小林望さんの仕事はフィリピンの巨大インフラ建設
『24時間テレビ49(宮川大輔が行く「世界の果てで働くお父さん」)(2026年8月30日)』で娘の渚咲ちゃんが会いに行く父・小林望さんは、フィリピン・ミンダナオ島で働く土木技術者です。仕事の舞台は、ダバオの交通を大きく変えるバイパス建設。清水建設との関係や、フィリピン初の本格的な長距離山岳トンネル、過去に担当した道路建設までたどると、海外で積み重ねてきた仕事のスケールが見えてきます。
この記事でわかること
- 小林望さんの仕事と清水建設との関係
- ダバオ市バイパスが全長約45kmとされる理由
- フィリピン初の本格山岳トンネル工事の難しさ
- 過去に担当したフィリピンの道路・インフラ工事
小林望はフィリピンで働く清水建設の土木技術者
(出典:清水建設「プラリデル幹線道路バイパス 橋梁拡幅新設」 掲載ページ)
小林望さんは、清水建設の土木技術者としてフィリピンのインフラ建設に携わってきた人物です。
日本テレビの企画では、娘の渚咲ちゃんが宮川大輔さんとフィリピン南部のミンダナオ島へ向かい、単身赴任中の父をサプライズ訪問します。事前紹介では小林さんについて、フィリピンでインフラ整備に携わる土木技術者と紹介されました。
そして会社までつながる重要な情報が、清水建設側から出ています。同社は今回の「世界の果てで働くお父さん」について、**「当社従業員とその家族が出演」**すると公式アカウントで告知しています。
さらに清水建設の施工実績には、フィリピンのプラリデル幹線道路バイパスの施工担当者として「小林 望」の名前と写真が掲載されています。
つまり、小林さんにとってフィリピンは今回初めて赴任した場所ではなく、長年にわたって道路や橋梁などの大型土木工事に関わってきた重要な仕事の舞台なのです。
清水建設社員とつながる複数の経歴
小林望さんと清水建設との関係は、今回の出演告知だけではありません。
清水建設の施工実績では、2018年7月から2021年3月にかけて行われたプラリデル幹線道路バイパスの橋梁拡幅新設工事で施工担当者として紹介されています。
担当した橋梁No.8は全長1,121m。現場で仮設資機材を加工・製作しながら工事を進め、工事終盤には日本からリモートで現地を管理して完成まで携わりました。
さらに2021年度の海外インフラプロジェクト技術者表彰では、「小林 望・清水建設株式会社」として、フィリピンのパッシグ・マリキナ川河川改修事業で国土交通大臣奨励賞を受けています。
この工事ではマニラ首都圏の洪水被害を減らすため、パッシグ川沿い約9.2kmにわたって護岸の改修が行われました。道路、橋梁だけではなく、都市の防災インフラにも携わった経歴があることになります。
さらに土木学会の過去の講演記録にも、清水建設所属の「小林 望」の名前があります。海外現場だけを経験してきたというより、地盤や構造物の耐震分野にも関わってきた土木技術者であることが分かります。
全長約45kmに及ぶダバオ市バイパス建設
(出典:清水建設「フィリピンで大規模インフラ工事を連続受注」 掲載ページ)
小林さんが働くダバオの道路プロジェクトは、単なる市街地の道路拡幅とは規模が違います。
ダバオ市バイパスは、ミンダナオ島南部の交通を大きく組み替える巨大道路計画です。
清水建設は、ダバオ市南部のシワランから北側のパナボ市までを結ぶバイパスについて全長約45kmと説明しています。JICAも、フィリピン側が整備する区間まで合わせた道路全体を約45.5kmとしています。
一方でJICAが円借款で支援する主要区間は約29.6~29.7kmです。
そのため、
道路全体:約45km
JICA支援区間:約30km
清水建設などのJVが受注した工区:10.7km
という3段階で見ると規模が分かりやすくなります。
清水建設などが担当する10.7kmだけを見ても、山を貫くトンネル、橋梁、切土・盛土で造る道路が組み合わされた大規模工事です。
フィリピン初の本格山岳トンネルという難工事
(出典:JICA「ダバオ市バイパス建設事業」 掲載ページ)
このプロジェクトを特別なものにしているのが、長さ約2.3kmの山岳トンネルです。
上下線それぞれにトンネルを造り、高さ約8m、幅約10m、掘削断面は約80平方メートル。フィリピンで初めてとなる本格的な長距離山岳道路トンネルです。
難しいのは長さだけではありません。
掘削場所には比較的柔らかな泥岩があり、発破で一気に掘るのではなく、切削機を使って慎重に掘り進めました。
基本的には約1m進むごとに、
掘削面へのコンクリート吹き付け、鋼製の支保工、金網、再度のコンクリート吹き付け、さらに長さ4mのロックボルト18本を地山へ打ち込む作業を重ねます。
