一場鉄平が東京・虎ノ門でクラフトジンを造るまで
2026年9月28日放送のテレビ東京『東京交差点 ONE MOMENT』に登場するのが、虎ノ門蒸留所の蒸留家・一場鉄平さんです。虎ノ門で年間20種類のクラフトジンを造り、八丈島や新島の島焼酎、奥多摩の水、金木犀や青梅など、その土地と季節を感じさせる素材を酒へと変えています。
一場さんは、もともと酒造り一筋の職人だったわけではありません。アメリカ・ポートランドでクラフト文化に触れ、帰国後は会社員として虎ノ門横丁の企画に携わり、そこから岐阜県の蒸留所で研修を受けて自ら蒸留家になるという経歴を歩んできました。現在の「東京で東京らしい酒を造る」という仕事は、その経験がつながって生まれたものです。
この記事でわかること
- 一場鉄平さんが蒸留家になるまでの経歴
- アメリカ・ポートランドで受けた影響
- 虎ノ門横丁の企画担当から酒造りへ進んだ転機
- 八丈島の島焼酎や奥多摩の水を使う虎ノ門蒸留所の特徴
一場鉄平は虎ノ門蒸留所の蒸留家

一場鉄平さんは、東京・虎ノ門にある酒食堂 虎ノ門蒸留所でジン造りを手掛ける蒸留家です。
虎ノ門蒸留所は2020年6月に開業。虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー3階の「虎ノ門横丁」にあり、蒸留所と酒場が一体になっています。店の中でジンを造り、その酒を料理と一緒に楽しめる都市型の蒸留所です。
一場さんが手掛けるのは、単に「東京で製造したジン」ではありません。
虎ノ門蒸留所では「TOKYO LOCAL SPIRITS」を軸に、
- 八丈島・新島などで造られる島焼酎
- 奥多摩源流、青梅・沢井の湧き水
- 金木犀
- 青梅
- 季節の花やハーブ、果実
など、土地と季節につながる素材を酒造りへ取り込んでいます。
一場さんの仕事を特徴づけているのは、この「東京の中にある地域性」を蒸留によって表現する発想です。
原点はアメリカ・ポートランドのクラフト文化
一場さんの経歴で大きな出発点となったのが、アメリカ・オレゴン州ポートランドで暮らした経験です。
ポートランド在住時、一場さんはクラフトな酒造りや、小規模でも作り手の考えを強く反映できる「小商い」の文化から影響を受けました。
本人も後年、ポートランドで飲んだクラフトビールのおいしさに衝撃を受けたことを書いています。大量生産された画一的な商品とは違い、小さな作り手が自分たちの土地や感覚を酒へ反映する世界を知ったことが、その後の仕事につながっていきました。
現在の虎ノ門蒸留所にも、この考え方が色濃く残っています。
大規模な工場で同じ商品を大量に造るのではなく、季節ごとに現れる植物や生産者との出会いを取り込みながら、小さな蒸留所だからこそできる酒を造る。それが一場さんの現在の仕事です。
帰国後はウェルカムで虎ノ門横丁を企画
ポートランドから帰国した一場さんは、株式会社ウェルカムの事業開発部で働きます。
ウェルカムはDEAN & DELUCAやCIBONEなどを展開する企業。一場さんはそこで、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーに誕生する虎ノ門横丁の企画とプロジェクトマネージャーを担当しました。
つまり、一場さんは最初から「虎ノ門蒸留所の蒸留家」として採用された人物ではありません。
街や飲食空間をつくる企画側の仕事をしていた人物が、自分自身も酒を造る側へ入っていったことになります。
ここが一場さんの経歴で大きな転機です。
虎ノ門横丁という場所を企画する中で生まれた蒸留所の構想に、自ら作り手として深く関わっていきました。
岐阜・辰巳蒸留所で研修し、本格的にジン造りへ
実際に酒造りへ進むため、一場さんが向かったのが岐阜県郡上市・郡上八幡です。
研修先は、辰巳祥平さんが手掛ける辰巳蒸留所(アルケミエ)でした。
ここで数か月間、ジン造りを学びます。
そして、この研修が虎ノ門蒸留所を代表する「東京の島焼酎を使ったジン」へ直接つながりました。
一場さんは辰巳さんから「東京にもおいしい焼酎がある」と教えられ、伊豆諸島の島酒へ目を向けます。
そこから八丈島・八丈興発の麦焼酎「情け嶋」などをジンのベーススピリッツとして使用する発想が生まれました。
2020年、企画担当者から虎ノ門蒸留所の蒸留家へ
2020年、虎ノ門横丁の開業とともに虎ノ門蒸留所が誕生します。
