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長谷部佳宏は研究者出身の花王社長|界面制御技術を経営へつなぐ経歴【カンブリア宮殿】

経営者・事業家

長谷部佳宏が研究開発から花王の経営トップへ進んだ道

2026年10月1日放送の『カンブリア宮殿』では、花王の代表取締役・社長執行役員を務める長谷部佳宏さんが登場します。

長谷部さんの大きな特徴は、営業やマーケティングから経営トップになった人物ではなく、化学を学び、花王の研究開発部門を歩き続けて社長まで上り詰めた研究者出身の経営者であることです。

2021年に社長へ就任した後は構造改革を進め、2023年には中期経営計画「K27」を策定。2026年1〜6月期には花王の営業利益が上期として過去最高となる958億円に達しました。現在は、花王が長年培ってきた「界面制御技術」を日用品だけでなく農業などにも展開し、技術を新しい事業へ変えていく段階に入っています。

この記事でわかること

  • 長谷部佳宏さんが研究者から花王社長になるまでの経歴
  • 東京理科大学で工業化学を学び、1990年に花王へ入社した歩み
  • 社長就任後に進めてきた構造改革と「K27」の内容
  • 界面制御技術を農業など新しい分野へ広げる花王の現在

長谷部佳宏は研究開発畑から花王社長へ

出典:花王公式「長谷部佳宏」掲載写真・プロフィール

長谷部佳宏さんは、花王の代表取締役・社長執行役員です。

経営者として現在の肩書だけを見ると大手日用品メーカーのトップですが、そのキャリアの中心にあったのは一貫して「研究」です。

1990年に花王へ入社後、化学品、衣料・家庭用品、ヘアケア、基盤研究と、扱う領域を広げながら研究開発部門で経験を積みました。

花王が公表している主な経歴は次の通りです。

  • 1990年4月 花王入社
  • 2003年 化学品研究所 第4研究室長
  • 2008年 ハウスホールド研究所 第1研究室長
  • 2011年 ヘアビューティ研究所長
  • 2014年 基盤研究セクター長、執行役員
  • 2015年 研究開発部門統括
  • 2016年 取締役
  • 2018年 専務執行役員、先端技術戦略室統括
  • 2019年 代表取締役
  • 2021年1月 社長執行役員

つまり長谷部さんは、商品の研究から始まり、研究組織そのものを率いる立場へ進み、さらに会社全体の技術戦略を担当した後に経営トップとなっています。

花王が長谷部さんを取締役として選任する理由でも、長年にわたって研究開発に携わったことや、先端技術戦略、DXを率いてきた経験が挙げられています。

「研究を経営へどうつなげるか」という長谷部さんのキャリアそのものが、現在の花王の戦略にもつながっています。

東京理科大学で工業化学を学び1990年に花王入社

長谷部さんは東京理科大学工学部工業化学科で学び、博士課程を修了しています。

その後、1990年に花王へ入社しました。研究者としての専門性を持った状態で企業へ入り、その後30年以上にわたり花王でキャリアを築いています。

入社後の仕事も、最初から経営企画や営業だったわけではありません。

化学品研究をはじめ、家庭用製品、ヘアケアなど、花王の幅広い事業を研究開発側から経験しました。

特に興味深いのは、化学品という「素材」に近い分野と、洗剤やヘアケアといった生活者に近い製品の両方を経験している点です。

研究室だけで技術を完成させるのではなく、その技術が商品になり、消費者の生活の中で使われるところまで見てきたキャリアといえます。

化学品・ヘアケア研究から研究開発部門トップへ進んだ経歴

長谷部さんの経歴をたどると、研究テーマが1つに固定されていません。

2003年には化学品研究所の研究室長、2008年には家庭用品を扱うハウスホールド研究所の研究室長、2011年にはヘアビューティ研究所長を務めました。

そして2014年には基盤研究セクター長と研究開発部門副統括、2015年には研究開発部門全体の統括へ進んでいます。

花王には、すぐ商品になるものを開発する研究だけでなく、5年後、10年後を見据えて物質や人体の仕組みそのものを研究する基盤技術研究があります。

皮膚、代謝、泡、酵素などを掘り下げ、その成果を複数の商品や事業へ展開していくことが花王の研究開発の特徴です。

長谷部さんが後に会社全体を率いることになる背景には、こうした「1つの商品を見る」のではなく、「技術が将来どんな価値を生み出せるか」を考える研究開発部門での経験があります。

2021年の社長就任から花王の構造改革を推進

長谷部さんが社長執行役員に就任したのは2021年1月です。

その後、花王は2023年8月に中期経営計画「K27」を策定しました。

K27では単純に売上規模を追うのではなく、事業を選び、資本効率を高め、「投資して強くなる事業」へ資源を振り向ける考え方が明確にされています。

主な柱は、グローバルで強みを発揮できる事業の育成、収益性と資本効率の改善、人材・組織の改革、外部パートナーとの共創です。

長谷部さん自身も2026年のメッセージで、これまで構造改革を軸として「事業の選択と集中」「資本効率を重視した経営」「グローバルを見据えた組織改革」を進め、業績が回復軌道に入ったと説明しています。

