平坂寛さんが「毒」を自分の体で確かめ続ける理由
『マツコの知らない世界(人類の未来を救う!? 毒の世界 第2弾!)(2026年8月25日)』に登場するのが、世界各地で珍しい生き物を追い続ける生物ライター・平坂寛さんです。2025年の初登場時には、129種類もの生き物の毒の作用を自ら確かめてきた人物として紹介されました。なぜそこまで体を張るのか。経歴や活動、毒生物を追う理由、さらに「毒が人類を救う」といわれる背景まで掘り下げます。
この記事でわかること
- 平坂寛さんがどんな生物ライターなのか
- 129種類の毒を自ら試してきた理由
- 第1弾で紹介された珍しい毒生物
- 生き物の毒が医薬品につながる仕組み
平坂寛さんは世界中の生き物を体験して伝える生物ライター
平坂寛さんは、珍しい生き物を自分で探し、捕まえ、触れ、ときには食べ、その体験を文章や映像で伝えている生物ライターです。
1985年に長崎県で生まれ、琉球大学理学部海洋自然科学科を卒業。その後、筑波大学大学院生命環境科学研究科の博士前期課程を修了しています。
大学院在学中からウェブで生き物の記事を書き始め、その後は珍獣ハンター、生物ライターとして世界各地を取材するようになりました。デンキウナギ、イグアナ、グンタイアリなど、普通なら距離を取りたくなる生き物にも自ら接近してきた人物です。
単に珍しい生き物を見つけるだけではなく、平坂さんの活動には一貫して「五感で生き物を知る」という考え方があります。
見た目だけでは分からない匂い、手触り、動き、味、そして毒が体に与える感覚まで確かめようとするため、その取材スタイルはかなり独特です。
129種類の生き物の毒を試すのは図鑑だけでは分からないことを知るため
2025年10月28日の初登場時、平坂さんは129種類の生き物の毒の作用を自ら試してきたと紹介されました。
驚くのは数だけではありません。
平坂さんが毒を経験する理由として掲げていたのは、生物図鑑に書かれていない「本当の毒の姿」を知ることでした。
「毒がある」と書かれていても、実際にどんな痛みなのか、どのように体へ作用するのか、生き物はどんな方法で毒を使うのかまで図鑑だけで理解するのは難しいものです。
そこで実物を観察しながら生態と毒を結びつけていくのが平坂さんの取材方法です。
もちろん、毒生物に刺されたり毒を口にしたりする行為は非常に危険です。生物の種類や毒量、体質によっては重篤な症状につながるため、一般の人が同じ方法で確かめるものではありません。
平坂さんの面白さは「危険なことをする人」という部分だけではなく、なぜその生き物に毒が必要なのかまで観察して伝えていることにあります。
第1弾ではオオヒキガエルやモウドクフキヤガエルなどが登場
2025年の第1弾にも、かなり個性的な毒生物がそろっていました。
紹介されたのは次の10種類です。
- オオヒキガエル
- オニダルマオコゼ
- スイミングスコーピオン
- ミイデラゴミムシ
- フグ
- ヤエヤマサソリ
- ズグロモリモズ
- モウドクフキヤガエル
- アオミノウミウシ
- スローロリス
中でも面白い存在がアオミノウミウシです。
アオミノウミウシは自分だけで強力な武器を作るのではなく、餌として食べた刺胞動物が持つ毒針を利用するという変わった生態を持っています。まるで他の生き物の武器を奪って自分の防御に使うような仕組みです。
さらにズグロモリモズのように、魚やカエル、ヘビ、サソリだけではなく「毒を持つ鳥」まで登場しました。
毒生物という言葉から想像する範囲が一気に広がるラインナップだったことが分かります。
第2弾は植物・海・世界の毒生物へさらに範囲が広がる
2026年8月25日の第2弾では、生き物だけでなく植物の毒まで大きなテーマになります。
取り上げられるポイントは、
「約9割の植物には毒がある」
「くしゃみが止まらなくなる海の生き物」
「毒生物の楽園と呼ばれる国」
「毒を受けると、なぜかあるスイーツが欲しくなる生き物」
などです。
特に興味深いのが植物です。
