三重・美杉で受け継がれる「わな師」の技と命に向き合う仕事
三重県津市美杉町で、野生の鹿を追い続けてきたわな猟師・古田洋隆さん。その技を受け継ごうとしているのが、娘の古田愛さんです。
2026年10月8日放送のNHK総合「#NHK 地域放送局のおすすめ番組 津局『わな師の家』」では、山に残されたわずかな痕跡から鹿の通り道を読み、自ら工夫したわなを仕掛ける父と、その背中を追う娘の日々が紹介されます。古田さんは年間約600頭もの鹿を捕獲してきた熟練者として知られ、三重県の「みえジビエハンター兼みえジビエ解体処理者」として技術研修の講師も務めています。
この記事でわかること
- 古田洋隆さんが「伝説のわな師」と呼ばれる理由
- 鹿の行動を読み切る独自のわな猟
- 娘・古田愛さんが父の技を受け継ぐまで
- 捕獲した鹿を「みえジビエ」として生かす仕事
古田洋隆さんは美杉の山で年間約600頭の鹿を捕獲
古田洋隆さんが暮らすのは、三重県津市の南西部に位置する美杉町です。
山林が広がる地域で長年わな猟を続け、鹿やイノシシなどによる農作物被害と向き合ってきました。古田さんの特徴は、ただわなを数多く仕掛けるのではなく、山に残された痕跡から獲物がどこを通るのかを読み切るところにあります。
足跡、土の状態、草木の変化などを見ながら鹿の通り道を探し、そこへ自ら工夫を重ねてきたわなを設置します。長年の経験から山の中の獣道が頭に入っており、年間約600頭を捕獲する腕前が紹介されてきました。
古田さんは単に鹿を捕獲するだけの猟師ではありません。
三重県が実施した「みえジビエ捕獲解体処理研修会」では、「スピリッツ」の古田洋隆さんが、みえジビエハンター兼みえジビエ解体処理者として講師を担当。鹿を捕獲してから食肉として適切に処理するまでの技術を次の担い手へ教える立場にもなっています。
獲物を暴れさせない独自のわなが肉の品質にもつながる
古田さんの猟で重要なのが、鹿を捕らえた後の状態まで考えてわなを仕掛けることです。
鹿がわなに掛かって激しく暴れると、体温が上がり、肉への負担も大きくなります。そのため古田さんは鹿の動きを読み、狙った位置でわなを踏ませる技術を磨いてきました。
その技は料理人からも高く評価されています。
美杉町で古田さんが捕獲した鹿肉は、捕獲後の処理まで丁寧に行われることで、一般に抱かれがちな「ジビエは硬い」「臭みがある」という印象とは異なる品質を目指しています。古田さんの鹿肉を指定して料理に使う飲食店もあります。
大切なのは、捕まえる技と食肉にする技が別々ではないことです。
山で鹿を見つけるところから、わなを仕掛け、捕獲し、適切に解体するところまでが一続きの仕事になっています。
祖父から続く猟の家に生まれた3代目のわな師
古田洋隆さんの猟は、本人の代から突然始まったものではありません。
古田家では祖父の代から狩猟が続いており、洋隆さんは3代目。幼い頃から山と猟が身近にある環境で育ちました。
経験を積む中で、鹿がどこを歩くのか、どんな場所を警戒するのかを身体で覚え、自分なりのわなも作り上げていきました。
現在では、その技術を研修会で教えるほどの立場になっていますが、猟の技はマニュアルだけで完全に伝えられるものではありません。
同じ山でも天候や季節によって動物の行動は変わります。足元に残された小さな変化を見つけ、「ここを通る」と判断する感覚は、長い年月を山で過ごして身につけたものです。
「わな師の家」で大きなテーマになるのも、そうした言葉だけでは説明しきれない技を、家族の中でどう次へつないでいくかという点です。
娘・古田愛さんが約10年前から父の猟を手伝う
古田洋隆さんの技を受け継ごうとしているのが娘の古田愛さんです。
