「手の表現者」北薗知輝が伝える世界
手話は、言葉を置き換えるためだけのものではありません。手の動き、表情、身体、空間まで使って物語を伝える表現があります。その世界で「手の表現者」を掲げて活動しているのが、俳優・デフパフォーマーの北薗知輝さんです。『陽だまりのとき「俳優・デフパフォーマー 北薗知輝」(2026年8月11日放送)』でも、その活動が紹介されます。ストリートライブから始まり、映画、舞台、コンテンポラリーへと表現の幅を広げてきた歩みを詳しく見ていきます。
この記事でわかること
- 北薗知輝さんがどんな人物なのか
- 「手の表現者」として活動するまでの歩み
- 出演してきた映画・舞台とパフォーマンスの特徴
- 俳優・身体表現者として続く現在の活動
北薗知輝は「手の表現者」と呼ばれるデフパフォーマー
北薗知輝さんは、生まれつきろう者の俳優・身体表現者・デフパフォーマーです。
活動名としてKAZUKIの名前も使い、俳優業に加え、手話を使ったサインパフォーマンス、コンテンポラリー、舞踊など幅広い身体表現に取り組んでいます。
その北薗さんを知るうえで、最も重要な言葉が「手の表現者」です。
北薗さんの表現は、手話を音楽の歌詞に合わせるだけではありません。手の動きに加えて、表情や身体の動き、背景、物語まで組み込み、ろう者も聴者も楽しめる世界を作ることを目指しています。
ここは初めて知ると、少し印象が変わるところではないでしょうか。
「手話パフォーマンス」と聞くと、音楽を手話へ訳して見せる姿を想像する人もいるかもしれません。しかし北薗さんの場合、手話は表現を構成する要素のひとつです。
音楽のある手話表現だけでなく、無音のコンテンポラリー、手話ポエム、視覚的な身体表現にも取り組んでいます。
つまり、「聞こえる音をどう見せるか」だけではなく、最初から目で受け取る作品をどう作るかというところまで活動が広がっているのです。
個人的には、「手話ができる俳優」と理解するよりも、「手話や身体そのものを表現手段として使う俳優」と考えると、北薗さんの活動がぐっと分かりやすくなると感じます。
生まれつきろう者の北薗知輝が表現の世界へ進んだ理由
北薗知輝さんは生まれつきのろう者です。
ただし、現在確認できる公式プロフィールでは、幼少期から現在までの詳しい生い立ちや、「何歳のときに俳優を志した」「この出来事をきっかけにパフォーマーになった」といった人生の転機までは詳しく公表されていません。
そのため、表現活動を始めた理由について、こちらから特定の出来事を結びつけて説明することはできません。
確認できるのは、北薗さんの活動がストリートライブから始まったということです。
北薗さんは「手の表現者」として路上で活動を始め、その後、手話と音楽を組み合わせた表現を各地へ広げていきました。
ここで大切なのは、「ろう者だから手話を使った」という単純な話にしないことだと思います。
北薗さんが現在取り組んでいるのは、手話だけではありません。
舞台、演劇、コンテンポラリー、舞踊、無音表現などへ活動を広げています。東京都が公開したプロフィールでも、音楽のある手話表現に加え、無音コンテンポラリーや手話ポエム、視覚的な表現手法へ挑戦していることが紹介されています。
つまり北薗さんの場合、
手話を使う
↓
手話で表現する
↓
身体全体で表現する
↓
俳優として物語を演じる
というように、活動領域が広がってきたことが分かります。
個人的には、この変化が北薗さんを知るうえでいちばん興味深い部分です。
肩書だけを見ると「俳優」「デフパフォーマー」と分かれていますが、本人にとっては完全に別々の仕事というより、目で伝える表現という一本の軸でつながっているように見えてきます。
ストリートライブからプロ活動を始めるまで
北薗知輝さんの活動の原点は、各地で行ったストリートライブです。
その後、大きな転機のひとつとなったのが2017年でした。
公式プロフィールによると、北薗さんは2017年からプロのサインパフォーマーとして本格的に活動を始めています。
同年の秋から冬にかけてオーディションを受け、音楽イベントなどにも出演。さらに映像作品への出演にも活動を広げました。
