山本貴士とエムビーエスが挑む「壊して造る」から「活かして使う」への転換
2026年10月2日放送の『ガイアの夜明け』「続・インフラ危機に挑む!」では、山口県宇部市の株式会社エムビーエスを率いる山本貴士さんを軸に、老朽化する道路・橋・トンネルを支える技術開発と異業種連携が描かれます。
山本さんは20歳で宇部へ戻って事業を始め、外壁リフォームで培った技術をインフラ補修へ発展させてきた人物です。現在、エムビーエスが独自開発した「スケルトン工法」は全国約1800か所の老朽化したインフラ補修に使われています。
この記事でわかること
- 山本貴士さんが20歳で事業を始めるまでの転機
- エムビーエスが全国約1800か所を補修するまでの歩み
- 透明な「スケルトン工法」が従来の補修と違う点
- 村田製作所やロボット企業と進める新たなインフラ技術
山本貴士はエムビーエス創業者、全国約1800か所のインフラ補修へ
山本貴士さんは、山口県宇部市に本社を置く株式会社エムビーエスの代表取締役社長です。
エムビーエスが手がけているのは、建物の外壁リフォームだけではありません。道路、橋、トンネルなど既存のコンクリート構造物を補修し、できるだけ長く使い続けるための技術を開発しています。
その中心となるのが「スケルトン工法」です。特殊なシートとコーティング材を使ってコンクリートを保護・補強する方法で、全国約1800か所の老朽化したインフラで補修実績を積み重ねています。
高度経済成長期前後に造られた道路や橋、トンネルが一斉に老朽化していく一方、点検や補修に携わる人材は減っています。山本さんが現在向き合っているのは、単なる建物リフォームではなく、日本各地のインフラをどう維持していくかという課題です。
20歳で宇部に戻り、足場業から会社を育てた
山本さんの原点には、家族の大きな環境変化がありました。
父親の会社が倒産し、多額の借金を抱えた家族は山口県から群馬県へ移りました。山本さん自身も若い時期に非行に走った経験を持ちますが、20歳で単身、故郷の宇部へ戻り事業を始めています。
エムビーエスの会社沿革では、その歩みが1993年1月の足場業「プロジェクトビギ」創業から始まっています。
その後は、
- 1993年1月:足場業として創業
- 1997年6月:宇部市で有限会社アクアビギを設立
- 1998年2月:有限会社エム・ビー・エスへ商号変更、外壁リフォーム事業を開始
- 2001年7月:株式会社へ組織変更
- 2004年7月:研究所を開設
と、施工会社から独自技術を持つ企業へ変化していきました。
足場を組む仕事から始まり、自ら補修を手がけ、やがて「どうすれば建物やコンクリート構造物を壊さず長く使えるか」という研究開発へ進んだことが、現在のインフラ事業につながっています。
スケルトン工法は「透明だから点検し続けられる」補修技術
スケルトン防災コーティングの大きな特徴は、施工後もコンクリート表面が透けて見えることです。
ガラス連続繊維シートに透明性のある材料を含浸させ、コンクリート表面を覆います。施工後もモルタルの砂粒が確認できるほどの透明性があり、ひび割れなどを目視で確認できます。
通常、補修材で表面を覆ってしまうと、その下で新たなひび割れが生じても外から状態を把握しにくくなります。
スケルトン工法は「補修したら終わり」ではなく、補修後も表面を見ながら点検を続けられることに意味があります。エムビーエスはこの考え方を「壊して造る」から「活かして使う」への転換として位置づけています。
建物の外壁リフォームから生まれた技術が、道路や橋、トンネルなど社会インフラの維持管理へ広がったことが、エムビーエスの大きな転機です。
村田製作所とのRFID開発で「補修」から異常検知へ
エムビーエスは2026年6月、村田製作所のRFID技術と自社のスケルトンはく落防災コーティング技術を組み合わせた「状態・異常検知システム及び状態・異常検知方法」を共同開発したと発表しました。
仕組みの核となるのは、ガラス管の中に封入したパッシブ型RFIDタグです。
構造物に一定以上のひび割れや変位が起きるとガラス管が破損し、RFIDタグの通信状態が変化。その変化をリーダーで読み取ることで異常を検知します。電池や配線を必要としない点も特徴です。
さらに、タグごとの識別番号と設置位置を対応させておけば、どこで異常が起きたのかを把握できます。透明なスケルトンコーティングと組み合わせるため、デジタルによる検知と目視確認を併用できる設計です。
エムビーエスは2027年5月期中をめどに、実際のインフラ構造物や建築物で実証を始め、商業化・サービス展開を目指しています。
四足歩行ロボットで危険区域や狭い場所の点検にも挑む
もう1つ進んでいるのが、建設現場へのロボット導入です。
エムビーエスは資本業務提携先のドーナッツロボティクスと、四足歩行ロボットを自社管理の施工現場で実証する取り組みを進めています。
想定されている用途は、
- 工事現場を巡回して映像やセンサーデータを記録
- 足場下や配管周辺など人が入りにくい場所を点検
- 異常や緊急時に遠隔から現場を確認
- ロボット導入による省人化効果を検証
などです。
建設・土木の現場では、人手不足に加え、高所や狭い場所、交通規制が必要な場所での点検負担も大きな課題です。
エムビーエスの取り組みは、補修材そのものを開発する段階から、センサー、AI、ロボットまで組み合わせてインフラを維持する方向へ広がっています。
「列島リフォーム」で全国の既存インフラを長く使う
山本さんが率いるエムビーエスは、「列島リフォーム」をスローガンに掲げています。
対象は戸建て住宅やマンション、商業ビルだけでなく、道路、トンネル、橋梁などのコンクリート構造物です。新しいものへ造り替え続けるのではなく、すでに存在する建物やインフラを補修・点検しながら使い続けることを事業の柱にしています。
会社は2027年5月までに全国50拠点を展開する目標を掲げ、「ホームメイキャップ工法」と「スケルトン工法」を全国へ広げる計画です。
20歳で宇部へ戻って始めた小さな足場業が、30年以上を経て、日本各地の老朽化インフラに向き合う企業へと変化してきました。山本さんの歩みと会社の技術開発は、個人の再出発と社会インフラの再生が重なる物語になっています。
エムビーエスの会社・技術情報
- 会社名:株式会社エムビーエス
- 代表者:代表取締役社長 山本貴士
- 創業:1993年1月
- 創業時の事業:足場業「プロジェクトビギ」
- 主な事業:建築物のリフォーム、コンクリート構造物の補修・点検・管理
- 主な独自技術:ホームメイキャップ工法、スケルトン工法
- スローガン:列島リフォーム
- 全国展開目標:2027年5月までに50拠点
まとめ
山本貴士さんは、家族の事業失敗や生活環境の変化を経験した後、20歳で故郷の宇部へ戻り、足場業から事業を始めました。その会社が現在の株式会社エムビーエスです。
外壁リフォームで培った技術は、透明性を生かした「スケルトン工法」へ発展し、道路や橋、トンネルなど全国約1800か所の老朽化インフラ補修へ広がりました。さらに村田製作所とのRFID技術開発や、ドーナッツロボティクスとの四足歩行ロボット実証など、点検・監視・省人化を含めた次の技術開発も進んでいます。
「壊して造る」から「活かして使う」へ。山本さんが足場業から始めた仕事は、古くなった日本のインフラをどう次の世代へ残すかという取り組みへつながっています。
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