社会人から瓦職人へ転身し文化財の屋根を守ってきた長谷川成幸さん
2026年9月12日放送のびわ湖放送「滋賀経済NOW」では、滋賀県野洲市の株式会社長谷川が特集されます。中心人物となる代表取締役の長谷川成幸さんは、最初から瓦職人を目指していた人物ではありません。ゼネコンの現場監督を経験した後に瓦の世界へ入り、奈良で8年間修業。文化財や社寺の瓦屋根を手掛ける技能を磨き、2023年度には「現代の名工」、2026年には黄綬褒章を受章しました。
この記事でわかること
- 長谷川成幸さんが社会人から瓦職人へ転身した経緯
- 2023年「現代の名工」と2026年黄綬褒章の実績
- 原寸大の手描き図面にこだわる理由
- 株式会社長谷川が手掛けてきた文化財や社寺の瓦屋根
長谷川成幸さんは株式会社長谷川を率いる「現代の名工」
長谷川成幸さんは、滋賀県野洲市にある株式会社長谷川の代表取締役です。
専門は瓦葺き。一般住宅だけでなく、社寺仏閣や重要文化財といった伝統建築の瓦屋根を手掛けてきました。
厚生労働省の2023年度「卓越した技能者」、いわゆる現代の名工にも選ばれています。
厚生労働省は長谷川さんについて、文化財や社寺を中心に実績を重ね、建物全体とのバランスを考えながら美しい曲線を生み出す瓦葺き技能を高く評価しています。
2023年「現代の名工」、2026年には黄綬褒章を受章
長谷川さんの技術力を示す大きな実績が2つあります。
- 2023年度:卓越した技能者「現代の名工」
- 2026年春:黄綬褒章
現代の名工は、卓越した技能を持ち、その道で第一人者と認められる技能者を厚生労働大臣が表彰する制度です。長谷川さんは「かわらふき工」として選ばれました。
さらに2026年春には黄綬褒章を受章。滋賀県中小企業団体中央会の資料でも、株式会社長谷川代表取締役・滋賀県瓦工事協同組合理事長の長谷川成幸さんとして受章が掲載されています。
びわ湖放送も9月12日の番組予告で「今年は黄綬褒章を受章した」と紹介しています。
最初から瓦職人だったわけではなくゼネコンの現場監督から転身
長谷川さんの経歴で興味深いのが、瓦職人としてのスタートが決して早くなかったことです。
厚生労働省の資料によると、長谷川さんは最初にゼネコンの現場監督を4年間経験しました。
その後、瓦工事の世界へ入り、奈良の工事店で8年間修業しています。
本人も「何も知らないまま奈良の工事店にて8年間学ばせていただいた」と振り返っています。
結果的に、この現場監督時代の経験が後の瓦職人人生に生きました。
現場監督時代の図面経験が瓦葺きの大きな武器になった
「滋賀経済NOW」が今回特に注目するのが、長谷川さんの原寸大の手描き図面です。
瓦屋根は、同じ瓦を同じように並べれば完成するものではありません。
寺社建築では建物全体の形、屋根の曲線、その土地や時代の様式を考えながら瓦を配置していく必要があります。
長谷川さんが奈良で修業していた当時、その現場ではすでに原寸施工図を作成した高度な施工が行われていました。
そこで役に立ったのが、ゼネコンの現場監督時代に施工図面を描いた経験でした。
長谷川さん自身、図面経験によって「工事の全体が見えるようになった」としています。
一見すると遠回りだった現場監督経験が、結果として独自の強みになったわけです。
奈良で8年間修業し1993年に地元へ戻って会社を継いだ
奈良で技術を学んだ長谷川さんは、1993年に地元へ戻り会社を継ぎました。
株式会社長谷川は、野洲市商工会の掲載では設立年月日が1921年とされている歴史のある会社です。
長谷川さんの代になってからも、昔ながらの瓦葺き技術を守るだけではなく、地震や現代建築に合わせた安全性への対応を進めていきました。
その大きな転機の1つが、1995年の阪神・淡路大震災でした。
