全国の醤油を徹底紹介!地域で違う味と使い方とは?
2025年6月2日放送の『よじごじDays』(テレビ東京)では、「知れば食文化が見える!全国お醤油マップ」と題して、日本各地の醤油の違いと、その土地ならではの食べ方を特集しました。番組のMCは薬丸裕英さん、進行は倉野麻里アナウンサー、ゲストに虻川美穂子さんを迎え、各地の醤油の特徴や製造工程、意外な食べ方までをわかりやすく紹介しました。日本の味の原点とも言える醤油を深く知ることで、地域ごとの食文化の豊かさが見えてきます。
全国で愛される醤油の違いとは?
番組では、「職人醤油」の亦野美穂さんが案内人となり、地域によってまったく異なる醤油の個性を紹介していきました。その中で取り上げられた各地の特徴を、より具体的に深掘りしていきます。
千葉県では、明治13年創業の老舗「タイヘイ」で伝統的な濃口醤油の製造工程が紹介されました。まず、大豆と小麦を蒸して麹菌を加え、室で発酵させて「しょうゆ麹」を作ります。そこに塩水を加えて仕込んだもろみを木桶でじっくり1年間発酵・熟成させる工程が続きます。熟成されたもろみは布に包んで重ねることで自然の重みで搾り出すという、手間と時間をかけた手法が使われていました。関東で濃口が主流になった理由として、労働者の多い都市部では塩気の効いた味が好まれたこと、さらに魚の臭みを消す働きがあることも大きな理由とされていました。
奈良県では、「奈良まほろば館」で淡口(うすくち)醤油を紹介。色が淡く、素材や出汁の風味を損なわずに活かせることが特徴です。奈良のニシキ醤油によれば、色を抑えながらも十分な旨味を出すには熟成期間を短く保ちつつ、絶妙な加減が求められるとのこと。番組では、三輪そうめんに淡口醤油をかけた料理が登場し、さっぱりとした風味が紹介されました。
岐阜県のアンテナショップ「岐阜トーキョー」では、濃厚な溜まり醤油に注目。大豆を主原料とし、仕込み水が少ないため、非常に濃くてコクのある味わいが特徴です。長期間発酵・熟成させることで、うなぎのタレや赤身の刺身に合うとされています。また、山川醸造からは泡状に変化させた「もこもこ泡醤油」が登場。これは見た目も楽しく、料理の上にのせても垂れずに使える工夫がされています。
愛知県では、色を付けたくない料理に使われる白醤油が紹介されました。一般的な醤油に比べて大豆の使用量が少なく、小麦の割合が高いため、色がとても薄いのが特徴です。そのため、茶碗蒸しや吸い物、炊き込みご飯など、素材の色合いを活かしたい和食によく使われています。見た目を重視する料理に欠かせない存在です。
鹿児島県では、九州全体で好まれる甘口醤油が登場。とくに鹿児島では、醤油に調味料や砂糖を加えることで、まろやかで甘い味に仕上げています。「かごしま遊楽館」で紹介されたおかかごはんは、この甘口醤油をかけることで、白ご飯が一層おいしくなると紹介されていました。鹿児島の坪水醸造によれば、煮物や炒め物にも万能で使える家庭の味として広く親しまれているそうです。
北海道の「北海道どさんこプラザ 有楽町店」では、昆布醤油が紹介されました。昆布の切れ端を醤油に入れたことがきっかけで生まれた商品で、昆布の旨味が醤油とよく合い、まろやかで優しい味わいが人気となりました。渋谷醸造の昆布醤油は薄塩仕立てで、味が濃くなりすぎずにいろいろな料理に使えるのが特徴。番組では山わさびをのせたご飯に昆布醤油をかけた試食も登場し、ピリッとした辛さと昆布のまろやかさが絶妙にマッチしていると紹介されました。
広島県では、「ひろしまブランドショップTAU」で再仕込み醤油が取り上げられました。これは山口県が発祥とされており、一度できた濃口醤油を仕込み水の代わりに使ってもう一度発酵させるという二重仕込みが特徴です。この方法により、醤油の旨味がさらに濃く、香りも豊かになり、全体の醤油の中でも1〜2%しか作られていない希少なタイプとされています。
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再仕込み醤油は生産に手間と時間がかかるため希少価値が高い
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味がしっかりしていて脂の多い料理や焼肉、照り焼きなどと相性抜群
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一般的な醤油と比べてとろみがあり、見た目も濃い
肉料理に使うとコクが増して旨味が広がるのが特徴で、少量でも満足感のある味わいを実現します。上質な一品を作りたいときに選ばれることが多く、家庭料理でもプロの味に近づける調味料として注目されています。
このように、日本全国にはその土地の歴史や文化と深く関わる多様な醤油が存在しており、それぞれの使い方や味わいの違いを知ることで、食卓の楽しみ方がより豊かになることが伝わってきました。
醤油で広がる地域ごとの味の世界
スタジオでは、白醤油を白身魚の刺身に、溜まり醤油を赤身魚の刺身に合わせて試食する場面があり、それぞれの醤油が持つ特徴と料理との相性の良さを視覚と味覚の両面から紹介していました。白醤油の淡くすっきりとした味わいは繊細な白身の風味を壊さず引き立てる一方で、溜まり醤油の濃厚な旨味と色合いは、赤身のコクをより一層深く感じさせるものでした。
このように、一見同じように見える醤油でも、色・味・香り・とろみなどが地域によって大きく異なることがわかります。そしてその違いは単なる製法の違いだけではなく、その土地の食文化、歴史、気候、食材、暮らし方と深く結びついているということも、番組を通して丁寧に伝えられていました。
また、番組内で取り上げられた各地のアンテナショップ(奈良まほろば館、岐阜トーキョー、かごしま遊楽館など)では、実際にその土地で親しまれている醤油を手に取ることができ、現地に行かずとも自宅で本場の味を楽しめる環境が整っていることも紹介されていました。東京にいながら、北海道の昆布醤油で山わさびごはんを、鹿児島の甘口醤油で煮物を、愛知の白醤油で吸い物を楽しめるのは、食の多様性と流通の進化の象徴でもあります。
普段の料理では「とりあえず濃口醤油」という使い方が多いかもしれませんが、こうした紹介を通じて、食材や料理に合わせて“醤油を選ぶ”という新しい視点が得られます。調味料としてだけでなく、料理の完成度を左右する重要な存在であることを改めて実感させられる内容でした。
そして何より、こうした多様な醤油文化は、地域ごとの工夫と伝統によって守り続けられてきたものです。日本人の味覚を支えてきた背景には、無数の蔵元や職人たちの努力があり、時代を超えて受け継がれてきた知恵や技術があります。
今後は、単なる調味料としてではなく、地域の物語を感じながら醤油を味わう楽しみ方も広がっていくでしょう。食卓がもっと楽しく、もっと豊かになる。そんな可能性を感じさせる特集でした。
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