山を自ら切り拓き、世界に評価されたチーズを生み出す松原正典さん
『頂点サマ(衝撃神業10連発&伝説の海女・秘境のチーズ職人に2泊3日見習いSP)(2026年9月3日)』で取り上げられるチーズ職人が、広島県三次市の松原正典さんです。牛やヤギを山で放牧する「山地酪農」を実践し、ミルクづくりからチーズの熟成まで手がけています。世界で高く評価された「アカショウビン」の受賞歴だけでなく、なぜ山を開墾するところから始めたのか、その歩みと購入方法まで掘り下げます。
この記事でわかること
- 松原正典さんと三良坂フロマージュの関係
- 世界で評価された「アカショウビン」の特徴と受賞歴
- 山地酪農を選んだ理由と海外修業から開墾までの歩み
- 店舗の場所・通販・購入するときの注意点
松原正典さんは三良坂フロマージュを営むチーズ職人

(出典:Nippon.com「Mirasaka Fromage」)
松原正典さんは、広島県三次市三良坂町にあるチーズ工房三良坂フロマージュの代表です。
大きな特徴は、チーズだけを作る職人ではないこと。山で牛やヤギを育て、そこから得られるミルクをチーズへ加工するところまで一貫して向き合っています。
三良坂フロマージュが採用しているのが「山地酪農」です。平らな牧草地ではなく、木や草が生える山を放牧地として活用します。
牛やヤギは山を歩き、自分で草や木の葉などを食べます。家畜のふんは土へ還り、そこから再び草が育つという循環を生かす考え方です。三良坂フロマージュでは海外産飼料への依存を減らす酪農も目指しています。
チーズ作りの技術だけではなく、「どんな環境で動物を育て、どんなミルクを得るか」から味を設計している職人と考えると、松原さんの仕事の特徴がよく分かります。
世界で評価された「アカショウビン」は檜で熟成するチーズ
(出典:三良坂フロマージュ公式オンラインショップ)
代表的なチーズの1つが、ウォッシュタイプの「アカショウビン」です。
自然放牧で育ったブラウンスイス牛のミルクを100%使用。搾りたてのミルクから仕込み、チーズを檜の皮で巻き、檜のひもで結び、檜の板の上で約2か月熟成させます。
受賞歴も目を引きます。
- 2022年 World Championship Cheese Contest 金賞
- 2022年 World Cheese Awards 金賞
- 2022年 Japan Cheese Award ソフト/ウォッシュ部門 最優秀部門賞
- 2023年 ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト 第2位・農畜産業振興機構理事長賞
- 2023年 World Cheese Awards ウォッシュ部門 スーパーゴールド
世界的な評価につながったのは、熟成技術だけではありません。原料となるミルクそのものが、山地酪農によって作られている点が大きな特徴です。
公式オンラインショップの「アカショウビン ホール もっちりタイプ」は税込5,800円。生産できる量が少なく、再入荷待ちになることがあります。賞味期限は約2週間で、要冷蔵です。
酪農への疑問が松原正典さんの人生を変えた
松原さんは三良坂町で生まれ、大阪で育ちました。高校卒業後に広島へ戻って農業を学び、酪農の道へ進みます。
卒業後にはアメリカやオーストラリアへ渡り、大規模な酪農現場を経験しました。
そこで松原さんが抱いたのが、効率を優先して乳を生産するだけの酪農への疑問でした。
何千頭もの牛を管理する大規模牧場で働く中で、「牛たちは幸せなのか」「自分自身も幸せなのか」と考えるようになります。
そこから、牛を自然の中で放牧し、日本にある山や草を生かす酪農へと考え方が変わっていきました。
この経験があるからこそ、三良坂フロマージュでは「たくさん乳を搾る」ことより、家畜への負担を抑えながら良質なミルクを得ることが重視されています。
林業まで学び、自分で山を牧場へ変えていった
松原さんの経歴で特に異色なのが、チーズ職人になる前に林業を約2年間学んでいることです。
帰国後、山について理解するため林業の仕事に従事。その後フランスでチーズ作りを学び、2004年に三良坂フロマージュを開業しました。
さらに約3年後には山を購入します。
そこから木を伐り、草を刈り、トラクターで土地を整えながら少しずつ放牧地を拡大。ヤギや牛の力も借りながら、山そのものを牧場へ変えていきました。
チーズ工房を開くために土地を借りたという話ではありません。
「理想のミルクを作るには理想の飼育環境が必要。その環境がなければ自分で作る」というところまで突き詰めているのが、松原さんの仕事のすごさです。
1日1回の搾乳と季節の草がチーズの味を変える
三良坂フロマージュでは、牛やヤギを自然の草で育てています。
一般的な乳量を追求する方法とは異なり、搾乳も基本的に朝の1回です。大量生産よりも、家畜の体を大切にしながら得られるミルクを丁寧にチーズへ加工する考え方です。
さらに面白いのが季節による変化です。
春には新芽や筍、夏には青々とした草、秋には栗など、動物が食べるものが変わります。その結果、ミルクの香りや脂肪分、たんぱく質の割合も変化し、出来上がるチーズにも季節ごとの個性が現れます。
工業製品のように1年中まったく同じ味を狙うのではなく、山の季節そのものをチーズの味として残すところが三良坂フロマージュらしさです。
「フロマージュ・ド・みらさか・シェーブル」など受賞チーズはほかにもある
アカショウビンだけが評価されているわけではありません。
牛乳から作る「フロマージュ・ド・みらさか」は2013年のフランス国際チーズコンクールで銀賞、山羊乳を使った「フロマージュ・ド・みらさか・シェーブル」は2015年に同コンクールのシェーブル部門で金賞を受賞しています。
ほかにもモッツァレラ、フロマージュ・ブラン、リコッタ、スカモルツァなど、牛乳と山羊乳を生かした複数のチーズがあります。
フランスやイタリアで学んだ伝統的な製法を土台にしつつ、地元の葉や果物、ハーブなどを取り入れていることも特徴です。
世界のチーズをそのまま再現するのではなく、三良坂の山だから作れるチーズへ落とし込んでいるところに、松原さんの技術が表れています。
三良坂フロマージュは店舗でも通販でも購入できる