さらに北側には、トンネルの上を沢が横切り、地表まで約11mしかない区間があります。
反対に中央部では土被りが100mを超える場所があり、大きな土圧を受けます。上下線のトンネル同士も約20mしか離れておらず、片方を掘る工事がもう片方へ影響することも考えなければなりません。
道路を造るというより、地山の状態を読みながら安全な空間を少しずつ山の中に作っていく仕事です。
清水建設・竹中土木・Ulticon社が担うJV工区
ダバオ市バイパスを日本企業1社だけで造っているわけではありません。
中心となる10.7kmの工区は、清水建設・竹中土木・フィリピンのUlticon Buildersによる共同企業体、JVが受注しています。
役割も分かれています。
- 清水建設・竹中土木:山岳トンネル
- Ulticon社:土工事・橋梁
- 工区全体:10.7km
- 山岳トンネル:2.3km×上下線2本
- 橋梁:3か所
- 切盛道路:約7.9km
契約金額は約282億円とされました。
日本の大手建設会社とフィリピン企業がそれぞれの得意分野を担当するだけでなく、大きな目的の1つになっているのが技術移転です。
山岳トンネルの経験が少なかったフィリピン人技術者や作業員に施工技術を伝え、将来的にフィリピン人技術者だけでもトンネル工事を進められる人材を育てる取り組みが行われました。
完成する道路だけでなく、工事を通して現地に技術が残る点も、このプロジェクトの大きな特徴です。
渋滞と物流を変える巨大プロジェクトの目的
ダバオ市バイパスが必要になった背景には、ミンダナオ島最大級の都市であるダバオの急速な成長があります。
人口や車両が増えれば、市街地を南北に抜ける車も増えます。特に物流車両まで中心部を通過すると、生活道路と長距離交通が同じ道路へ集中してしまいます。
バイパスは、市中心部を通る必要がない車を外側へ逃がす役割を持ちます。
道路全体が開通すると、ダバオ市とパナボ市を結ぶ移動時間は約1時間44分から約49分まで短縮される見込みです。
これは通勤が少し楽になるというだけの話ではありません。
農産物や工業製品を運ぶトラックの移動時間が安定すれば、物流コストを抑えやすくなり、港や周辺都市へのアクセスも改善します。
ダバオ市はミンダナオ島経済の中心地の1つです。その交通のボトルネックを取り除くことは、島全体の経済活動にもつながります。
過去にもフィリピン道路建設に携わった経歴
小林望さんの経歴で特に興味深いのが、ダバオ以前にもフィリピンの道路インフラに携わっていることです。
代表例がプラリデル幹線道路バイパスです。
マニラ首都圏北側に位置するこの工事で、小林さんは橋梁一式を担当しました。
橋梁No.8は全長1,121m、No.9は全長41m。さらに取付道路も含む工事でした。
工事終盤は新型コロナウイルスの影響を受け、小林さんは日本からリモートで現場管理を行い、フィリピンの現地チームと連携して完成させています。
海外土木では、日本国内と同じ機械や資材、人材をいつでも確保できるとは限りません。
現地にあるものを使いながら施工方法を組み立て、異なる言語や文化の中でチームを動かす力も必要になります。
プラリデルで道路と橋を造り、マニラでは河川改修にも携わり、さらにミンダナオ島の巨大バイパスへ。
小林さんの仕事をたどると、「海外で働いているお父さん」だけでは見えてこない、フィリピンのインフラを長く支えてきた土木技術者としての姿が浮かびます。
山岳トンネルは貫通しダバオ市バイパスは次の段階へ
ダバオの山岳トンネル工事は、大きな節目を迎えています。
2025年4月には、フィリピン初の本格的な長距離山岳トンネルとなる約2.3km区間が貫通しました。
一方、道路事業全体はトンネルを掘り終えれば完成ではありません。
舗装、設備、橋梁、接続道路に加え、トンネル内の事故や火災への対応、維持管理体制なども整える必要があります。
JICAの第三期事業では完成予定が2027年12月とされ、トンネル運営・維持管理の技術支援も事業に含まれています。
小林望さんが関わる仕事は、道路そのものを造るだけではありません。
日本で培われてきた山岳トンネル技術をフィリピンへ伝え、完成後も安全に使い続けられる交通インフラへつなげていく仕事でもあります。
娘の渚咲ちゃんがフィリピンまで会いに行った「世界の果てで働くお父さん」。その仕事の背景を知ると、目の前にある道路やトンネルの向こう側に、多くの技術者と家族の時間が積み重なっていることが分かります。


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