植物は動物のように敵から走って逃げられないため、トゲなどの物理的な防御だけでなく、さまざまな化学物質を作り、昆虫や草食動物から身を守ってきました。
植物が作る物質には、アルカロイドやテルペノイド、フェノール類など非常に多くの種類があります。植物全体では膨大な種類の低分子化合物が存在すると考えられており、こうした化学的な防御も植物の進化を支えてきました。
ここで大切なのは、「毒を持つ植物=触っただけで危険な植物」という意味ではないことです。
物質の種類、摂取量、食べる部位、調理方法などによって人体への影響は大きく変わります。
なぜ毒が「人類の未来を救う」といわれるのか
毒というと「避けるもの」というイメージがありますが、医学から見るとまったく違う顔を持っています。
毒の成分は動物の神経、血管、血液などへ非常に強く、しかも特定の場所に作用することがあります。
この狙った場所へ強く作用する性質を研究することで、新しい薬につながることがあるのです。
代表的な例の1つが、毒トカゲとして知られるアメリカドクトカゲ(Gila monster)です。
その体内に存在するexendin-4というペプチドをもとに開発されたのが、GLP-1受容体作動薬のエキセナチドです。2型糖尿病の治療に利用される薬になりました。
さらにブラジルに生息するヘビ、Bothrops jararacaの毒の研究は、血圧を下げるACE阻害薬カプトプリルの開発につながりました。
イモガイの毒成分を利用した強力な鎮痛薬ジコノチドなどもあり、「毒から薬へ」という流れはすでに医療の世界で実現しています。
毒をなくすのではなく、その作用を詳しく理解して利用する。
「人類の未来を救う毒」という言葉には、こうした科学的な背景があります。
「危険な生き物」ではなく毒を使う理由まで見ると面白い
毒生物を知るときに面白いのは、毒の強さを競うだけではありません。
毒には大きく分けて、獲物を捕らえるための武器と自分を食べようとする敵から身を守る防御という役割があります。
さらに、自分で毒を作る生き物もいれば、餌から得た成分を体内に蓄えるもの、別の生き物の毒針を再利用するものまでいます。
つまり毒を見ることは、その生き物がどうやって生き残ってきたのかを見ることでもあります。
平坂さんが毒そのものだけでなく、生息地や食性、生き物同士の関係まで追い続けている理由もここにつながります。
平坂寛さんの原点は海洋生物を学んだ学生時代
平坂さんは大学で海洋自然科学を学び、大学院では生命環境科学を専攻しました。
その一方で、研究室だけにとどまらず、自分で生き物を探しに行き、文章にして伝える道を選びました。
現在の活動につながる大きな特徴が、対象を限定しないことです。
昆虫、魚、爬虫類、両生類、深海生物など、ジャンルを越えて「自分が知らない生き物」を追いかけています。
これまでの著書にも、
『外来魚のレシピ』
『深海魚のレシピ』
『喰ったらヤバいいきもの』
『見たことのないものをつかまえたい! 世界の変な生き物探訪記』
などがあります。
生物学を学んだ知識と、自ら現場へ飛び込む取材力。その2つが組み合わさっているところが、平坂寛さんならではの強みです。
子どもが読むなら「危険さ」より生き物の仕組みに注目したい
毒生物は自由研究にも面白い題材ですが、「世界一毒が強い生き物」を並べるだけでは少しもったいありません。
例えば、
「なぜ毒を持つようになったのか」
「攻撃用と防御用では何が違うのか」
「自分で毒を作らない生き物はどうやって毒を手に入れるのか」
「毒から薬が作られるのはなぜか」
というところまで考えると、生態や進化、医学まで話がつながります。
平坂さんの活動も、珍しい生き物に触れることそのものより、実際に観察することで生き物の仕組みを知ることが中心です。
毒は怖いものですが、自然界で長い時間をかけて生み出された生存戦略でもあります。その仕組みを知ると、毒生物を見る目もかなり変わってきます。
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