一場さんは、自ら企画開発に携わった場所で、蒸留家兼事業運営担当者として活動を始めました。
会社員から突然まったく別の仕事へ移ったというより、
ポートランドでクラフト文化に出会う
↓
飲食や街づくりの仕事に携わる
↓
虎ノ門横丁を企画する
↓
蒸留所の構想に関わる
↓
辰巳蒸留所で酒造りを学ぶ
↓
自ら蒸留家になる
という流れで、現在の仕事へ進んでいます。
企画する側と作る側、その両方を経験していることも一場さんの特徴です。
八丈島の「情け嶋」が定番ジンCOMMONの核
虎ノ門蒸留所を代表するレギュラージンが「COMMON」です。
COMMONでは、八丈島の八丈興発が造る本格麦焼酎「情け嶋」をベースに使用しています。そこへジンに不可欠なジュニパーベリーなどを合わせ、東京の奥多摩源流・青梅沢井の湧き水で仕上げます。
一方、季節のジンでは、その時季に香りが最も良くなった植物や果実を使います。
秋には金木犀、初夏には新緑やクチナシなど、素材によっては自分たちで採取へ出向き、香りが失われないうちに蒸留します。
「東京」と聞くと、ビルや繁華街を思い浮かべがちです。
しかし東京には、伊豆諸島の酒造りがあり、奥多摩の水があり、青梅の果実があり、街の中にも季節ごとの植物があります。
一場さんは、それらを1本のジンの中へ集めています。
伊豆大島では焼酎造りそのものにも参加
一場さんは、完成した島焼酎を仕入れて使うだけではありません。
伊豆大島唯一の焼酎蔵・谷口酒造を訪れ、「御神火」の焼酎造りにも参加しています。
麦を蒸すところから麹造り、発酵、蒸留へと続く工程を実際に経験し、ジンの原料になる焼酎がどのように生まれているのかを学びました。
ここにも、一場さんの酒造りの姿勢が表れています。
素材の名前だけを借りるのではなく、その土地へ行き、作る人や背景まで知ったうえで酒へ取り込む。
東京の島酒を使うことが単なる珍しさではなく、その土地の文化と虎ノ門をつなぐ役割を持っています。
現在は年間20種類のクラフトジンを製造
現在、一場さんは虎ノ門で年間20種類のクラフトジンを製造しています。
レギュラー商品のCOMMONだけでなく、毎年違う素材と向き合う「季節のジン」や限定商品も手掛けています。
2026年には「COMMON akeru」が東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2026で最高金賞を受賞。大和橘をはじめとする5種類の柑橘、コーヒー豆かす、バイマックル、クロモジなど17種類のボタニカルを使ったジンです。
一場さんは、蒸留によって香りを取り出す作業について、目には見えない蒸気の中にどんな香りが存在しているかを考えながら取り組んでいます。
小さな蒸留所だからこそ、素材や組み合わせを変えながら自由に試すことができる。その試行錯誤そのものが、一場さんが蒸留に感じている面白さでもあります。
虎ノ門蒸留所の場所と通販
一場鉄平さんが酒造りを行う「酒食堂 虎ノ門蒸留所」は、虎ノ門横丁の中にあります。
- 店名:酒食堂 虎ノ門蒸留所
- 所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー3F 虎ノ門横丁
- 開業:2020年6月
- 特徴:蒸留所併設の酒場
- 通販:虎ノ門蒸留所公式オンラインストアで取り扱いあり
店を訪れなくても、COMMONや季節のジンなど一部商品は公式オンラインストアから購入できます。
まとめ
一場鉄平さんは、東京・虎ノ門でクラフトジンを造る蒸留家です。
現在の仕事へつながる最初の大きな経験は、アメリカ・ポートランドで出会ったクラフトな酒造りや小商いの文化でした。
帰国後は株式会社ウェルカムで虎ノ門横丁の企画を担当。そのプロジェクトの中で酒造りへ踏み込み、岐阜・辰巳蒸留所で研修を受け、2020年から虎ノ門蒸留所の蒸留家として活動を始めています。
八丈島の島焼酎、奥多摩の水、青梅、金木犀などを使うのは、単に珍しいクラフトジンを造るためではありません。
東京という大都市の中にも島、山、水、植物、そして酒造りの文化がある。その土地にあるものを蒸留し、1本の酒としてつないでいることが、一場鉄平さんと虎ノ門蒸留所の大きな特徴です。
参考リンク
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