赤と黒の奇岩が語る大地の物語
果てしない荒野にそびえるパーヌルル国立公園。赤と黒の縞模様をまとった奇岩が連なり、太陽の角度で色を変えながら、数億年の記憶を静かに語りかけてきます。
狭い谷に差し込む一筋の光は、大地が秘めてきた物語を照らし出し、訪れる人を別世界へ誘います。
このページでは『世界遺産「オーストラリア〜赤と黒の縞模様をまとった奇岩の絶景」(2月1日)』の内容を分かりやすくまとめています。
オーストラリア・パーヌルル国立公園とは?
【世界遺産】として登録されている【パーヌルル国立公園】は、オーストラリアの北西部・東キンバリー地域に広がる、約24万ヘクタールもの巨大な国立公園です。面積は東京都とほぼ同じスケールで、その大部分が世界遺産エリアとして保護されています。
公園内の中心となるのが、【バングル・バングル山脈】です。砂岩でできた奇岩群が、まるで巨大な蜂の巣のように連なり、周囲の半乾燥サバンナ平原から一気に盛り上がる姿は、地上から見ても上空から見ても圧倒的なインパクトがあります。高さは高いもので約250mにも達し、自然がつくり出した彫刻のような景観が広がっています。
このエリアは2003年に世界遺産に登録されました。登録理由は、地球の歴史を物語る【卓越した地形・地質】と、砂岩の塔状地形がつくる【非日常的な景観美】が評価されたためです。世界遺産リストを管理するUNESCOも、「世界でも類を見ない砂岩タワーカルスト地形」として、その価値を明確に認めています。
アクセスは決して簡単ではありません。【パーヌルル国立公園】は最寄りの町ホールズクリークから約160km、クヌナラからは約300km離れた奥地にあり、乾季の間だけ開通する未舗装道路を4WDで進まないとたどり着けません。道のりは荒く、途中で川を渡る場所もあるため、まさに「秘境の世界遺産」と呼ぶにふさわしい場所です。
番組では、2026年放送回として、この【オーストラリア】の秘境・【パーヌルル国立公園】を舞台に、赤と黒の縞模様をまとった奇岩の絶景、その成り立ち、そしてそこに刻まれた先住民の物語までを一気に見せていました。
赤と黒の縞模様!バングル・バングル山脈の奇岩の正体
【バングル・バングル山脈】の象徴といえば、やはり【赤と黒の縞模様の奇岩群】です。蜂の巣のような丸いドームがびっしりと並び、その表面にはオレンジ〜赤色と黒〜灰色の横縞がくっきりと走っています。現地の人々が「ハチの巣」と呼ぶのも納得の姿です。
この縞模様は、岩の中身が違うからではなく、砂岩の層ごとの性質の差から生まれています。オレンジ〜赤色の部分は【酸化鉄を多く含む砂岩】の層で、乾きやすく、水分があまり長く留まりません。そのため微生物がつきにくく、空気にさらされて鉄分が酸化し、赤茶けた色になります。いっぽう黒〜灰色の部分は、【粘土分を多く含む層】で水分を保持しやすく、その表面に【シアノバクテリア】という光合成をする微生物の膜がびっしりと広がっています。このシアノバクテリアが、薄い黒い膜となって岩肌を守り、縞模様をくっきりと浮かび上がらせているのです。
では、そもそもこの【奇岩】はどうやって生まれたのか。約3億年前、この一帯は巨大な川が海に流れ込む【河口】でした。川の流れが激しいときには砂が、穏やかなときには泥が運ばれてきて、それぞれが層状に堆積していきます。その後、地殻変動によって海底だった地層が隆起し、長い時間をかけて割れ目から雨水が浸透。風化と浸食が何千万年もくり返され、柔らかい部分が削られ、硬い部分が残り、今のドーム状の景観が出来上がりました。
番組では、赤い層をカットすると中は白くさらさらの砂が詰まっている様子や、黒い部分に水をかけるとヌルヌルとした手ざわりになることなどを実験し、【砂岩】と【粘土層】という全く性質の違う層が折り重なっていることを視覚的に見せていました。また、奇岩群の中を流れる白い筋のような部分は、乾季には干上がっているものの、雨季になると再び水が流れる【川の跡】であり、今もなお大地を削り続けている「生きた地形」であることも印象的に映し出されていました。
アボリジナル・ピープルと聖なる岩窟の物語
【パーヌルル国立公園】は、壮大な地形だけでなく、【アボリジナル・ピープル】にとっての聖地でもあります。この土地には少なくとも2万年前から先住民が暮らしてきたとされ、狩猟や木の実採集をしながら、季節ごとに移動して生活していました。雨季には安全な高台へ、乾季には川の近くへと移ることで、厳しい環境の中でも水と食料を守ってきたのです。
