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「送迎人生」を研究する土井勉 部活・習い事の送迎負担を公共交通から考える【東海ドまんなか!】

人物

土井勉が向き合う「送迎人生」と家族の移動問題

2026年10月9日放送のNHK総合・東海地方「東海ドまんなか!」は、「仕事も部活も送迎しだい!? 家族の負担どう減らす」を特集します。出演するのが、一般社団法人グローカル交流推進機構理事長で、長年にわたり地域公共交通を研究してきた土井勉さんです。

土井さんは、家族の送り迎えが特定の人へ集中する状態を「送迎人生」という言葉で捉え、交通の問題だけでなく、働き方や子どもの学び、住む場所の選択にまで影響する課題として研究してきました。今回の番組テーマと、土井さんが近年取り組んできた研究が真正面から重なります。

この記事でわかること

  • 土井勉さんが研究する「送迎人生」の意味
  • 部活や習い事の送迎が家族へ与える影響
  • 京都市役所・阪急電鉄から交通研究者へ進んだ経歴
  • 地域公共交通が送迎負担を減らすために果たす役割

土井勉が使う「送迎人生」は送迎する側の負担まで見る考え方

公式動画:「地域公共交通は本当に必要なのか?」対談:土井勉氏

「送迎人生」は、単に毎日車で家族を送り迎えしているという意味ではありません。

土井さんは、自分で車を運転できない人や公共交通を利用しにくい人の移動を家族などが支え、その負担が特定の人へ集中している状態を表す言葉として使っています。

例えば、

  • 子どもの習い事への送迎
  • 中高生の部活動や試合への送迎
  • 駅までの送迎
  • 高齢になった家族の通院
  • 買い物のための送迎

などです。

一つひとつを見ると、家族なら日常的に行っている行動に見えます。

しかし毎日のように時間を指定されると、「迎えがあるので残業できない」「フルタイムで働きにくい」「家族が送れないので子どもが活動を諦める」といった別の問題へつながっていきます。

