生卵文化のなかった海外で「TKG」を人気メニューへ変えたピーター・ンさん
2026年10月3日放送のNHK総合「所さん!事件ですよ TKGが海外で大人気!? ニッポンの卵が大進化」では、日本ではおなじみの卵かけご飯が海外で広がっている現在が取り上げられます。
その象徴的な店が、シンガポールや香港などで展開してきた卵料理専門店「Tamago-EN(たまご園)」です。EN Groupを兄のレイモンド・ンさんと創業したピーター・ンさんは、日本旅行で出会った卵かけご飯に魅了され、白身をふわふわのメレンゲにする「Ultimate TKG」を生み出しました。日本のTKGをそのまま持ち込むのではなく、生卵になじみの薄い海外の人にも食べやすい料理へ変えたことが大きな特徴です。
この記事でわかること
- 「たまご園」の究極のTKGとはどんな料理なのか
- 白身をメレンゲにした理由
- ピーター・ンさんと日本の卵かけご飯との出会い
- 沖縄県産卵を使って海外へ広げた背景
「究極のTKG」は生卵の白身をふわふわのメレンゲにする

「たまご園」の代表的なメニューが「Ultimate TKG」です。
日本の卵かけご飯と同じようにご飯と生卵を組み合わせていますが、見た目は一般的なTKGとは大きく違います。
最大の特徴は、卵白を泡立てて雲のようなメレンゲにし、その上へ濃いオレンジ色の卵黄をのせることです。公式メニューでは、日本産の生卵の黄身と泡立てた白身、ご飯、調味料を組み合わせた料理として提供されています。
シンガポール向け公式メニューでは、
- Ultimate TKG:6.50シンガポールドル
- Salmon Flake Ikura:12.50シンガポールドル
- Salmon Avocado:14.50シンガポールドル
- Teriyaki Chicken:12.50シンガポールドル
- Unagi Tamago:14.50シンガポールドル
- Saikoro Steak:16.50シンガポールドル
など、TKGを土台にした複数の料理が掲載されています。
日本では非常にシンプルな家庭料理ですが、「たまご園」では卵そのものを主役にした外食メニューへ進化させています。
メレンゲにした理由は「生卵らしさ」を和らげるため
なぜ普通に卵を割るのではなく、わざわざ白身を泡立てるのでしょうか。
大きな理由が、海外では日本ほど生卵をそのまま食べる習慣が定着していなかったことです。
香港でTKG人気を取材した際、ピーター・ンさんは、白身をメレンゲにすることで、生卵特有の生々しい印象よりもクリーミーな食感になると説明しています。
これは単なる見栄えの工夫ではありません。
生卵を食べ慣れていない人にとって、透明でとろりとした卵白は心理的なハードルになり得ます。
そこで、
生の白身
↓
しっかり泡立てる
↓
白くふわふわしたメレンゲにする
↓
濃厚な黄身とご飯を合わせる
という形へ変更しました。
日本料理を海外へ持っていくとき、そのまま再現するのではなく「現地の人がどう感じるか」から料理を組み直したのが「Ultimate TKG」なのです。
サーモンやアボカドを合わせて香港流TKGへ
さらに「たまご園」は、トッピングにも海外で親しまれている食材を取り入れました。
特に組み合わせられてきたのが、
- サーモン
- アボカド
- イクラ
- ウナギ
- 照り焼きチキン
- ステーキ
などです。
香港で人気を集めた際にも、サーモンやアボカドとメレンゲ状のTKGを合わせた料理が紹介されています。
卵、ご飯、醤油だけで完成する日本のTKGとはかなり印象が違います。
しかし、そこに「海外でTKGが広がった理由」があります。
現地で親しまれている食材を加えることで、知らない日本料理ではなく、食べ慣れた食材の延長として試してもらえるようにしたのです。
ピーター・ンさんがTKGを知ったのは日本のホテル
ピーター・ンさんが卵かけご飯と出会った場所は、日本でした。
日本を旅行した際、ホテルの朝食でTKGを何度も食べるうちに好きになり、「あまり知られていない香港の人にも伝えたい」と考えるようになります。
ピーターさん自身も、日本産の卵に醤油とふりかけを加えた日本式のTKGを朝食として食べていました。
ここが「たまご園」の面白いところです。
海外の経営者が日本食レストランの定番である寿司やラーメンではなく、家庭で食べられてきた卵かけご飯に注目しました。
派手な料理ではありませんが、
「新鮮な卵だから生で食べられる」
という日本の卵文化そのものに商品価値を見いだしたのです。
ピーター・ンさん兄弟は2000年にEN Groupを創業
「たまご園」を手がけるEN Groupは、2000年にレイモンド・ンさんと弟のピーター・ンさんによって設立されました。