番組が向かったのは、切り立った谷を抜けた先にある【聖なる岩窟】。ここは豪雨や鉄砲水が岩をえぐり続けた結果生まれた巨大な空洞で、上部には枯れた滝の跡が残っています。雨季になるとここに大量の水が流れ込み、滝となって岩窟ごと水没するほどの水量になるといいます。乾季でも完全に水が枯れることはなく、岩窟は周辺の生き物にとっても貴重な水場です。
この水場には、【レインボー・スネーク】と呼ばれるヘビの精霊が住んでいると信じられています。オーストラリア各地のアボリジナル文化で語られる【虹のヘビ】は、地形をつくり、水を司る存在として非常に重要な神話的存在です。虹が空にかかるとき、それはレインボー・スネークが水場から水場へ移動している姿だとされ、「なぜある水場は干ばつでも枯れないのか」を説明する物語にもなっています。
【パーヌルル国立公園】の聖なる岩窟は、このレインボー・スネークの怒りを鎮め、水難から身を守るための儀式の場でもありました。水位が上がるとどれほど危険になるのかを、先人たちは岩の浸食の痕や周囲の地形から読み取り、物語として子どもたちに伝えてきたのです。番組では、儀式の内容そのものには踏み込みませんが、「ここは単なる絶景スポットではなく、数万年にわたって人々の祈りが積み重ねられた場所なのだ」ということを、厳かな映像で強く印象づけていました。
幅わずか数メートル!大峡谷と極細の谷が語る3億年の歴史
【パーヌルル国立公園】の北側には、南側の丸いドームとはまったく違う、【断崖絶壁の大峡谷】が広がっています。断崖の高さは最大で約250m。谷底は場所によって幅がわずか数メートルしかなく、人が通ると壁に押しつぶされそうな迫力です。
谷底には、南側ではあまり見られなかった大きな石がゴロゴロと転がっています。これは、約3億年前に【川の上流部】だったこのエリアに、激しい流れで運ばれてきた礫が厚くたまった名残です。上流域で礫が堆積し、下流域では細かく砕けた砂が堆積した結果、北側には【礫層】、南側には【砂岩層】という、性質の違う地層がつくられました。その後の隆起で全体が持ち上がり、北側の礫層には亀裂が入り、雨や風がその亀裂を一気に削っていった結果、垂直に切り立った極細の谷が刻まれたのです。
いっぽう南側の【砂岩帯】は、より柔らかく、水や風による浸食を受けやすかったため、角が取れて丸い【ドーム状の奇岩】になりました。同じ【パーヌルル国立公園】の中に、丸いドームと鋭い断崖という対照的な景観が共存しているのは、こうした堆積環境の違いと、その後の浸食プロセスの差がはっきりと現れているからです。
番組では、北側の大峡谷を歩きながら、岩の大きさや層の違いをカメラでしっかりと見せ、「ここは地球の歴史の教科書そのものです」と言わんばかりの映像で、数億年単位の時間スケールを体感させていました。視聴者は、目の前の石ひとつひとつが、かつては巨大な川底を転がっていた証拠であることに気づかされます。
街明かりのない荒野に瞬く南十字星の星空
【パーヌルル国立公園】の魅力は、昼の奇岩だけでは終わりません。日が沈むと、街明かりから遠く離れたこの荒野は、【極上の星空スポット】へと姿を変えます。番組の撮影隊はキャンプを張り、夜を待ちながら、やがて空いっぱいに広がる星々と流れ星、そして【南十字星】を捉えていました。
【オーストラリア】のアウトバックは、湿度が低く空気が澄んでいるうえ、光害がほとんどないため、天の川や大小さまざまな星雲が肉眼でもはっきりと見える世界有数の【星空観測スポット】です。特に【バングル・バングル山脈】のシルエット越しに瞬く星々は、昼間の赤と黒の縞模様とはまた違う「宇宙的な表情」を見せてくれます。
番組では、奇岩群の上にアーチ状の天の川がかかり、その下に南十字星がきらめくタイムラプス映像を通して、「この場所は地球の大地と宇宙の両方を感じられる特別な空間なのだ」と強く印象づけていました。日中は【世界遺産】の絶景と地球史を学び、夜は静寂の中で星空を仰ぐ。このコントラストこそが、【パーヌルル国立公園】という場所の醍醐味だと断言できます。


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