10月9日の「東海ドまんなか!」でも、習い事の送迎のためフルタイム勤務を諦めた母親や、家族による送迎が難しく希望する部活へ入れなかった子どもが取り上げられます。

送迎する人の約7割が何らかの負担を感じている

土井さんたちは、送迎を感覚だけで語るのではなく、調査によって実態を確かめています。

2025年に行われた調査では、送迎を行っている512人について、

  • 「良い時間ではあるが負担は感じる」32%
  • 「負担は感じているが仕方がない」33%
  • 「負担感が大きく、できれば送迎したくない」5%

という結果が示されています。

つまり、家族との時間として肯定的に捉えている人を含めても、およそ7割が何らかの負担感を抱えていました。

ここが「送迎人生」という考え方の重要なところです。

送り迎えをしている本人が、「家族のためだから当然」と受け入れていたとしても、そのために仕事や生活時間が制約されている場合があります。

送迎される側にも問題があります。

「また送ってもらうのは悪いから」と遠慮して外出を減らしたり、学校や習い事などの選択肢を狭めたりすれば、本来できたはずの経験そのものが失われます。

送迎する人だけでなく、送ってもらう人の生活まで含めて考えるのが土井さんの視点です。

部活動の地域移行で「移動」が新しい問題になる

子どもの送迎問題がこれからさらに注目される理由の一つが、中学校の部活動を学校外の地域クラブへ移していく動きです。

これまで学校の敷地内で活動できていた部活が地域クラブになると、練習場所までの移動が必要になるケースがあります。

自宅から歩けない。自転車では遠い。鉄道やバスも使いにくい。

そうなれば、最終的に保護者の車へ頼ることになります。

土井さんは、部活動の地域クラブ移行を進める際には、教育だけでなく交通政策も一緒に考える必要があると指摘しています。

「どんなスポーツをしたいか」ではなく、「親が送迎できるかどうか」で部活を選ぶ状況になれば、移動手段の有無が子どもの経験格差につながります。

今回の「東海ドまんなか!」が扱う「入りたい部活に入れない子ども」というケースは、まさにこの問題を映しています。

京都市役所から阪急電鉄へ進んだ土井勉

土井勉さんは1950年、京都市生まれです。

名古屋大学工学部土木工学科へ進学し、名古屋大学大学院工学研究科を修了。1976年に京都市役所へ入りました。

その後、1991年に阪急電鉄へ転職しています。

さらに、

  • 神戸国際大学経済学部教授
  • 京都大学大学院工学研究科などの特定教授
  • 大阪大学COデザインセンター特任教授

などを歴任し、現在は一般社団法人グローカル交流推進機構の理事長を務めています。

博士(工学)、技術士(建設部門)でもあり、長年の専門テーマは「総合交通政策とまちづくり」です。

交通だけを見るのではなく、「移動できることによって人の暮らしや地域がどう変わるのか」を研究してきた人物です。

公共交通は「赤字か黒字か」だけでは測れない

地方の鉄道やバスでは、利用者数や赤字額がしばしば注目されます。

一方、土井さんが研究してきたのが「クロスセクター効果」という考え方です。

公共交通があることで、

  • 家族の送迎負担が減る
  • 学生が学校へ通える
  • 高齢者が病院へ行ける
  • 買い物へ出られる
  • 自動車を運転できない人も生活できる

といった効果が生まれます。

交通事業だけの収支では赤字でも、医療、福祉、教育、地域経済などを含めて考えれば、別の価値が見えてくるという考え方です。

土井さんは地域公共交通の価値を定量的に捉える研究にも継続して取り組んでいます。

「送迎人生」もこの延長線上にあります。

バスを1路線残すことで、利用者数だけを見ると大きな数字にならなくても、何十世帯もの家族が毎日の送迎から解放されるなら、その効果まで考える必要があります。

近江鉄道の再生を描いた著書が2026年度都市計画学会賞

土井さんが交通政策の現場で深く関わった代表例の一つが、滋賀県を走る近江鉄道です。

近江鉄道では利用者減少などを背景に路線存続が大きな課題となりました。

土井さんは沿線地域公共交通再生協議会で活性化に関わり、その過程を『ガチャコン電車血風録―地方ローカル鉄道再生の物語』としてまとめています。

同書は2025年1月に岩波ジュニア新書から刊行され、2026年度日本都市計画学会賞の著作賞を受賞しました。

鉄道会社だけで路線を維持するのではなく、自治体や地域住民も含めて「地域の移動をどう守るか」を考えた実例です。

送迎問題も構造は似ています。

家族だけに移動の責任を負わせるのではなく、公共交通、学校、自治体、地域が一緒に移動手段を考える。

土井さんが現在「送迎人生」に注目している背景には、長年取り組んできた地域交通再生の経験があります。

「送迎をなくす」だけではない土井勉の考え方

送迎には良い面もあります。

親子で話せる大切な時間になっている家庭もあれば、高齢になった家族との交流時間になることもあります。

土井さんも、送迎そのものを否定しているわけではありません。

問題としているのは、「送迎以外に選択肢がなく、特定の家族が無理をして支えなければ生活できない状態」です。

公共交通があれば自分で移動できる。

地域の送迎サービスがあれば家族だけに頼らずに済む。

学校や地域クラブを考える段階から交通を組み込めば、子どもが活動を諦めなくて済む。

重要なのは、送り迎えを続けるかゼロにするかではなく、「自分で選べる移動手段を増やすこと」です。

土井勉の経歴・現在の活動

土井さんの主な経歴と活動は次の通りです。

  • 名前:土井勉
  • 生年:1950年
  • 出身:京都市
  • 学歴:名古屋大学大学院工学研究科修了
  • 京都市役所に勤務
  • 1991年に阪急電鉄へ入社
  • 神戸国際大学経済学部教授
  • 京都大学大学院特定教授
  • 大阪大学COデザインセンター特任教授
  • 現在:一般社団法人グローカル交流推進機構理事長
  • 学位:博士(工学)
  • 資格:技術士(建設部門)
  • 専門:総合交通政策とまちづくり
  • 2026年度日本都市計画学会賞・著作賞受賞

現在も地域公共交通やモビリティ、まちづくりに関する研究・講演・政策支援を続けています。

まとめ

土井勉さんが研究する「送迎人生」は、家族による送り迎えを単なる家庭内の問題として終わらせず、地域交通や働き方、教育の問題として捉える考え方です。

2026年10月9日の「東海ドまんなか!」では、送迎のためにフルタイム勤務を諦めた母親や、送迎できないため希望する部活へ入れなかった子どもなどを通して、東海地方でも身近になっている問題を考えます。

家族が車を出せるかどうかによって、仕事や学校生活の選択肢が決まってしまう。

土井さんが長年研究してきた公共交通の役割は、単に「バスや電車を走らせること」ではなく、一人ひとりが家族へ過度に頼らなくても移動できる地域をつくることにつながっています。

参考リンク

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  • ガチャコン電車血風録―地方ローカル鉄道再生の物語

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