半澤鶏卵3代目・半澤清哉さんが挑む「卵は安くて当たり前」からの脱却
2026年10月3日放送のNHK総合「所さん!事件ですよ TKGが海外で大人気!? ニッポンの卵が大進化」では、1個2000円を超える高級ブランド卵をはじめ、日本の卵の価値が大きく変わっている現状が取り上げられます。
その「1個2000円」という世界で実際にブランド卵の事業化へ挑戦してきたのが、山形県天童市の半澤鶏卵3代目・半澤清哉さんです。「卵は安くて当たり前」という常識を変え、日本の高品質な卵を海外へ送り出す「日本一のブランド卵革命」を掲げています。
この記事でわかること
- 半澤清哉さんが進める1個2000円のブランド卵とは
- 高価格にした理由と純国産鶏・平飼いへのこだわり
- 野球少年だった半澤さんが家業を継ぐと決めた転機
- 半澤鶏卵の商品を購入できる公式通販と現在の価格
1個2000円「日本一のブランド卵革命」が目指すもの
公式動画:第4回「アトツギ甲子園」決勝大会・半澤清哉さんのピッチ
半澤清哉さんが打ち出したのが、1個2000円という価格帯の卵を世界へ販売する「日本一のブランド卵革命」です。
中小企業基盤整備機構のJ-Net21では、このブランド卵について、国内では非常に希少な純国産鶏種を平飼いで育てて生産し、外部の食味検査では、うま味とコクが通常の卵より高い結果が出たと紹介されています。
重要なのは、「高級だから2000円」という単純な発想ではありません。
半澤さんが変えようとしているのは、長年続いてきた「卵は安いほどいい」という価値観です。
飼料、光熱費、資材費などが上昇しても、卵はスーパーの特売品として安さを求められやすい食品です。一方、生産者側には飼料価格の上昇や鳥インフルエンザなど大きな経営リスクがあります。
そこで半澤さんは、卵そのものの価値を高めて適正な利益を確保し、養鶏業を持続できる産業へ変えていく道を選びました。
1個2000円と現在通販中の「高擶10個2200円」は別の商品
ここは価格を調べる際に注意したいポイントです。
半澤鶏卵の公式オンラインショップでは現在、平飼い卵「高擶(たかだま)」が販売されています。
- 商品名:平飼い卵 高擶
- 内容量:10個
- 価格:2,200円(税込)
- 産地:山形県
- 生食での賞味期限:発送日から14日
- 保存方法:10℃以下で冷蔵
- 通販:半澤鶏卵公式オンラインショップ
つまり、現在公式通販に掲載されている「高擶」は10個2200円です。半澤さんが新規事業として掲げた「1個2000円の日本一のブランド卵」と、現在一般向け通販で販売されている「高擶」を同じ商品として扱うことはできません。
「1個2000円」という数字は、半澤さんがブランド卵を海外市場へ展開し、これまでとは異なる価値を作るプロジェクトの象徴でもあります。
半澤清哉さんはプロ野球選手を目指していた
半澤清哉さんは、生まれたときから卵が身近にある環境で育ちました。
半澤鶏卵は山形県天童市の企業で、創業は1960年。祖父の半澤清助さんが養鶏と卵の販売を始め、現在は父・半澤清彦さんが代表取締役を務めています。清哉さんはその3代目です。
ただ、幼いころから一直線に養鶏業を目指していたわけではありません。
少年時代の夢はプロ野球選手でした。
野球に打ち込みながらも、自分とプロ選手との実力差を感じ、「自分は何で勝負するのか」と考えるようになります。
そこで改めて自分の人生を振り返ったとき、真っ先に浮かんだのが卵でした。
生まれたときから家族や従業員が卵の仕事に取り組む姿を見続けてきたことから、半澤さんは家業を継ぐ道を意識するようになります。
父はすぐに家業へ入れず外の世界を見ることを勧めた
家業を継ぐ決意を伝えた半澤さんに対し、父・清彦さんは、すぐ会社へ入るよう求めませんでした。
むしろ、他社で働き、外の世界を経験してから判断すればいいという考えでした。
そのため半澤さんは大学卒業後、家業へ直接入るのではなく企業に勤務します。
さらに「自分自身でゼロから売上を作りたい」という思いから株式会社RISEを創業。クラウドファンディングのコンサルティングや、家業の卵を扱う卸売事業にも取り組みました。
