食と科学をつなぎ、子どもに「食べること」を伝える金子浩子
『toi-toi(拒食症「どうして誰かの価値観にとらわれる?」)(2026年9月3日)』に登場する金子浩子さん。現在は3人の子どもを育てながら家庭科教諭として働き、食育団体「キッチンの科学プロジェクト」を率いています。その活動の原点には、自身の食との向き合い方が大きく変わった大学時代の経験がありました。教師になるまでの経緯や、科学と料理を組み合わせた食育活動までたどります。
この記事でわかること
- 金子浩子さんが現在している仕事
- キッチンの科学プロジェクトの活動内容
- 食育の道へ進むことになった経験と転機
- 科学実験と料理を組み合わせた独自の取り組み
金子浩子は現在、家庭科教諭として3人の子どもを育てている

(出典:キッチンの科学プロジェクト(KKP))
金子浩子さんは現在、3人の子どもを育てながら家庭科教諭として働いています。
群馬県太田市出身で、教育の仕事と並行して、子ども向け食育団体**「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」の代表・講師**としても活動しています。2024年の紹介では群馬県内の小学校教員として勤務していることが伝えられており、それ以前には私立高校や公立中学校で働いた経験もあります。
金子さんの特徴は、「学校の先生」と「食育活動の講師」が別々の仕事として存在しているのではなく、これまで学んできた理科・家庭科・食・科学が1本につながっているところです。
家庭では3児の母でもあります。子育てを経験したことで、家庭で毎日のように親子料理をすることは簡単ではないと実感し、子どもが親から少し離れて料理や食に触れられるワークショップの意味をあらためて感じるようになったと語っています。
食と科学をつなぐキッチンの科学プロジェクト
キッチンの科学プロジェクト(KKP)は、科学実験のワクワク感を入り口にして、子どもたちに食や自然の大切さを伝える活動です。
金子さんが管理栄養士の仲間と2013年に立ち上げました。
単なる子ども料理教室ではありません。
たとえばパンを作るなら、
- パンが膨らむ仕組み
- 小麦粉とグルテンの関係
- イーストが働く仕組み
まで実験しながら学び、その後、自分たちでパンを作って食べます。
2026年2月に太田市で行われた「パンの科学実験」では、小中学生を中心に手ごねパン作りを実施。午前の部がキャンセル待ちとなり午後の部が増設され、計50人の子どもたちが参加しました。
つまりKKPが目指しているのは、「料理の作り方を覚える」だけではありません。
食べ物を見て「どうしてこうなるんだろう」と考えるところから食への興味を育てるのが大きな特徴です。
大学時代の経験が人生の方向を変えた
金子さんが食について深く考えるようになった背景には、大学時代の経験があります。
大学進学後に1人暮らしを始め、食生活が乱れるようになりました。その中でダイエットを始めたことをきっかけに摂食障害を経験しています。本人はその後も、進学、就職、結婚、出産、子育てなど人生の変化と向き合いながら、この経験について講演や対話の場で発信してきました。
大切なのは、この経験が単に「食べ方を教える活動」につながったわけではないことです。
自身が食との関係で苦しんだからこそ、「これを食べれば正解」「これは食べてはいけない」と一方的に決める食育ではなく、子ども自身が食に興味を持ち、自分で選ぶ力をつけていくことを重視しています。
金子さんにとって食育は、栄養素の知識だけを伝えるものではなく、自分の体や食生活について考える力を育てる活動になっています。
社会人生活を経て食育へ進んだ転機
金子さんは東京薬科大学生命科学部を2012年に卒業し、群馬大学大学院保健学研究科へ進学。2014年に修士号を取得しています。
ただし、KKPを始めたのは就職後ではありません。
大学院生だった2013年に活動を立ち上げ、その後、漢方薬の製薬メーカーへ就職しました。製薬会社では約7年間働いた経歴があります。
ここからさらに大きく方向を変えます。
会社員として働きながら食育活動を続ける中で、金子さんはもっと直接、子どもたちに食の大切さを伝えたいと考えるようになり、教員へ転職しました。
もともと理科の中学校・高校教員免許を持っていましたが、家庭科の教員免許は社会人になってから取得しています。
