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【第40回 民教協スペシャル】あなたを忘れない 〜朝鮮からの満州移民〜|朝鮮人満州移民と満州国の植民地支配を証言アーカイブで追う“開拓団の実像” 2026年2月7日★

ドキュメンタリー

朝鮮から満州へ渡った人々の知られざる記憶

このページでは『第40回 民教協スペシャル あなたを忘れない 〜朝鮮からの満州移民〜(2月7日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。

遠い時代、故郷を離れて満州へ向かった人々がいました。
貧しさから抜け出すために歩き出したはずの道は、やがて植民地支配戦時動員の渦へと巻き込まれていきます。

彼らはなぜ満州を目指し、そこでどんな現実と向き合ったのか。
長く語られなかった朝鮮人満州移民の歩みを、証言と記憶からたどります。

朝鮮から満州へ渡った人々と「歴史の空白」

番組が見つめるのは、日本の植民地時代に朝鮮から満州へ渡った人々の人生です。貧困と抑圧から逃れるために海と国境を越えた移民たちは、その後、日本の戦時体制に組み込まれ、厳しい開拓と戦争の現場へと追い込まれていきました。にもかかわらず、その歩みは長いあいだ日本の戦争史の中でほとんど語られず、「歴史の空白」として置き去りにされてきました。

中国東北部に13年間だけ存在した国家・満州国は、実際には日本が支配した植民地国家で、日本政府は20年で500万人の入植をめざす「満蒙開拓」政策を打ち出しました。結果として日本本土からは約27万人が満州へ渡りましたが、同じ時期に朝鮮からも多くの人々が満州へ移動していました。彼らは「日本人移民」の陰に隠れ、歴史の表舞台から消されてきた存在です。

番組は、この見えないもうひとつの満蒙開拓に光を当て、朝鮮からの満州移民がどのような経緯で国境を越え、どんな立場に置かれ、どのような記憶を今日まで抱え続けているのかを、当事者とその子孫の証言から立ち上がらせていきます。

国策「満蒙開拓」と朝鮮人移民が増えた背景

朝鮮から満州への移民の歴史は、1910年の日韓併合から急速に動き出します。日本による植民地支配のもとで行われた土地調査事業や産米増殖計画によって、多くの朝鮮人農民は土地を失い、深刻な貧困に陥りました。生活の場を追われた人々の一部は、早くから国境を越えて満州へと移り住み、農地や仕事を求めて移動を続けます。

1920年代から30年代にかけて、政治的な弾圧から逃れるルートとしても満州は意識されるようになります。三・一独立運動の弾圧を逃れた人々や、日本の警察・軍の監視から逃れようとした活動家たちが、満州へ渡ったケースも少なくありませんでした。

満州事変と満州国の成立後、日本は満州を「新天地」と位置づけ、国家プロジェクトとしての開拓移民を本格化させます。日本本土向けの満蒙開拓と並行して、朝鮮総督府や関東軍も朝鮮人の農業移民計画を次々に立案しました。「朝鮮人移民政策大綱」などの文書に基づき、朝鮮農民を組織的に移住させる仕組みが整えられ、1930年代後半には国策としての朝鮮人満州移民が急増します。

番組が描く朝鮮人移民は、単に「自ら新天地を目指した移住者」ではなく、植民地支配と戦時動員政策の中で追い立てられ、選択肢の少ない状態で満州へ渡った人々です。貧困と抑圧から逃れようとしながら、同時に日本帝国の戦略の一部として動員されていった構図が、証言から浮かび上がります。

満州国での差別構造と「被害者」であり「加害者」だった現実

満州国は「五族協和」を掲げ、多民族が平等に暮らす理想の国と宣伝されました。しかし実態は、日本人を頂点とした厳しい民族ヒエラルキーが支配する社会でした。日本人が一等国民、朝鮮人が二等国民、中国人が三等国民とされ、行政・警察・企業の要職は日本人が独占し、朝鮮人や中国人は常に差別と抑圧のもとで生活していました。

朝鮮からの移民は、日本人官吏や軍人から差別される「被害者」である一方で、中国人に対しては上位の立場を与えられる場面もありました。開拓団や農場で中国人労働者を管理する役割を担ったり、警察・保安要員として動員されることで、自分たちより弱い立場の住民を取り締まる側に立たされることもありました。こうした立場のねじれは、後に「自分たちは被害者であり、同時に加害者でもあった」という重い自己認識として当事者の証言に刻まれています。

入植地の暮らしは、宣伝パンフレットが描いた「豊かな農村」とはほど遠いものでした。原生林を切り開き、開墾したばかりの土地での農業は過酷で、寒冷な気候やインフラ不足、病気や飢えが人々を追い詰めます。関東軍の命令で無理な開拓や軍事的な任務を課されることも多く、移民たちは「新天地の夢」ではなく、軍事拠点としての満州の現実に向き合わされました。

番組は、こうした構造のなかで生活した朝鮮人移民の証言を通じて、「単純な被害者」でも「一方的な加害者」でもない複雑な実像を描きます。植民地支配の中で、上からの差別を受けながら、さらに弱い立場の人々を抑圧する役割を担わされるという二重・三重の構造が、個々人の人生をどれほど引き裂いたのかが、具体的な暮らしの場面から伝わってきます。