グループ名の「EN」には、日本語の「縁」「宴」「円」といった意味が込められています。
日本・沖縄の食文化をシンガポールなどへ紹介し、
- Tamago-EN
- Aburi-EN
- EN Dining
- Kiwami
- Tempura-EN
など複数の日本食ブランドを展開してきました。
その中でも「たまご園」は、卵という一つの食材へ特化したブランドです。
オムライス、卵サンド、親子丼、スフレパンケーキなどをそろえながら、中心となる食材を日本産卵に統一しています。
Tamago-ENは2019年にシンガポールで誕生
「たまご園」の1号店は2019年にシンガポールで誕生しました。
同じ2019年に香港へ進出し、2022年12月にはマレーシア・クアラルンプールへ展開しています。
海外でのTKG人気を考えるうえで、この展開速度は興味深いところです。
生卵を食べる文化そのものを一から説明する必要がある一方、日本料理への関心が高い地域では「日本産卵を生で食べる」という体験自体が商品の魅力になります。
JETROも2023年、日本から香港への鶏卵輸出が3年間で3倍以上に増加し、現地に卵かけご飯を扱う店が登場している状況を取り上げています。
使うのは沖縄県から直送される卵
「たまご園」を支えるもう一つの重要な要素が、日本から卵を輸出する仕組みです。
Tamago-ENの公式サイトでは、沖縄県から直送した新鮮な卵を使用しているとしています。
さらに卵には紫外線殺菌処理を行い、生食メニューにも使用できる品質管理を行っています。
2020年には、EN Groupが沖縄の琉球飼料とオリジナル鶏卵を開発し、シンガポールや香港へ輸出している取り組みも紹介されました。
海外でTKGを定着させるには、料理だけを用意すればいいわけではありません。
日本産卵を継続して海外へ届ける物流や衛生管理まで含めて初めて、生卵を使ったメニューを提供できます。
日本産卵の「黄身の色」も海外では商品価値になる
Tamago-ENの公式サイトでは、日本産卵の特徴として黄金色からオレンジ色の鮮やかな黄身を前面に出しています。
これは「Ultimate TKG」の見た目とも非常に相性がいい特徴です。
真っ白なメレンゲの中心へ濃い色の黄身を置くと、一目で卵料理だと分かります。
味だけでなく、
- 白いメレンゲ
- オレンジ色の黄身
- サーモンやイクラ
- 緑色のアボカド
といった色のコントラストが生まれます。
家庭料理だったTKGを飲食店の商品に変えるうえで、「写真を見て食べてみたくなる料理」にしたことも大きな工夫といえます。
海外でTKGが受け入れられた理由
「たまご園」の歩みを見ると、海外でTKGが広がった理由は単純に日本食ブームだけではありません。
ポイントは、日本の食文化を残しながらも、現地の食習慣に合わせて変えたことです。
日本式の基本は、
「日本産卵+ご飯」
として残す。
一方で、
「生の白身が苦手」
という壁にはメレンゲで対応する。
さらにサーモン、アボカド、イクラなどを組み合わせ、初めての人でも入りやすくする。
TKGの本質を残しながら、食べ方は大胆に変えました。
海外へ日本食を広げるときの「そのまま輸出するのではなく、現地に合わせて進化させる」という一例になっています。
現在も公式メニューに「Ultimate TKG」が残っている
一時的な話題商品で終わっていない点も注目できます。
Tamago-ENの現在の公式メニューにも「ULTIMATE TKG」のカテゴリーが設けられています。
基本のTKGだけでなく、サーモンアボカド、イクラ、ウナギ、照り焼きチキン、ステーキなどを組み合わせるメニューへ発展しています。
海外で生卵を食べるというと、日本式の食べ方をそのまま再現するイメージがあります。
しかし「たまご園」が作ったのは、日本のTKGを出発点にした新しい海外版TKGでした。
まとめ
ピーター・ンさんは、日本旅行中にホテルの朝食で卵かけご飯と出会い、そのおいしさを海外へ広げたいと考えました。
そこで「たまご園」では、沖縄県産の新鮮な卵を使いながら、生卵になじみの薄い人でも食べやすいよう白身をふわふわのメレンゲへ変更。
さらにサーモンやアボカド、イクラなどを組み合わせた「Ultimate TKG」へ進化させました。
2019年にシンガポールで始まったTamago-ENは香港へも広がり、日本産卵を「生で味わう」という日本独特の食文化を海外へ届けてきました。
「所さん!事件ですよ」のタイトルにある「TKGが海外で大人気」という現象を知るうえで、ピーター・ンさんと「たまご園」は、日本の家庭料理が海外向けに姿を変えて広がっていく過程がよく分かる存在です。
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