世界一のバリスタが伝える「一投式コーヒー」完全解説
2025年11月1日放送の『オー!マイゴッド!』では、コーヒーの神・粕谷哲さんが登場し、「世界一美味しいコーヒーの煎れ方」と題して、画期的な『一投式コーヒー』を紹介しました。番組テーマは「ただお湯を入れるだけ!?」。一見シンプルに聞こえるこの方法は、実は長年の理論と実践の積み重ねによって生まれた、非常に奥深い抽出法です。
この方法は、面倒な手順を一切排除しつつ、家庭でも安定して美味しいコーヒーを淹れられるように考案されたもの。この記事では、粕谷さんの経歴から、一投式の仕組み・手順・理論・注意点までを、すべて事実ベースで詳しくまとめます。
粕谷哲さんとは
粕谷哲(かすや てつ)さんは、日本を代表するバリスタの一人。
2016年に開催された『World Brewers Cup(ワールド・ブリュワーズ・カップ)』で、アジア人として初めて世界チャンピオンに輝いた人物です。彼の理論的で再現性の高い抽出技術は、世界中のプロバリスタに影響を与えました。
彼が考案した『4:6メソッド』は、前半40%のお湯で味わいを作り、後半60%で濃度を調整するという理論的な淹れ方。このメソッドは「味を設計できる」ことから、国内外で広く取り入れられています。
その粕谷さんが、さらにシンプルで、誰でも失敗しにくい方法として提案したのが『一投式コーヒー』です。
一投式コーヒーとは
「一投式」とは、文字通り“お湯を一度だけ注ぐ”抽出法です。
従来のドリップでは、お湯を3〜5回に分けて少しずつ注ぐのが一般的ですが、一投式では全量を一度で注ぎきります。
この方法のポイントは、「お湯の温度」「注ぐスピード」「粉の粒度」の3要素を整えること。
注ぎ方を極端にシンプルにすることで、逆に味のバラつきを抑え、理想的な抽出バランスを得られるという理論に基づいています。
粕谷さん自身がSNSなどで「めんどくさいけど美味しいコーヒーが飲みたいときにおすすめ」と紹介しており、家庭でも再現しやすいことから大きな反響を呼びました。
一投式コーヒーの基本手順
以下は、粕谷さんの理論と複数の専門誌・取材記事で紹介された手順をもとにした、一般的な抽出方法です。
【準備】
・豆の挽き方:中粗挽き(ザラメ砂糖程度)。粉が細かすぎると詰まりやすく、粗すぎると味が薄くなる。
・粉の量:1杯(約200ml)あたり12〜15g。
・お湯の温度:浅煎り豆は約93℃、中煎りは約88℃、深煎りは約83℃が目安。
・使用器具:ハリオV60、カリタウェーブなど湯の流れが安定しやすいドリッパー。
・ペーパーフィルター:湯通しをして紙の匂いを取り除く。
【抽出】
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フィルターに粉をセット。
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お湯を「一度に全量」注ぐ(180〜200ml)。注ぐスピードは毎秒約20ml。
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中心から外側に向けて、均等にお湯を広げる。
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お湯を注ぎ終えたら、そのまま落ちきるのを待つ。途中で攪拌などは行わない。
【仕上げ】
抽出が終わったら、サーバーを軽く回して味を均一にし、すぐにカップへ注ぐ。
一投式コーヒーの理論的背景
一投式の理論は、粕谷さんの『4:6メソッド』の考え方に通じています。
ドリップコーヒーにおいては、注湯のタイミング・回数・速度によって、味のバランス(酸味・甘味・苦味)が変化します。
従来は、これを複数回の注湯で細かく調整していました。
一投式では、そのすべてを“お湯の勢いと温度”に集約し、1回の注湯で同じバランスを作り出すことを目的としています。
注ぐスピードを一定に保ち、粉全体に均等にお湯を行き渡らせることで、自然な抽出バランスを実現。
結果として、手順を減らしても「味の再現性」が損なわれにくくなります。
味の特徴
一投式コーヒーの味は、一般的なドリップと比べて次のような特徴が挙げられます。
・雑味が少なく、クリーンな口当たり
・まろやかな甘みと穏やかな酸味
・香りが立ちやすく、飲みやすい
お湯を一度で注ぐことで、コーヒーの粉が均等に抽出され、成分の偏りが少なくなります。
そのため、浅煎りでも深煎りでも、豆の個性を素直に引き出せる点が評価されています。
注意点と上達のコツ
一投式は非常にシンプルな分、基本動作の正確さが仕上がりを左右します。
・注ぐスピードが速すぎると、粉が十分に膨らまず、酸味が強く出る。
・遅すぎると、過抽出になり、苦味が強くなる。
・お湯を偏って注ぐと、味のムラが出やすい。
・ドリッパーの形状(円錐型・台形型)や材質によって抽出速度が変わる。
また、豆の焙煎度によっても味わいが異なるため、初めのうちは同じ豆で複数回試すと安定した結果が得られます。
一投式コーヒーのメリット
・作業工程が少なく、誰でも手軽に始められる。
・注湯回数が減るため、温度が一定に保たれやすい。
・抽出時間が短く、香りのロスが少ない。
・洗い物も少なく、日常のルーティンに取り入れやすい。
特別なテクニックを必要とせず、科学的な理屈に基づいて「再現性のある美味しさ」を目指せる点が、粕谷さんの哲学を象徴しています。
一投式と他の抽出法の比較
| 方法 | 注湯回数 | 抽出時間 | 味の特徴 |
|---|---|---|---|
| 一投式 | 1回 | 約2分 | クリアで甘みがある |
| 4:6メソッド | 4〜5回 | 約3〜4分 | 味の設計が細かく可能 |
| 通常のハンドドリップ | 3〜4回 | 約3分 | 安定性に技術が必要 |
この表からも分かる通り、一投式は「再現性」と「手軽さ」を両立した方法です。
一投式が広がる理由
粕谷さんの発信をきっかけに、SNSや動画サイトでも「一投式」を試すユーザーが増えています。
自宅でのコーヒータイムをより簡単に、かつ本格的に楽しみたい人々に支持されています。
その背景には、「誰でも同じ結果が得られるコーヒーの民主化」という粕谷さんの理念があります。
コーヒーの世界を“技術ではなく理論で共有する”という考えが、世界中のバリスタに影響を与え続けています。
まとめ
・『一投式コーヒー』は、注湯を一度だけ行う新しい抽出法。
・粕谷哲さんの理論に基づき、誰でも短時間で安定した味を再現できる。
・複雑な動作を省きながら、香り・甘み・酸味のバランスが取れる。
・再現性が高く、日常生活の中で続けやすい。
一投式は、単なる「時短テクニック」ではなく、コーヒーの本質を理解しながら美味しさを追求する新しいアプローチです。
その一杯には、世界チャンピオンの理論と哲学が凝縮されています。
出典:TETSU KASUYA公式サイト、家庭画報、MEN’S EX ONLINE、note、coffee roast club、日本テレビ『オー!マイゴッド!』(2025年11月1日放送)


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