瀬戸内の風に包まれる“人生の楽園” 周防大島の花咲く庭園カフェの物語
山口県の周防大島町。瀬戸内の穏やかな海に囲まれたこの島は「瀬戸内のハワイ」とも呼ばれるほど温暖な気候で知られ、春は花々、夏は海風、秋は黄金色の夕陽が美しい場所です。その小高い丘の上に、色とりどりの花と海を一望できるカフェ「ガーデンカフェ リバージュ」があります。ここは吉田憲治さん(72歳)と美保さん(67歳)夫婦が、自らの手で森を整備し、5年半をかけて作り上げた“人生の楽園”です。
もともと二人が暮らしていたのは山口市。憲治さんは建築士として長年働き、家づくりのプロとして多くの人の暮らしを支えてきました。そんな中で、定年を迎える頃、「これからの人生をどう生きたいか」を夫婦で話し合い、「自然と共に生き、訪れた人が笑顔になれる場所を作りたい」という夢を描くようになりました。
瀬戸内の景色に魅せられた二人は、静かで温暖な周防大島への移住を決意。島の高台にある森を購入し、木々を伐り、地面を整え、石を運びながら少しずつ“庭園”の姿を形にしていきました。その作業は決して楽ではなく、時には炎天下で汗を流し、時には冬の冷たい風の中で黙々と草刈りを続ける日々。それでも、海を望む場所でカフェを開くという夢が二人の原動力になったといいます。
5年半かけて生まれた“花咲く庭園”
開墾を始めた当初、そこは人の手が何年も入っていない荒れ地でした。木の根を掘り起こし、地面をならし、庭のデザインを考えながらひとつずつ整えていきました。憲治さんは建築士の経験を生かしてカフェの建物を設計し、デッキやフェンスまで自分で施工。美保さんは花の種類や配置を考え、四季折々に咲く草花を植えました。春にはチューリップやネモフィラ、夏にはラベンダーやマリーゴールド、秋にはコスモスが咲き乱れ、冬にはクリスマスローズが彩りを添えます。
カフェのテラス席に立つと、瀬戸内海とその向こうに見える四国の山々が一望でき、風が運ぶ潮の香りと鳥の声が心を癒します。訪れる人は皆、その景色に息をのみ、コーヒーを飲みながら静かに微笑むのだそうです。
病との闘いを経て、たどり着いた夢の完成
開業までの道のりは決して順調ではありませんでした。整備を始めて数年後、憲治さんは大腸がんと心臓疾患を患い、手術と長い入院生活を余儀なくされます。作業を中断せざるを得ず、夫婦の夢は一時途絶えかけました。しかし、「この場所で、美保さんともう一度やり直したい」という強い想いが憲治さんを突き動かしました。退院後、体調が安定するとすぐに現場へ戻り、再び草刈りや整地作業を開始。夫婦で支え合いながら、少しずつ森を「楽園」に変えていきました。
そして2020年、ついにカフェ「ガーデンカフェ リバージュ」が完成。二人の夢が形になった瞬間でした。オープン当初は口コミで話題が広がり、今では島外からも訪れる人が絶えません。
「ガーデンカフェ リバージュ」の魅力とこだわり
“リバージュ”とはフランス語で「海辺」。その名の通り、海を見下ろすロケーションがこのカフェの最大の魅力です。全席が屋外に設けられ、テラス席や庭園席で自然と一体になれる時間を提供しています。木陰に揺れる光や、花の香りに包まれたランチタイムは、まさに非日常のひとときです。
営業は土・日・月・祝日のみで、冬季は休業(2025年は3月22日〜11月24日予定)。営業時間は11時から17時まで(月曜は16時30分閉店)。店前には5台分、少し離れた場所に10台分の駐車場があり、支払いは現金のみ。
名物メニュー
・『ベーコンカスクート』
1週間かけてじっくり仕込む自家製ベーコンを使用。フランスパンのようなカリッとしたバゲットに、香ばしいベーコンとシャキシャキの野菜が挟まれた人気のサンドです。瀬戸内の風を感じながら食べると、さらに美味しさが際立ちます。
・『ランチの玉手箱 レアステーキ』
地元ブランド牛の高森牛を使った贅沢な一品。ミディアムレアに焼き上げた柔らかいステーキは、口の中でとろけるような食感。付け合わせの地元野菜も、季節ごとに変わる楽しみがあります。
・『季節のフラワースイーツ』
美保さんが考案した季節限定スイーツ。花びらをあしらったケーキや、ラベンダーの香りを添えたプリンなど、見た目も華やか。訪れるたびに違う楽しみがあります。
ドリンクはハンドドリップで淹れるコーヒーのほか、自家製の柑橘ジュースやハーブティーなども好評。特に島特産の「周防大島みかん」を使ったドリンクは人気で、爽やかな酸味と優しい甘みが絶妙です。
番組で描かれた“夫婦の物語”
「人生の楽園」では、菊池桃子さんと小木逸平アナウンサーが案内人として登場。番組では、夫婦が笑顔で庭を手入れする姿や、訪れるお客さんとの温かいやり取りが丁寧に映し出されました。穏やかな語り口の中に、「人生の喜びは、自分の手で作り出せる」という深いメッセージが感じられる内容でした。
吉田夫妻は「カフェを訪れた人が、花を見て心が軽くなったり、海を眺めて少し元気になったりすればうれしい」と話します。その言葉通り、ここには“癒し”と“再生”の物語が息づいています。
所在地と基本情報
・住所:山口県大島郡周防大島町平野10308-1
・アクセス:大島大橋から車で約30分。ホテルマリッサリゾート手前100mを左折し、約700m直進。
・営業期間:3月~11月(冬季休業あり)
・営業時間:11:00〜17:00(月曜は〜16:30)
・営業日:土・日・月・祝日
・駐車場:店前5台+手前10台
・支払い:現金のみ
まとめ
この記事のポイントは次の3つです。
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周防大島に移住した夫婦が、5年半かけて森を整備し、理想のガーデンカフェを完成させた。
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大病を乗り越えた後も夢を諦めず、自然と共に生きる人生を選んだ。
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瀬戸内の絶景を望みながら味わう、手作りのベーコンサンドや高森牛ランチが人気。
この「ガーデンカフェ リバージュ」は、単なるカフェではなく、人生の再出発を象徴する“希望の場所”。瀬戸内の穏やかな海と花々に包まれながら、夫婦の物語が静かに続いています。

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