単なる「養鶏場の跡取り」ではなく、一度外へ出て営業や事業づくりを経験したことが、後のブランド卵戦略へつながっていきます。
転機は2024年「アトツギ甲子園」だった
半澤さんの構想が大きく表へ出たのが、2024年に開催された第4回「アトツギ甲子園」です。
中小企業の後継者が新規事業のアイデアを競う大会で、半澤さんは「農畜産業界に未来を!世界へ羽ばたく日本一のブランド卵革命」を発表し、優秀賞を受賞しました。東北経済産業局も受賞を公表しています。
プレゼンの中心にあったのは、高品質な日本の卵を海外へ売り出し、ブランド価値そのものを引き上げる構想でした。
安値競争を続ければ、養鶏農家が利益を確保できなくなり、産業自体が縮小していきます。
だからこそ「安い卵を大量に売る」のとは別の道を作る。
1個2000円という驚くような価格設定には、日本の卵を「安価な日常食品」だけではなく、世界で価値を認められる農畜産物へ変える狙いがあります。
香港・シンガポール・ハワイへ卵を輸出
半澤鶏卵は国内だけを見ているわけではありません。
2025年9月に公開されたアトツギ甲子園のインタビューでは、すでに香港、シンガポール、ハワイへの輸出実績があり、ドバイへの展開準備も進めていることが明らかになっています。
半澤さんが海外に注目する理由の一つが「ブランド価値」です。
日本国内では、卵は「安くて栄養価の高い食品」というイメージが非常に強くあります。
しかし海外の高級ホテルや日本料理店など異なる市場へ持っていけば、「日本産の高品質な卵」という別の評価軸を作ることができます。
海外でブランド力を高め、その価値を日本へ還元する。
卵の値段を上げること自体が目的なのではなく、養鶏業を継続できる利益を作ることまで見据えた戦略なのです。
半澤鶏卵は生産から加工・販売まで手がける
半澤鶏卵の強みは、生卵だけの会社ではないことです。
鶏卵の生産から加工、販売までを手がける6次産業化を進め、「スモッち」をはじめとした加工品やスイーツなども展開しています。
公式オンラインショップでは現在、
- 平飼い卵「高擶」
- いではのもみじ 紅
- いではのもみじ 極
- いではのさくら 桜
- いではのさくら 白
- 半熟燻製たまご「スモッち」
- スモッちGOLD
- バウムクーヘン「萌芽」
- いではプリン
などを取り扱っています。
公式通販では生卵を年間を通じてクール便で発送しており、「高擶」もオンラインから購入できます。
3代目が目指すのは「山形の卵を世界へつなぐ会社」
半澤さんの目標は、自社商品の売上だけにはとどまりません。
山形や東北では人口減少が進む一方、半澤鶏卵の販売先は長く東北を中心としてきました。そのため、今後は首都圏と海外へ販路を広げる必要があると考えています。
祖父が養鶏を始め、父の代で山形県内や東北へ事業を広げ、3代目の自分は全国、そして世界へ。
60年以上続く家業を守るために、これまでと同じことを続けるのではなく、卵の価値そのものを変えようとしているのが半澤清哉さんです。
1個2000円という価格はインパクトがありますが、その背景には、安値競争から養鶏農家を守り、日本の卵を世界で評価される食品へ育てたいという大きな事業構想があります。
まとめ
半澤鶏卵3代目の半澤清哉さんは、プロ野球選手を目指した少年時代を経て家業を継ぐことを決め、外部企業での勤務や自らの会社設立を経験してきました。
そして2024年の「アトツギ甲子園」で打ち出したのが、1個2000円の卵を世界へ届ける「日本一のブランド卵革命」です。純国産鶏や平飼いなどによって付加価値を高め、「卵は安くて当たり前」という従来の常識から養鶏業を解放しようとしています。
すでに半澤鶏卵の海外展開は香港、シンガポール、ハワイへ広がっています。
一方、一般の人が現在公式通販で購入できる平飼い卵「高擶」は10個2200円。「1個2000円のブランド卵」とは分けて考える必要があります。
卵を値段の安さだけで競う食品から、生産者の技術や飼育方法まで評価される食品へ。その転換を世界市場から起こそうとしているところに、半澤さんの挑戦の面白さがあります。
参考リンク
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