ここで面白いのは、最初から大きな舞台へ出演していたわけではないことです。
路上で表現するところから始まり、イベント出演、オーディション、映画、舞台へと少しずつ活動の場を広げています。
2020年2月には、約100人規模となる自身初のワンマンライブも開催しました。
そして2021年には、東京2020パラリンピック開会式にパフォーマーとして出演しています。
ストリートライブから始めた人物が、国際的なスポーツ大会の開会式という大舞台へ進んだ。
経歴だけを並べても大きな変化ですが、その間も一貫しているのは「手」「身体」「視覚」で表現することです。
たしかに、ここまでを見ると「手話パフォーマー」という一言だけでは北薗さんを説明しきれないことが分かります。
手話と音楽を融合した独自のパフォーマンス
北薗知輝さんの活動で特徴的なのが、手話と音楽を組み合わせながら、音だけに頼らない世界を作ることです。
北薗さん自身は生まれつきのろう者ですが、作品の対象をろう者だけに限定していません。
公式プロフィールでは、ろう者も聴者も楽しめる世界観を目指していることが説明されています。
この違いは意外に重要です。
例えば、一般的な音楽ライブでは、メロディー、歌声、楽器の音が中心になります。
一方、北薗さんの表現では、
- 手の形や動き
- 表情
- 身体の動き
- 視線
- 空間の使い方
- 物語
といった視覚から受け取れる要素が大きな役割を持ちます。
さらに現在は、無音のコンテンポラリーや手話ポエムなどにも取り組んでいます。
つまり、「音楽を聞けない人にも分かるようにする」という補助的な発想だけではありません。
最初から、
見ることで成立する表現
そのものを作ろうとしているわけです。
個人的には、ここを知ってから北薗さんの活動を見るとかなり印象が変わります。
手話を「情報を伝える方法」としてだけ見るのではなく、ダンスや演劇と同じように、感情や物語を伝える芸術表現にもなり得ることが分かるからです。
北薗知輝が出演した映画・舞台作品
北薗知輝さんは、サインパフォーマーだけでなく映画・舞台俳優としても活動しています。
確認できる主な映画出演は次の通りです。
| 年 | 作品 | 役・内容 |
|---|---|---|
| 2017年 | D-RED2 | 悪役 |
| 2018年 | 夏の音、夏の光 | 谷口健太郎役・主演 |
| 2022年 | ヒゲの校長 | 寺田正一(大人)役 |
特に『夏の音、夏の光』では主演を務めています。
舞台にも活動を広げており、
- 2019年『天照大御神』
- 2022年 手話裁判劇『テロ』
- 2023年 手話&音楽劇『夜明けのうた』再演
などへの出演歴があります。
なかでも特徴的なのが、2022年の手話裁判劇『テロ』です。
この作品では、ろう者・難聴者・聴者など異なる背景を持つ出演者を広く募り、全国から82人が参加したオーディションを経て北薗さんも出演者に選ばれました。
作品は、手話と日本語を使いながら人間の倫理を問う法廷劇として上演されています。
さらに2024年には、ろう・難聴俳優を対象とした舞台芸術の取り組みで『ドメスティック・ディスタンス』にも出演しました。
こうして並べると、北薗さんは「手話を見せる人」から、作品の中の人物として物語を担う俳優へ活動を広げていることが分かります。
ここはかなり大きなポイントです。
パフォーマンスでは自分自身の身体表現が中心になりますが、俳優の場合は役として生きる必要があります。
同じ「身体で伝える」仕事でも、求められるものは少し違います。
両方を続けていることが、北薗さんの表現の幅につながっているのでしょう。
東京2020パラリンピック開会式にも出演
北薗知輝さんの経歴の中でも、大きな舞台のひとつが東京2020パラリンピック開会式です。
北薗さんはパフォーマーとして開会式に出演しています。
その後も身体表現の活動は続き、東京都の文化プロジェクト『TRAIN TRAIN TRAIN』にも参加しました。
この作品は、東京2020パラリンピック開会式の演出に関わった森山開次さんらによる舞台で、障害の有無を問わず多様な表現者が参加する作品として展開されています。