阪神・淡路大震災後に「軽くて落ちない瓦屋根」へ対応
厚生労働省の資料によると、阪神・淡路大震災を境に瓦業界には大きな変化が起きました。
求められるようになったのは、軽く、飛ばず、落ちにくい施工です。
長谷川さんが奈良で学んでいた工法には、屋根を重くする葺土を使わない方法がすでに取り入れられていました。
その経験があったため、株式会社長谷川では比較的スムーズに桟葺き工法へ移行できたといいます。
また、棟部分では土の代わりに南蛮漆喰を使用するなど、屋根の軽量化や耐震性向上にも取り組んできました。
伝統技術をそのまま残すだけでなく、建物を安全に次世代へ残すために技術を変えてきたことも、「現代の名工」と評価された理由の1つです。
京都御所など数多くの文化財・社寺の瓦屋根を施工
長谷川さんの仕事は一般住宅だけではありません。
野洲市商工会は、株式会社長谷川が神社仏閣や重要文化財の瓦屋根施工に携わり、滋賀・京都を中心に広い地域で仕事をしてきたと紹介しています。
施工実績として、
- 京都御所
- 信楽院
- 真宗木辺派本山 錦織寺
- 西明寺
- 長浜別院大通寺
- 興善寺
などが確認できます。
寺社の瓦屋根には、遠くから見たときの美しい曲線も求められます。
野洲市商工会の紹介では、奈良と京都でも屋根上部の線の出し方が異なり、建築された時代によっても様式が違うことが説明されています。
長谷川さんの仕事は「瓦を取り付ける」だけではなく、建物が持つ時代や地域の美しさを瓦で再現する仕事でもあります。
鬼師と連携して瓦屋根の価値を次世代へ伝える
2026年9月12日の「滋賀経済NOW」では、長谷川さんのこれまでの実績だけでなく、これからの挑戦にも焦点が当たります。
びわ湖放送が予告しているのが、瓦そのものを作る「鬼師」との連携です。
鬼瓦などを作る鬼師と、実際に建物へ瓦を葺く職人。
それぞれ異なる技術を持つ職人が協力し、機能性と美しさを両立した瓦屋根を次の世代へ残そうとしています。
長谷川さん自身も、厚生労働省の資料で職人不足に触れ、身につけた技術を1人でも多くの人へ伝えたいという考えを示しています。
株式会社長谷川の場所と事業内容
株式会社長谷川は滋賀県野洲市にあります。
- 会社名:株式会社長谷川
- 代表者:長谷川成幸
- 所在地:滋賀県野洲市西河原3丁目2455
- 電話番号:077-589-2322
- 主な事業:屋根瓦工事
- 得意分野:和形瓦、本瓦葺き、桟葺き
- 施工対象:民家、社寺仏閣、文化財など
滋賀県瓦工事協同組合には、長谷川さん本人の紹介と複数の施工事例も掲載されています。
屋根工事を依頼する会社という側面だけでなく、文化財修復や伝統技能を残していく担い手でもあります。
社会人から始めた瓦職人人生は次世代への技術継承へ続く
長谷川成幸さんは、幼い頃から一直線に瓦職人を目指した人物ではありません。
ゼネコンの現場監督を4年間経験した後に瓦の世界へ入り、奈良で8年間修業しました。
そこで学んだ原寸施工図や瓦葺き技術と、現場監督時代に身につけた図面の知識が結びつき、文化財や寺社の屋根を支える独自の技能へ発展していきました。
1995年の阪神・淡路大震災後には、伝統だけに固執せず屋根の軽量化や耐震性向上にも対応。
そして2023年の「現代の名工」、2026年の黄綬褒章へとつながりました。
現在その視線は、自分の仕事だけではなく職人不足の時代に瓦葺き技術をどう残すかという次の課題へ向いています。
昔の建物を守る仕事でありながら、実際には未来を作る仕事でもある。その点が、長谷川さんの瓦職人人生の大きな特徴です。
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