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【その灯を消すな!】能登でカキ養殖の承継に密着!ニッポンの美味しいカキを世界へ 能登半島の事業承継と柳橋大輝のバスケット養殖|2025年12月7日

ドキュメンタリー

能登から広がる“事業の灯をつなぐ物語”

能登半島で何十年も続いてきたカキ養殖、町を支える運送会社、自動車産業の大きな変化、そして働きづらさを抱える人の未来まで──今回の放送には、さまざまな場所で“灯を消さないように”踏ん張る人たちの姿がありました。
それぞれの物語には、地域を守りたいという気持ちや、新しい方法で未来をつくりたいという強い想いが重なっていました。

能登のカキ養殖がつながった瞬間

石川県能登半島の冬は厳しい寒さに包まれます。その海で育つカキは身がぎっしり詰まり、多くの人に愛されてきました。
しかし近年、地震の影響や高齢化で漁師が減り、養殖を続けるのが難しい状況が増えています。海に吊したホタテの殻に稚貝を付け、毎日状態を見ながら育てる作業は、体力も時間も必要。後継者が見つからなければ、どれほど良いものを作っていても未来が途切れてしまいます。

そこで大きな転機を迎えたのが、木村功さん(83歳)が営んできた養殖場でした。40年以上、家族でカキを育て上げ、冬にはそのまま味わえる焼き牡蠣小屋を開き、『焼き牡蠣20個』『カキの炊き込みご飯』『カキアイス』『カキフライ』『カキの春巻き』など、地元の魅力を詰め込んだセットで多くの人を迎えてきました。

ただ、年齢を重ねるにつれ、作業は負担が増えていきます。後継者がおらず、震災後は出荷量も減り、このまま続けられないかもしれない──そんな不安が募る時期がありました。

この状況を変えたのが、遠い親戚でもある柳橋大輝さん。
柳橋さんは「自分に継がせてほしい」と、まっすぐな気持ちで木村さんに申し出ます。カキ養殖の経験はゼロ。それでも、木村さんのカキに込められた思い、そして能登の食文化の価値を守りたいという想いが柳橋さんを動かしました。

この一歩によって、能登のカキ養殖は途切れずに未来へつながる道を歩み始めました。

“コンビニ改革のプロ”が能登に向かった理由

柳橋さんは、元々は大手コンビニチェーンのスーパーバイザー。京都・滋賀・奈良・兵庫の4エリアを担当し、店舗の売り場作りから売上改善まで、現場を支え続けていました。数字にも行動にも強く、担当エリアすべてをトップレベルに引き上げた経験を持つ人物です。

それほどの実績がありながら、あえて脱サラを選び、家族3人で能登へ移住した理由には、
・経営者として働きたいという想い
・母の出身地である石川への特別な愛着
がありました。

そこで出会ったのが、小さな運送会社よしだ商運
この会社は「荷主と運送会社をつなぐ」という独特の形で地域の物流を支えていました。固定費が少なく、電話1つで仕事が成り立つという仕組みは、柳橋さんにとって「伸びる余地が大きい」と感じられるものでした。

承継後、柳橋さんは持ち前の提案力と行動力で新しい取引先を増やし、売上は1.5倍に。
その成功が、次の挑戦──カキ養殖の承継へとつながります。

83歳の木村さんが守ってきた“味”と“働き方”

木村さんが養殖してきたカキには、細やかな手作業の積み重ねがあります。
海から引き上げた後、殻に付いたフジツボや汚れを一つずつ削り落とし、きれいな状態で出荷できるように整える作業も欠かせません。手間が多い分、カキの味わいは深く、イベント出店でも人気がありました。

こうした職人の技を直接見て育った柳橋さんにとって、木村さんの養殖場は“家族の原風景”。七尾市中島町の海を眺めながら過ごした幼少期の景色も相まって、継ぐ覚悟が強まりました。

柳橋さんは「ただ続けるだけでなく、もっと能登に人を呼べる産業にしたい」と話し、木村さんもその熱意を受け止めます。
こうして、木村さんの人生そのものでもあるカキ養殖は、次の世代に渡されることになりました。

バスケット養殖が開く“もう一つの未来”

柳橋さんは、単に受け継ぐだけではなく、能登に新しい可能性を生み出そうと動き始めています。
そのひとつが**バスケット養殖(フリップファームシステム)**と呼ばれる方法です。

オーストラリアで発達したこの方法は、カキを入れたバスケットを海に浮かべ、定期的に反転させることで汚れを防ぎ、栄養を吸収しやすくする仕組みです。
従来2年必要だった生育期間が、およそ半年にまで短縮できると言われ、収穫量は最大3倍の可能性もあります。

さらに、冬しか取れなかった能登カキが、年間を通して収穫可能になるという大きなメリットもあります。

設備導入には、
・バスケット約300万円
・反転機約300万円
・新しい稚貝が毎年約300万円
と、決して小さくない投資が必要です。それでも柳橋さんは「能登に雇用を増やせるなら」と挑戦を続けています。

自動車産業の大変革を支えるロールアップ型M&A

能登とは別の場所では、日本のものづくりを支える企業の奮闘が描かれました。

愛知県刈谷市にある老舗メーカーサーテックカリヤは、車の部品に欠かせない“めっき加工”を専門に扱ってきました。しかし、EV化が加速していく中で、エンジン部品の需要は急減。影響は企業の根幹にまで及ぶほど大きなものでした。

そこで手を差し伸べたのが、セレンディップ・ホールディングス
この企業は、同じ領域の中小企業を束ね、技術を組み合わせて競争力を高める“ロールアップ型M&A”を進めています。

サーテックカリヤは、単なる買収ではなく「長く会社を続けていく承継」という方針に共感し、グループ入りを決断。
自動車部品で磨いてきためっき技術は、半導体やロボット分野でも期待されており、新しいチャレンジが始まっています。

“100年に一度の大改革”ともいわれる自動車業界で、技術を未来へつなぐための承継が静かに進んでいます。

賃金アップで働く力を広げたメリーランドHDの1年

栃木市で雑貨製造を行う佐藤縫製工業を承継したメリーランドホールディングスは、障がいを持つ人が働き続けられる環境づくりに力を入れています。

承継後は工業用ミシンを導入し、作業の幅が広がったことで、工賃は
・時給200円 → 300円に
・月の平均工賃は約2.8倍に
と大きく変化しました。

長く働いてきたスタッフが工場長に就任し、技術を伝える側に回るなど、職場の空気も前向きに変わっています。
前社長は会長として見守り、世代交代が自然に進んだことも特徴です。

働く環境が良くなることで、工場には新しい注文が入り、SNSで紹介すると問い合わせが増えるなど、承継が地域の未来にも広がり始めています。

まとめ

今回の放送では、
・能登のカキ養殖を守る承継
・コンビニ現場からの転身と新しい挑戦
・高齢職人がつないだ味を未来へ渡す瞬間
・EV化の波を乗り越える製造業の承継
・障がいを持つ人の働く場を支える取り組み
といった、さまざまな地域と企業の“灯をつなぐ物語”が描かれました。

どの現場にも共通していたのは、
「続けたい」「残したい」「守りたい」
という気持ちが、人と人をつなぎ、未来を形づくっていくということでした。

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