がん検診ページを確認します。

検査キットが届いている場合は、案内に記載された提出期限や採便方法に従います。

便潜血検査で陽性になった場合は、そこで終わらず大腸内視鏡などの精密検査まで受けることが重要です。

まとめ

溝田友里さんは、単に「がん検診の必要性を説明する専門家」ではありません。

研究しているのは、

人が実際に検診を受けるところまでどう動かすか。

そのためにナッジ、ソーシャルマーケティング、テレビ、自治体からの案内、検査キットまで組み合わせています。

「あしたが変わるトリセツショー」の与那国島企画は、テレビ番組の実験というだけではなく、長年続けられてきた行動科学によるがん検診受診率向上研究の社会実装として見ると、さらに興味深い企画です。

参考リンク

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