研究者出身の社長ですが、現在取り組んでいるのは研究費を増やすことだけではありません。

限られた資源をどの事業へ配分するのか、どの分野なら花王独自の技術が競争力になるのかを見極め、技術と経営を結び付けることが長谷部さんの役割になっています。

花王の「界面制御技術」を日用品から農業へ広げる戦略

現在の花王を理解する重要なキーワードが「界面制御技術」です。

水と油のように、そのままでは混ざりにくい物質同士の境界をコントロールする技術は、洗剤やメイク落としなど花王が長年手がけてきた商品と深く関係しています。

『カンブリア宮殿』でも、花王が培ってきた界面技術を再構築し、メイク落としや洗濯洗剤から農業まで事業領域を広げる戦略が取り上げられます。

農業分野では、花王独自の界面制御技術を活用した「機能性展着剤(アジュバント)」などを展開しています。

これは農薬を作物の表面へ広げたり付着させたりする働きを助け、農薬本来の効果を引き出すためのものです。

花王は、無駄になる農薬を減らしながら効率的な生産につなげ、「食糧増産」と「環境保全」の両立を目指しています。

家庭の洗面所や洗濯機の周辺で使われてきた科学が、農業現場の課題解決にも使われる。

ここに、研究開発を長く経験してきた長谷部さんが進める「技術を別の市場へ展開する経営」の特徴が表れています。

2026年上期営業利益過去最高と現在の花王

花王の2026年1〜6月期の連結業績は、

  • 売上高 8719億3400万円
  • 営業利益 958億3100万円
  • 前年同期比 売上高7.8%増
  • 前年同期比 営業利益38.5%増
  • 親会社の所有者に帰属する中間利益 656億6200万円

となりました。営業利益は上期として過去最高を更新しています。

ただし、958億円にはロジスティクス最適化に伴う土地売却益115億円が含まれています。

一時的な要因だけを見て「構造改革ですべて利益が増えた」と考えるのは正確ではありません。

一方で土地売却益を除いた営業利益でも約843億円となり、前年同期から改善しています。花王の資料でも、グローバルコンシューマーケア事業で構造改革の収益性改善などが増益に寄与したとしています。

花王は2026年12月期の通期予想も、売上高1兆8000億円、営業利益1900億円へ上方修正しました。

長谷部さんの社長就任から約5年。

研究開発出身のトップが進めてきた改革が、技術戦略だけでなく利益構造の変化としても見え始めています。

長谷部佳宏が目指す「質」の成長と次の事業領域

長谷部さんが現在強調しているのが、「量ではなく質の成長」です。

短期的に売上規模を拡大するのではなく、収益性と競争力を伴う事業を育て、そこへ重点的に投資する考え方です。

その中心に位置付けているのが「グローバル・シャープトップ戦略」です。

花王ならではの技術やブランドを生かし、社会的に重要性が高まっている課題に対して、世界で強い存在になれる事業へ集中していきます。

ここでも長谷部さんの研究者としての経歴が生きてきます。

新しい市場へ入るためだけに事業を増やすのではなく、花王がすでに持つ研究成果や技術資産を別の用途へ転用し、新しい価値を作る。

洗剤やメイク落としから農業へ広がった界面制御技術は、その象徴的な例です。

長谷部さんが進める花王の変革は、「日用品メーカーから別の会社になる」というものではありません。

むしろ、日用品を作り続ける中で蓄積した科学を掘り起こし、それを次の事業へつなげようとする変革です。

カンブリア宮殿の放送情報

『カンブリア宮殿』の長谷部佳宏さん・花王特集は、2026年10月1日23時06分〜23時55分にテレビ東京系で放送されます。

テーマは「唯一無二の“きれい”を科学せよ!『花王』ヒット連発の舞台裏」。

研究者から社長になった長谷部さんが、花王の技術をどのように経営と新事業へつなげているのかが大きなポイントになりそうです。

まとめ

長谷部佳宏さんは、東京理科大学で工業化学を学び、1990年に花王へ入社した研究開発出身の経営者です。

化学品、家庭用品、ヘアケア、基盤研究と幅広い研究部門を経験し、2015年には研究開発部門を統括。2019年に代表取締役、2021年には社長執行役員へ就任しました。

社長就任後は中期経営計画「K27」のもとで構造改革を進め、2026年上期には営業利益が過去最高を更新しました。

そして現在は、花王が長年培ってきた界面制御技術を洗剤や化粧品だけでなく農業などにも広げています。

「研究者が社長になった」のではなく、「研究で培った技術を見る目を、そのまま経営へ持ち込んだ」。

長谷部さんの経歴を見ると、現在の花王がなぜ技術を起点に新しい市場へ進もうとしているのかが見えてきます。

参考リンク

テレビ東京「カンブリア宮殿」2026年10月1日放送回

花王公式 長谷部佳宏プロフィール

花王「経営戦略と中期経営計画 K27」

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