愛さんは約10年前から父の猟を手伝い、山へ入りながらわなの仕掛け方や鹿の痕跡の見つけ方を学んできました。
父が長年の経験で瞬時に判断することを、娘が同じようにできるようになるには時間が必要です。
どの場所へわなを置くのか。
鹿が通った跡なのか、それとも古い痕跡なのか。
山の中では、教科書通りの正解が用意されているわけではありません。
だからこそ、父と一緒に山へ入り、実際の仕事を繰り返しながら技を覚えていくことになります。
今回の「わな師の家」は、全国的に知られる凄腕猟師の仕事だけではなく、その技が父から娘へ渡されていく過程を追った家族の物語でもあります。
鹿を捕る理由は農作物を守ることだけではない
美杉町では鹿などの野生動物による農作物被害が地域の課題になっています。
そのため、わな猟には個人の趣味としての狩猟とは異なる役割があります。増えた野生動物を適切に捕獲し、田畑や森林を守る仕事です。
一方、捕獲した鹿をそのまま廃棄するのではなく、食肉として生かす取り組みも進められてきました。
三重県では、野生の鹿やイノシシを安全で高品質な食材として活用する「みえジビエ」に取り組んでいます。
古田さんはその中で、
- 鹿の捕獲
- 解体処理
- ジビエとしての活用
- 捕獲・処理技術の伝承
まで関わる人物です。
つまり、わな師の仕事は「害獣を捕まえる」だけでは終わりません。
山の環境を守り、地域の農業を守り、捕獲した命を食材として無駄なく利用するところまで続いています。
古田さんの鹿肉は三重県の「みえジビエ」にも
古田洋隆さんは「スピリッツ」の店主として、鹿肉を扱ってきました。
三重県が公開してきた「みえジビエ」の販売情報にも、津市美杉町の精肉取扱先として「スピリッツ(店主:古田洋隆)」が掲載されています。
さらに県の研修会では、古田さん自身が鹿をみえジビエとして利用するための捕獲から解体処理までを指導しています。
「捕獲数が多い凄腕猟師」というだけなら、技術は古田さん一人のものとして終わってしまいます。
研修で後進へ教え、家庭では娘の愛さんが父の仕事を学ぶ。
この2つの流れがあることで、美杉の山で積み上げられてきた技が次の世代へ残されようとしています。
実用情報
古田洋隆さんは、三重県津市美杉町を拠点に活動しています。
- 氏名:古田洋隆
- 活動地域:三重県津市美杉町
- 屋号:スピリッツ
- 仕事:わな猟、鹿などの捕獲・解体処理
- 資格・登録:みえジビエハンター兼みえジビエ解体処理者
- 後継者として登場:娘・古田愛さん
古田さんの活動場所は一般向けの観光施設や狩猟体験施設ではありません。
猟場へ無断で入ったり、設置されているわなへ触れたりするのは危険です。山林には狩猟や有害鳥獣捕獲のためのわなが設置されている場合があるため、現地では表示や立入規制に従う必要があります。
まとめ
三重県津市美杉町の古田洋隆さんは、年間約600頭もの鹿を捕獲してきた「伝説のわな師」として知られています。
祖父から続く狩猟家の3代目として山へ入り、鹿のわずかな痕跡から通り道を読み、自ら工夫したわなで捕獲する技を磨いてきました。
その仕事は捕獲だけで終わりません。
鹿を適切に解体して「みえジビエ」として食につなぎ、自らは県の研修会で後進へ技術を伝えています。そして身近でその仕事を学んできたのが娘の古田愛さんです。
2026年10月8日の「#NHK 地域放送局のおすすめ番組 津局『わな師の家』」で描かれるのは、凄腕のわな師の技だけではありません。
美杉の山で受け継がれてきた猟、捕らえた命を無駄にしない仕事、そして父から娘へ技を残していく「わな師の家」の物語です。
参考リンク


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