【NNNドキュメント’25】お天道様に顔を向けて|元受刑者の“社会復帰”を支える女性の伴走とは(2025年7月14日放送)

NNNドキュメント’25

「お天道様に顔を向けて〜社会復帰の伴走者〜」

2025年7月14日深夜に放送された日本テレビのドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’25』では、「お天道様に顔を向けて〜社会復帰の伴走者〜」と題し、元受刑者の社会復帰を支援する湯浅さんの取り組みが紹介されました。再犯率の高い日本で、出所者が再び希望を持って生きられる道をどうつくっていくのか。そのヒントが番組の中にありました。

再犯率47%という現実に向き合うために

なぜ再犯が多いのか

番組の中で紹介されたのは、日本における出所者の再犯率が47%にものぼるという事実でした。背景には、社会に戻った後の孤立や無理解、居場所のなさがあります。住まいや仕事を得ることが困難な上に、過去の罪による偏見や差別にさらされることで、孤独を深め、再び犯罪に手を染めてしまうケースが少なくありません。

湯浅さんが感じた「刑務所の限界」

湯浅さん自身、過去に複数回の逮捕歴があり、最後には懲役刑を受けて刑務所に収監されました。刑務所では規則正しい生活や刑務作業が課されますが、依存症という根本の原因には触れられないまま刑期を終えることになります。湯浅さんは、その状態で出所しても、再び問題行動に戻るリスクが高いと気づきました。刑務所の中では、本や情報に触れることで知識を得ていったものの、「もっと早くこういう支援があれば違っていたかもしれない」と思ったといいます。

支援団体「碧の森」の誕生と活動

ブログから始まった支援の道

湯浅さんは出所後、依存症の知識や自身の体験を綴ったブログを始めました。すると、その文章に励まされるという声が届きはじめ、特に多かったのが受刑者の家族からのメッセージでした。「家族に何ができるのか」「どう支えていけばいいのか」と悩む人たちの声を受けて、湯浅さんは自身の経験を誰かの力に変えたいと感じるようになります。

そして2021年、出所者の社会復帰と孤立防止を目的とした団体「碧の森」を設立。刑務所での面会や文通のほか、裁判で被告人の立ち直りの可能性を語る情状証人としても活動を広げています。

支援のスタイルは「先回りしない」こと

湯浅さんは、「すべてを手助けしてしまうと、本人が自分で立ち上がる力を育てられない」と言います。あえてこちらから頻繁に連絡を取らず、本人から「助けて」と声を上げられるようになるのを待つ。それは自立を支えるためのやさしい距離感であり、依存症や犯罪歴を持つ人々に必要な「頼れる場所」を作る手法のひとつです。

依存症と知的特性、見えにくい苦しみに寄り添う

境界知能の診断を受けた男性の声

碧の森には、過去に覚醒剤使用で3回逮捕された55歳の男性も相談者として関わっています。この男性は、30代のころに仕事のストレスや性的関係の興奮を高めるためという理由で薬物を使用するようになりました。現在は、クリニックで治療を受けており、境界知能(知的発達に軽い遅れのある状態)であると診断されています。

このように、犯罪の背景には知的障害や発達障害、依存症など複合的な問題があるケースが多く、単なる「悪い人」として切り捨てるのではなく、適切な支援とつながりが必要だと湯浅さんは訴えています。

元詐欺犯が語る社会復帰のリアル

過去に詐欺で月収1000万円も

もう一人、番組に登場したのは23歳で詐欺と窃盗で逮捕された男性。高校卒業後から詐欺に手を染め、最大で月に1000万円以上を得ていたといいます。服役を経て出所後は、配送業として働き始めましたが、家を借りる際に過去の前科を理由に何度も断られるなど、社会の厳しさを体感しました。

湯浅さんとの出会いが支えに

知人との縁も切れ、孤立していた中で「碧の森」と出会い、定期的に開かれる会合に参加するようになったこの男性は、そこで新たな人間関係を築き、前向きに生きるヒントを得ました。社会復帰は決して簡単ではありませんが、「一人じゃない」と思えることが、次の一歩への原動力になるのです。

2025年の法改正と支援の新しいかたち

拘禁刑とは?

2025年6月、日本の刑罰制度が大きく変わりました。これまでの「懲役刑(作業あり)」と「禁固刑(作業なし)」を一本化した拘禁刑が導入され、受刑者の状況に応じて教育プログラムや支援が行いやすくなりました。

湯浅さんの団体では、こうした流れに合わせて、「前科者座談会」と呼ばれる場も設けています。これは、同じような経験を持つ人たちが集まり、互いに自分の思いや悩みを語ることで、孤立を防ぎ、前向きな気持ちを育てる場として機能しています。

湯浅さんの言葉に込められた想い

番組のラストで湯浅さんはこう語っていました。「物事をちゃんと見つめて向き合い続ければ、逃げたっていい。私も社会復帰できたんだから、あなただってできる」。この言葉には、彼女自身がどれほどの苦しみと向き合い、乗り越えてきたか、そして今、同じように苦しむ人たちにどう希望を手渡したいかという強い思いがにじんでいました。

人は失敗や過ちを犯しても、支えがあればやり直せる。再犯を防ぐために必要なのは「罰」ではなく、つながりと理解、そして伴走する存在なのだと、番組は教えてくれました。社会の中で「誰もが帰ってこられる場所」をつくることの大切さを、視聴者一人ひとりが感じ取れた内容でした。

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