北薗さん自身も、この舞台について「未来につながるメッセージ」を仲間たちと届けたいという趣旨のコメントを寄せています。
ストリートライブからスタートした活動が、
ライブ
↓
映画
↓
舞台
↓
国際大会の開会式
↓
身体表現を中心とした舞台作品
へ広がっていることになります。
一度の出演で名前が知られたというより、異なる場所で経験を重ねながら表現の幅を広げてきた人物だと見る方が自然です。
「デフパフォーマー」は手話パフォーマーだけを意味しない
北薗知輝さんを調べていると、「デフパフォーマー」という肩書が出てきます。
「デフ」は英語のDeafに由来し、ろう者を表す言葉として使われています。
ただし北薗さんの場合、デフパフォーマーを単純に「手話で歌う人」と捉えると、実際の活動よりかなり狭くなってしまいます。
現在の肩書には、
俳優
身体表現者
デフパフォーマー
が並んでいます。
さらに活動内容には、コンテンポラリー、舞踊、手話ポエム、映画、演劇なども含まれています。
だからこそ、「手の表現者」という言葉がしっくりきます。
音声を中心に考えるのではなく、
目で見る
身体で受け取る
表情から感じる
という別の入口から作品を作る人物だからです。
初めて知ると、「手話にもこんな表現の広がりがあるのか」と感じる人は少なくないと思います。
俳優とデフパフォーマーを続ける現在
2026年8月時点でも、北薗知輝さんは俳優・身体表現者・デフパフォーマーとして活動を続けています。
現在公開されている本人のプロフィールでも、映画や舞台だけに活動を限定せず、さまざまな視覚的パフォーマンスへ取り組んでいることが確認できます。
北薗さんの場合、「俳優になるためにサインパフォーマーを辞めた」という形ではありません。
逆に、
手話表現
+
身体表現
+
俳優
を並行しているところに特徴があります。
さらに、全国手話パフォーマンス甲子園の審査員、手話表現講座の講師など、自分が舞台へ立つ以外の活動も行ってきました。
これは個人的にかなり大事な部分だと感じます。
表現者として自分の作品を見せるだけでなく、次に表現する人と関わる仕事にも活動が広がっているからです。
見る側として北薗さんの活動を追う場合も、「次のテレビ出演はいつか」だけではなく、舞台、公演、ダンス、講演、ワークショップなど幅広く確認した方が見つけやすい人物です。
北薗知輝の今後の出演・活動
2026年8月9日時点で、北薗知輝さんについて今後長期間にわたる出演予定が一覧として公表されているわけではありません。
そのため、「次はこの映画へ出演する」「今後この活動を中心にする」といったことを現時点で断定することはできません。
ただ、これまでの活動を見ると、北薗さんはひとつのジャンルに絞らず、
映画
舞台
サインパフォーマンス
コンテンポラリー
ダンス
講演・手話表現
イベント
と活動を広げてきました。
そのため、新しい出演情報を確認したい場合は、映画情報だけではなく、本人が発信しているSNSや所属先の出演情報などを確認するのが分かりやすいでしょう。
北薗さんを知る入口は「生まれつきろう者のデフパフォーマー」かもしれません。
しかし、経歴をたどっていくと、それだけでは収まりません。
ストリートライブから出発し、プロのサインパフォーマーとなり、映画で主演を務め、舞台へ進み、東京2020パラリンピック開会式にも出演。そして現在は、手話だけでなく無音表現やコンテンポラリーなどにも挑戦しています。
個人的には、北薗知輝さんを理解するうえで覚えておきたいのは、やはり「手の表現者」という言葉です。
「聞こえない世界をどう補うか」ではなく、目で見るからこそ生まれる表現をどう広げていくか。
北薗さんのこれまでの活動を見ていくと、その方向性が一貫していることが分かります。今後新しい映画や舞台で名前を見かけたときにも、この背景を知っていると、作品の見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。


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