(出典:三良坂フロマージュ公式サイト)
三良坂フロマージュには工房併設のショップがあり、チーズを直接購入できます。
- 住所:広島県三次市三良坂町仁賀1617-1
- 営業時間:10:00~16:00
- 定休日:日曜日
- JR三良坂駅から車で約7分
- 尾道松江自動車道・三良坂ICから車で約7分
- 中国自動車道・三次IC、庄原ICから車で約15分
商品がなくなると早めに閉店する場合があり、チーズの予約や取り置きにも対応しています。
公式オンラインショップから取り寄せることもできます。
人気商品や熟成チーズは一度に作れる量が限られているため、テレビなどで知って購入したい場合は、商品ごとの販売状況を確認してから動いた方が安心です。
持ち帰りは保冷対策が必要で牧場への無断立ち入りは禁止
店舗へ行く場合に覚えておきたいのが、チーズの温度管理です。
三良坂フロマージュでは、ナチュラルチーズは乳酸菌が生きているため、クーラーボックスや保冷剤の持参をすすめています。
特に春から秋は車内の温度が上がりやすく、常温に戻ると発酵が進み、食感や酸味、風味が変わることがあります。店では保冷バッグも販売されています。
また、ショップの奥には実際の放牧地がありますが、防疫のため牧場内への無断立ち入りは禁止されています。
タイミングが合えば店の近くまで牛やヤギが降りてくることもありますが、あくまで生産のための牧場です。訪れる際は、この環境そのものがチーズ作りの一部であることを覚えておきたいところです。
松原さんが作っているのは、単に賞を取るための高級チーズではありません。
海外で酪農を経験し、林業を学び、自ら山を整え、牛やヤギを育て、季節ごとに変化するミルクをチーズにする。「チーズ作りはミルク作りから始まる」という考えを、山そのものから実践してきた仕事が三良坂フロマージュにつながっています。


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