戦後も中国に残った朝鮮人満州移民と中国朝鮮族

1945年8月、ソ連軍の侵攻によって満州は一気に戦場と化し、多くの民間人が混乱の中に投げ込まれました。女性や子どもを中心に数多くの命が奪われ、日本人開拓団の悲劇や中国残留孤児の問題は、戦後日本でも語られてきました。しかし同じ地域に暮らしていた朝鮮人移民の戦後史は、ほとんど注目されてきませんでした。

満州にいた朝鮮人の一部は、朝鮮半島へ戻ることを選びましたが、混乱の中で帰還できなかった人々や、すでに生活基盤を満州に築いていた人々は、そのまま中国に残る道を選びました。彼らやその子孫は、現在の吉林省延辺朝鮮族自治州などで中国の少数民族「朝鮮族」として暮らし続けています。延辺朝鮮族自治州は中国における朝鮮族の主要な居住地域の一つで、7つの県市に多くの朝鮮系住民が住み、独自の文化と歴史を守り続けてきました。

その一方で、戦後の中国社会において、彼らは「かつて日本に加担した存在」として批判の対象となることもありました。日本帝国の植民地支配の中で、否応なく戦争協力の立場に組み込まれたという事情は、必ずしも周囲から理解されてきたわけではありません。祖国を奪われ、日本の支配を受け、戦後は中国の少数民族として生きながら、その過去を語ることをためらい、沈黙を強いられてきた人も少なくありませんでした。

番組は、中国に残った朝鮮人満州移民やその子孫の現在の暮らしと記憶にも目を向けます。かれらが自らのルーツをどう受け止め、日本や朝鮮半島との関係をどう見つめているのか。その姿は、戦後80年を過ぎた今も終わっていない植民地主義の影を、静かにしかし鋭く映し出しています。

移民の子孫・研究者と写真家が集めた証言の力

この番組の大きな柱となっているのが、移民の子孫である研究者と写真家の存在です。札幌に暮らす研究者・朴仁哲さんは、祖父母が朝鮮からの満州移民で、自身は中国のハルビンで生まれ育った三世です。若い頃に日本へ留学し、その後、東アジアの文化交流史を専門とする研究者として、100人以上の移民一世に聞き取り調査を重ねてきました。

朴さんの調査は、単に昔話を集める作業ではありません。植民地支配のなかで抑圧され、沈黙させられてきた人々の声を記録することで、これまでの「日本中心の戦争史」の枠組みを問い直し、朝鮮人満州移民の経験を東アジア全体の歴史の中に位置づけようとする試みです。語り手にとっても、長年胸にしまってきた記憶を、自分の言葉で語り直す場となっています。

朴さんと連携して証言を記録してきたのが、中国吉林省延辺朝鮮族自治州龍井市を拠点に活動する写真家・李光平さんです。李さんは移民二世として生まれ、1990年代末から20年以上にわたって、延辺一帯で約600人の朝鮮人移民一世にインタビューし、その姿をフィルムに収めてきました。その成果は、写真記録集『「満洲」に渡った朝鮮人たち―写真でたどる記憶と痕跡―』としてまとめられ、日本では東京・新宿の高麗博物館などで写真展も開催されています。

番組では、朴さんと李さんが中国各地の元移民やその家族を訪ね歩き、カメラの前で語られる証言に耳を傾ける姿が描かれます。かつての開拓地の跡、荒れた畑や村の一角、今も暮らしが続く集落など、写真と映像が重なることで、「歴史の空白」は具体的な風景と表情を伴った記憶として甦ります。語りを務める山根基世さんの落ち着いた声が、その証言に深い余韻を与えている点も印象的です。

戦後80年目に問われる日本社会の責任と記憶の継承

戦後80年を越えた今、朝鮮からの満州移民の歴史は、日本社会がこれまで正面から向き合ってこなかったテーマの一つです。日本人開拓団や中国残留孤児の物語はある程度知られていても、同じ土地で生きた朝鮮人移民の存在は、教科書にも、一般的な歴史認識にもほとんど登場してきませんでした。

番組は、その「見落とし」自体が一つの加害の延長であることを静かに突きつけます。日本の植民地支配は、日本と朝鮮、満州を切り離して語れるものではなく、そのなかで生きた人々の人生は互いに絡み合っています。朝鮮人満州移民の歴史を学ぶことは、日本が他者の土地と生活にどのように介入し、そこでどのような序列と暴力を生み出したのかを、自分の足元から問い直すことにつながります。

同時に、この歴史を掘り起こし、証言を残そうとしているのが移民の子孫たちである、という事実も重く響きます。国家が語ろうとしてこなかった物語を、当事者とその家族が自らの手で記録しようとしている。その営みを映し出すことで、番組は「記憶の継承は誰の仕事なのか」という問いを、視聴者一人ひとりの問題として突きつけます。

第40回民教協スペシャル「あなたを忘れない 〜朝鮮からの満州移民〜」は、過去の出来事を振り返るだけのドキュメンタリーではありません。植民地支配と戦争のもとで揺れ動いた人々の人生を見つめ直し、今を生きる私たちが何を学び、どのように責任を引き受けるのかを問う、現在形の物語として描かれます。

記事についてのご注意と放送後の追記予定

こちらの内容は公式発表をもとにまとめていますが、実際の放送内容と異なる場合があります。物語の軸となる朝鮮人満州移民の歩みや、証言で明らかになる植民地支配の影響について、できるだけ丁寧に紹介しています。放送後に新たな情報が確認でき次第、追記してより正確な形に更新します。

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