あさイチで注目、大津・逢坂に150年以上残る手組みの技
2026年10月8日放送のNHK「あさイチ」では、滋賀県大津市から「江戸の伝統・組みひも」を中継します。
大津市逢坂で組紐文化を150年以上守っているのが「藤三郎紐」です。創業は1867年(慶応3年)。初代の妻が旅人に印籠の紐などを販売したところから始まり、現在は4代目・太田藤三郎さんが伝統を受け継いでいます。大津の地域ブランド「大津百町百福物語」では、現在の大津で唯一の組紐屋として紹介されています。
この記事でわかること
- 藤三郎紐が1867年に始まった経緯
- 4代目・太田藤三郎さんへ受け継がれた技
- 草木染手組組紐と珍しい「内記台」の特徴
- 組紐体験の料金・場所・アクセス
藤三郎紐は1867年創業、大津で唯一残る組紐屋
公式動画:藤三郎紐「糸繰り」
藤三郎紐が始まったのは江戸時代末期の1867年です。
初代・太田藤三郎さんが近江の逢坂山、かつて関所が置かれていた場所の近くで米屋を開きました。
組紐を始めたのは初代本人ではなく、妻の「しも」さんです。
京都と大津を結ぶ峠を行き交う旅人に向け、副業として印籠の紐など組紐を使った雑貨を販売したのが始まりとされています。
当時の組紐は、現在のように帯締めだけに使われるものではありませんでした。
古くから、
- 経巻の紐
- 袈裟の紐
- 公家の衣装
- 刀の下げ緒
- 甲冑
- 弓具
- 馬具
など、さまざまな場所に用いられてきました。
特に武家社会では丈夫な紐が必要とされたため、組紐は武具を支える実用品でもありました。
印籠の紐から帯締めへ、時代とともに用途が変化
明治維新によって武家社会が終わると、組紐を取り巻く環境も大きく変わります。
刀や甲冑に使われていた紐の需要は減少。その一方で、新しい使い道として広がっていったのが帯締めや羽織紐でした。
藤三郎紐でも、2代目藤三郎さんの妻「うの」さんが組紐、特に丸台を使った技に優れ、大正時代に入るころには店を組紐専門へと転換しました。
もともとは米屋の一角から始まった仕事が、時代に合わせて形を変えながら本業になっていったのです。
大津・逢坂という場所にも大きな意味があります。
逢坂山は京都と近江を結ぶ交通の要衝でした。
百人一首で知られる蝉丸の、
「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」
にも登場する場所です。
人々が行き交う峠だったからこそ、旅人が使う印籠の紐という商いが生まれました。
3代目が草木染めを研究、大津市の無形文化財へ
藤三郎紐の大きな転機となったのが3代目です。
3代目藤三郎さんは草木染めを研究し、その技術を組紐に取り入れました。
化学染料だけに頼らず、植物などから得た染料を使って絹糸を染め、その糸を職人が手で組み上げます。
この「草木染手組組紐」の技術が評価され、3代目は技術保持者として大津市の無形文化財に指定されました。
現在、藤三郎紐の「草木染手組組紐」は滋賀県の伝統的工芸品にも指定されています。
絹100%の糸を使い、草木染め、手組みという工程を守っていることが特徴です。
草木染めでは染料に含まれるさまざまな成分によって、均一な人工色とは違う、淡く渋みのある色合いが生まれます。
現在は4代目・太田藤三郎さんが伝統を継承
現在、150年以上続く藤三郎紐を守っているのが4代目・太田藤三郎さんです。
帯締めや羽織紐だけでなく、
- 組紐ネクタイ
- ストラップ
- 江戸打紐
- 草木染め帯揚げ
など、現代の暮らしにも取り入れやすい商品を手掛けています。
かつて滋賀県内には多くの組紐工房がありました。
JR東海の紹介では、最盛期には30軒近くあったとされますが、現在も大津で組紐を作り続けている工房として藤三郎紐が残っています。
150年前と同じ商品だけを作り続けるのではありません。
受け継いだ技そのものを守りながら、時代に合う使い道を増やしてきたことが、長く続いてきた理由の一つです。
珍しい「内記台」で1本の組紐が生まれる
藤三郎紐のものづくりで注目したいのが、組紐を作るための「組台」です。
代表的なものには、
- 丸台
- 角台
- 綾竹台
- 高台
- 内記台
などがあります。
中でも「内記台」は全国的にも珍しい組台です。
滋賀県によると、内記台で組んだ帯締めには適度な伸縮性があり、締めやすいという特徴があります。
組紐作りは、いきなり色のついた糸を台へ置いて組むだけではありません。
まず糸を染めます。
その後、
糸繰り
↓
糸合わせ
↓
撚り掛け
↓
経尺
↓
組台で手組み
という複数の工程を経て、ようやく1本の組紐になります。
何本もの絹糸が職人の手によって交差し、少しずつ模様と強度を持った一本の紐へ変わっていきます。
機械で高速生産するロープとはまったく違い、糸を動かす順序だけでなく、引く力や締め具合まで仕上がりを左右する世界です。
藤三郎紐では実際に組紐作りを体験できる
藤三郎紐では、完成品を見るだけでなく、自分で組紐を作る体験も用意されています。
現在公式サイトで案内されている組紐体験は、角台を使ってストラップを作る内容です。
- 内容:角台を使った組紐ストラップ作り
- 料金:2,500円
- 材料費:料金に含む
- 人数:4人まで
- 開催:土曜日10:00から限定
- 予約:事前申込
- 所要時間など:予約時に確認
また、ハンカチや手ぬぐいの染色体験も2,500円から用意されています。
実際に糸を動かしてみると、完成した組紐だけを見ていると分かりにくい職人技を体感できます。
同じ動きを繰り返しているように見えても、手の力加減や糸の張り方によって仕上がりが変わります。
藤三郎紐の場所・アクセス
藤三郎紐の工房は滋賀県大津市逢坂にあります。
現在の国道1号から少し山側へ入った、逢坂山の歴史を感じる場所です。
- 店名:有限会社 藤三郎紐
- 所在地:滋賀県大津市逢坂1丁目25-11
- 電話:077-522-4065
- 京阪京津線・大谷駅から徒歩約15分
- JR大津駅から徒歩約30分
- 組紐体験:土曜日10:00から限定、要予約
工房へ続く道には急な坂もあるため、徒歩で訪れる場合は歩きやすい靴が向いています。
まとめ
藤三郎紐の歴史は、1867年に逢坂山で米屋を開いた初代・太田藤三郎さんと、妻しもさんが旅人向けに印籠の紐を販売したところから始まりました。
武具や印籠に使われていた組紐は、時代の変化とともに帯締めや羽織紐へ。3代目は草木染めを取り入れ、現在は4代目・太田藤三郎さんが150年以上続く技を守っています。
一方で、ストラップやネクタイ、体験プログラムなど、新しい形にも変化してきました。
何本もの細い絹糸を染め、整え、職人が組台の上で一本の丈夫な紐へ仕上げる。
大津・逢坂で江戸時代末期から続いてきた組紐は、古い技をそのまま保存するだけではなく、使い方を変えながら現在につながっている伝統工芸です。
参考リンク
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