倉敷のイ草文化を「いかご」で今の暮らしへつなぐ須浪隆貴さん
2026年9月30日放送の『めざましテレビ』「キラビト」に、岡山県倉敷市でイ草を使った生活道具を手がける須浪隆貴(すなみ・りゅうき)さんが登場します。
須浪さんは、1886年創業の「須浪亨商店」5代目。かつて畳表や花ござを作っていた家業の中で育ち、祖母が続けてきたイ草のかご「いかご」の技を受け継ぎました。現在は昔ながらの織り機を使いながら、かご、鍋敷き、びんかご、縄のれんなど、現代の生活で実際に使える品を生み出しています。
2026年には第16回倉敷民藝館賞を受賞。倉敷のイ草文化を単に保存するのではなく、「今も使われる生活道具」として次の時代につないでいる職人です。
この記事でわかること
- 須浪隆貴さんの経歴と須浪亨商店5代目になるまで
- 倉敷の「いかご」がどんなイ草製品なのか
- 祖母から受け継いだ昔ながらの製法と現在の商品
- 2026年の倉敷民藝館賞受賞と購入できる場所
須浪隆貴さんは1886年創業・須浪亨商店の5代目
公式動画:岡山県文化連盟「The民藝 ~伝統を受け継ぐい草のいかごづくり~」
須浪隆貴さんは1993年、岡山県倉敷市生まれ。須浪亨商店は1886年創業で、もともとは倉敷で畳表や花ござなどイ草を使った製品を作ってきた家です。
子どもの頃からものづくりが好きだった須浪さんにとって、祖母が「いかご」を作る姿は特別な職人仕事というより、身近な日常でした。
小学生の頃から祖母の仕事を手伝い、およそ10年間、その姿を見ながら育っています。岡山市内のデザイン専門学校へ進み、高校・専門学校時代には革や布を使って靴や洋服まで制作していました。
専門学校卒業後は、子どもの頃から体で覚えてきたイ草の仕事へ。岡山県文化連盟では、20歳からイ草で編むかごや鍋敷き、びんかご、縄のれんなどを制作していると紹介されています。
父の死で途絶えた家業を祖母の「いかご」がつないだ
須浪さんの家では、もともとイ草を育て、畳表や花ござを作っていました。
しかし須浪さんが11歳のときに父親が亡くなり、それまで続いてきた仕事はいったん途絶えます。その後、祖母が取り組んだのが「いかご」作りでした。須浪さんも祖母の横で作業を手伝いながら技術を身につけていきました。
ここが須浪さんのものづくりを語るうえで大きなポイントです。
家業をそのまま昔と同じ形で復活させたのではありません。地域のイ草産業そのものが縮小していく中で、残されていた技術を「いかご」という日用品へつなぎ直しました。
現在の須浪亨商店の中心にあるのは、かつて花ござを作る過程とも深く結びついていたイ草の手仕事です。
「いかご」は倉敷で使われてきたイ草の買い物かご
「いかご」は、イ草を使って作るかごです。
倉敷市茶屋町周辺は江戸時代の干拓地で、塩分を含む土地にも強いイ草や綿花の栽培が盛んになりました。須浪亨商店もその土地で畳表や花ござを作ってきました。
いかごは、かつて地域で買い出し用として使われていた生活道具です。
須浪亨商店ではイ草を縄状に加工し、昔ながらの織り機に1本ずつセットして生地を織ります。その後、持ち手などのパーツを組み合わせ、かごの形へ仕上げていきます。
現在、岡山県内でこの「いかご」を作っているのは須浪亨商店だけと岡山県文化連盟は紹介しています。完成した品は国内だけでなく海外にも広がっています。
祖母の織り機を使いながら「今使いやすい形」を作る
須浪さんの仕事で印象的なのは、昔の技法を残すこと自体が目的になっていないことです。
祖母から受け継いだ年代物の織り機を使い、基本的な作り方を守りながらも、現代の暮らしの中で使いやすいサイズや形へ整えています。
天然素材のイ草は状態が一定ではありません。縄の太さや性質を見極めながら、織っている途中で結び直すなど細かな調整が必要になります。
須浪さん自身も、一つのかごを作れるようになることと、同じ品質の商品を安定して作れることは別だと振り返っています。素材の癖を経験として積み重ねてきたからこそ、現在の製品につながっています。
そして制作しているのはバッグ型のいかごだけではありません。
びんかご、鍋敷き、縄のれんなど、イ草の軽さ、しなやかさ、香りを生かした生活用品へ展開されています。
2026年に第16回倉敷民藝館賞を受賞
須浪隆貴さんは2026年、第16回倉敷民藝館賞を受賞しました。
評価されたのは、地元に根付いたイ草の伝統と向き合いながら、生活の中で使いやすい品を作り続け、現代の「民藝」を広く伝えている活動です。
須浪さんは昔ながらの作り方を大きく変えるのではなく、その技術を現代の暮らしへなじませることを大切にしています。
2026年は須浪亨商店にとって創業140周年にもあたります。現在はいかご作りを家族で続けており、5代目の須浪隆貴さん、志歩さん、祖母の榮さんらを中心に制作しています。
140年前から続く店で、祖母から孫へ伝わった技術が現在の生活用品として使われている。その長い時間のつながりこそ、須浪亨商店のいかごの大きな魅力です。
須浪亨商店のいかご・鍋敷きは購入できる
須浪亨商店公式サイトには全国の取扱店が掲載されています。
岡山県内では「くらしのギャラリー 本店」「FRANK 暮らしの道具」「白神商店」「晴れの国 おかやま館」などが取扱店として紹介されています。愛知県では名古屋市の「chaconnee」と「sahan」も掲載されています。
オンラインでは取扱店によって、いかご、鍋敷き、びんかごなどが販売されています。ただし手仕事による商品なので、種類によっては売り切れている場合があります。
中川政七商店では「須浪亨商店 イ草鍋敷き 中」などの取扱実績があり、芯までイ草を使って固く編み上げた丈夫な作りが特徴です。
まとめ
須浪隆貴さんは、1886年創業の須浪亨商店5代目として、倉敷のイ草文化を受け継ぐ職人です。
幼い頃から祖母がいかごを作る姿を見て育ち、20歳頃から本格的に制作へ。祖母から受け継いだ織り機と技法を使いながら、バッグ型のいかご、びんかご、鍋敷き、縄のれんなど、現代の暮らしに合う生活道具へ展開してきました。
2026年には倉敷民藝館賞を受賞し、須浪亨商店も創業140周年を迎えました。
『めざましテレビ』「キラビト」で紹介されるのは、単に珍しいイ草製品を作る職人だからではありません。衰退していった地場産業の技術を、祖母から受け継ぎ、「今も使いたくなるもの」へ変えながら残しているところに、須浪隆貴さんの仕事の面白さがあります。
参考リンク
岡山県文化連盟「The民藝 ~伝統を受け継ぐい草のいかごづくり~」
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