第1子を出産した直後にも大学の課題に取り組むなど、子育てと学びを並行しながら資格取得を進めました。
食育ボランティアから始まった活動が、やがて本業である「教える仕事」にまでつながっていったことになります。
子どもに「食べること」を伝える活動を始めた理由
食育を子ども向けにしたことにも、明確なきっかけがありました。
大学院生時代、理科の教員免許を生かして塾講師として働いていた金子さんは、子どもたちを間近で見る中で、理科への興味が薄れている子どもや、1人で食事をする「孤食」に触れます。
ちょうどその頃、科学館で「食」をテーマにした科学実験イベントのボランティアに参加しました。
ここで、
食の大切さ+科学の面白さ
という現在につながる発想が生まれます。
食育というと「野菜を食べよう」「バランスよく食べよう」といった話を想像しがちですが、科学実験なら、まず子どもが「面白そう」と近づいてきます。
その好奇心を入り口にして食へつなげる。
この発想がKKPの土台になりました。
科学実験と料理を組み合わせた独自の食育
KKPのワークショップを見ると、「食育」のイメージがかなり変わります。
代表的なのが「光るグミ」です。
ブラックライトを使い、ビタミンB2などの蛍光を目で確かめながらグミを作ります。子どもにとっては「食べ物が光る」という驚きが最初の入口です。
ほかにも、
- バナナからDNAを取り出す実験
- 玉ねぎの皮を使った染色
- ホットケーキの焦げ方を考える実験
- 紫芋のアントシアニンによる色の変化
- だしとうま味の科学
- パンの発酵とグルテン
- 寒天とゼラチンが固まる仕組み
など、身近な食品を科学につなげています。
特に面白いのは、実験して終わりではない点です。
2026年8月に行われた玉ねぎの皮を使った染色では、染色の仕組みだけでなく、玉ねぎの色素、食品ロス、色と食欲などまでテーマを広げています。
「料理」と「理科」を別々の教科として扱うのではなく、毎日食べているものの中に科学があることを体験させるのが金子さんの食育です。
講演やワークショップへ広がった活動)
KKPの活動は、料理教室だけにとどまりません。
これまで科学館、児童館、学校、大学などで、科学実験教室や食育講演、親子料理教室などを行ってきました。団体の活動記録には、科学技術館やぐんまこどもの国児童会館などでの取り組みも残っています。
2026年8月だけを見ても、
8月20日
群馬県邑楽町でホットケーキと焦げの科学
8月21日
栃木県足利市で紫芋とアントシアニンを使った白玉作り
8月22日
群馬県桐生市で玉ねぎの皮を使ったハンカチ染色
と、地域をまたいで子ども向け講座を続けています。
10年以上活動が続いていることも大きなポイントです。
大学院時代に始めた取り組みが、就職、結婚、子育て、教員への転職を経ても途切れず、現在まで続いています。
家庭科教諭として向き合う現在の仕事
金子さんの現在を考えるうえで、家庭科教諭になったことは大きな意味を持っています。
学生時代は生命科学を学び、理科の教員免許を取得。
その後は製薬会社に勤めながら食育を続け、社会人になってから家庭科の免許も取得しました。
そして私立高校、公立中学校などでの勤務を経て、小学校教育にも携わるようになっています。
これまでの歩みを見ると、
科学を学ぶ
↓
自分自身が食と向き合う
↓
子どもの食生活に問題意識を持つ
↓
食と科学を組み合わせたKKPを立ち上げる
↓
製薬会社で働きながら活動を続ける
↓
家庭科の免許を取得する
↓
教員として子どもに直接関わる
という流れが見えてきます。
さらに3児の母になったことで、「家庭で食育をする側」の負担も自分自身で経験しました。
2024年には、地域に根ざした活動をさらに進め、子どもの居場所にもなる料理教室の拠点を持つことを目標として語っています。
そして2026年にも、太田市や桐生市、足利市、邑楽町などで食育科学ワークショップを継続しています。
金子さんの活動を「家庭科の先生」だけで説明しきれないのは、このためでしょう。
教師として学校で子どもに向き合いながら、学校の外でも料理と科学を使って「食べること」を伝え続ける。その2つが現在も並行していることが、金子浩子さんという人物の大きな特徴です。


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