金子浩子さんが始めた「こども自炊塾」という新しい居場所
『toi-toi(拒食症「どうして誰かの価値観にとらわれる?」)(2026年9月3日)』の金子浩子さんには、これまでの記事とは別に追っておきたい新しい活動があります。群馬県太田市で2025年に始めた「こども自炊塾」です。食事を提供するだけではなく、子ども自身が料理を経験し、「いつか自分でごはんを作れる大人」を目指す場所。その仕組みや料金、開催場所、金子さんの食育とのつながりを紹介します。
この記事でわかること
- 「こども自炊塾」がどんな場所なのか
- 開催場所・料金・対象者などの利用情報
- 子どもに料理をさせる理由
- 金子浩子さんの食育活動が新しい居場所へ発展した経緯
こども自炊塾は「食べるだけではない」子ども食堂
こども自炊塾は、金子浩子さんが代表を務めるキッチンの科学プロジェクトが運営する、群馬県太田市の子ども食堂です。
特徴は、その名前に「自炊」と入っていることです。
用意された料理を食べるだけではなく、子ども自身が調理する時間を設けた体験型の居場所になっています。
2025年5月に活動を開始し、こども食堂ネットワークぐんまにも参加しています。県内の登録情報では、料理を通して自己肯定感を高め、家庭での食の自立や自炊力を伸ばすことが目的として掲げられています。
テーマとして掲げられている言葉が印象的です。
「いつかごはんが作れる大人に」
子どものうちから本格的な料理人を目指すという意味ではありません。
大人になったとき、自分のおなかがすいたら自分で何か作れる。誰かに食事を用意してもらわなくても、自分の暮らしを自分で支えられる。
そんな生活の力を料理から身につけてもらおうとする活動です。
開催場所は太田市の木崎行政センター
こども自炊塾の登録情報は次のようになっています。
- 開催場所: 木崎行政センター
- 住所: 群馬県太田市新田木崎町1215-1
- 開催: 月1回、第4日曜日
- 時間: 11時~13時30分
- 定員: 60人
- 子ども料金: 100円
- 大人料金: 500円
対象には小学生・中学生・高校生のほか、高齢者や障がいのある人も挙げられています。
「子どもの料理教室」という名前から、料理を習いたい小学生だけの場所を想像するかもしれません。
実際には、食事と料理を中心に人が集まれる地域の居場所としての役割も持っています。
参加を考えている場合は、開催回ごとの内容や募集方法が変わることもあるため、キッチンの科学プロジェクトから案内される情報を確認しておくと安心です。
一汁一菜を基本に「自分で作れる料理」を経験する
こども自炊塾では、豪華な料理を完成させることよりも、将来の生活で使える料理の経験が重視されています。
活動紹介では、米ごはんと野菜を取り入れながら、一汁一菜を基本とした食事を中心にしています。
一汁一菜とは、ごはんに汁物とおかず1品を組み合わせるシンプルな食事です。
料理経験が少ない子どもにとって、最初から何品も作る献立はハードルが高くなります。
それより、
「ごはんを炊ける」
「みそ汁を作れる」
「野菜を使ったおかずを1品作れる」
という経験を積み重ねた方が、将来自分で食事を用意するときに使いやすくなります。
金子さんは以前から、料理教室でも大さじ1など分かりやすい分量を意識し、料理のハードルをできるだけ下げたいという考えを語ってきました。
難しい料理を一度だけ完成させるよりも、「これなら家でもできそう」と感じてもらうことを重視してきたのです。
子どもに料理をさせる目的は「自炊力」だけではない
こども自炊塾の活動目的には、もう1つ重要な言葉があります。
それが自己肯定感です。
料理では、小さな成功を何度も経験できます。
野菜を切れた。
卵を割れた。
みそ汁ができた。
家族や友達が「おいしい」と食べてくれた。
テストのように点数をつけなくても、「自分でできた」という結果が目の前に残ります。
こども自炊塾では、こうした調理体験によって自己肯定感を高めることも目的とされています。
これは、金子さんが長年取り組んできた食育ともつながっています。
キッチンの科学プロジェクトでは、料理を一方的に教えるのではなく、科学実験や体験を通して子ども自身が「なぜ?」「やってみたい」と感じることを大切にしてきました。
光るグミ、パンの発酵、だし、玉ねぎ染めなどテーマは違っても、中心にあるのは子ども自身が手を動かすことです。
こども自炊塾は、その考え方をさらに日常生活へ近づけた活動といえます。
3児の母になったことが「子どもだけで料理できる場所」につながった
金子さん自身、現在は3人の子どもを育てています。
食育活動を始めたころと、実際に3児の母になってからでは、家庭で料理を教えることへの見方も変わりました。
毎日家事や育児をしながら、親が子どもの横について料理を教えることは簡単ではない。
だからこそ、親が少し離れ、子どもが自分で料理に触れられる場所には意味があると語っています。
この考え方は、子育てをしている家庭なら分かりやすいかもしれません。
子どもに料理をさせたいと思っても、
包丁が心配。
片付けが増える。
時間がかかる。
夕食を急いで作らなければならない。
こうした現実があります。
「親子で毎日一緒に料理しましょう」と理想だけを求めるのではなく、地域に子どもが料理できる場所を作る。
3児の母になった経験が、金子さんの食育をより現実的な方向へ変えていった部分です。
2024年に語っていた「子どもの居場所」が2025年に形になった
こども自炊塾が興味深いのは、突然始まった活動ではないことです。
2024年、金子さんは今後の目標として、より地域に根ざした活動を行い、子どもの居場所となる拠点で料理教室を開きたいと語っていました。
その翌年の2025年5月、こども自炊塾が始まっています。
長く続けてきた出張型の食育ワークショップから、地域で定期的に子どもが集まれる場所へ。
金子さんの活動が1段階進んだことが分かります。
ここは、これまでのキッチンの科学プロジェクトの記事と分けて知っておきたいポイントです。
科学実験を入り口に食へ興味を持たせる活動から、
「自分で食事を作って生活できる子どもを育てる」
という実生活により近い活動へ広がっています。
摂食障害を経験した金子浩子さんが「自分で食べる力」を伝える意味
金子さんは大学時代、ダイエットをきっかけとして摂食障害を経験しました。
食べる量や体重、カロリーなどに強くとらわれ、「食べること」そのものに苦しんだ時期があります。
その人が現在、子どもたちに伝えているのは、厳しい食事管理ではありません。
食べ物を触る。
作ってみる。
失敗する。
誰かと食べる。
そしていつか自分のごはんを自分で作る。
金子さんが長年掲げてきた「食べることは、生きること」という考えが、こども自炊塾では非常に具体的な形になっています。
摂食障害という経験だけを見ると、「食べられなかった過去」に目が向きがちです。
しかし、その先で金子さんが取り組んでいるのは、子どもたちがこれから何十年も生きていくための「食べる力」「作る力」を育てることです。
こども自炊塾は、金子浩子さんのこれまでの活動の中でも、過去の経験と現在の仕事、3児の母としての実感が1つにつながった取り組みといえます。

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