広島カキ大量死の衝撃
このページでは「NNNドキュメント’26(2026年2月16日放送)」の内容を分かりやすくまとめています。
全国生産量の約6割を占める広島で、広島カキ大量死という深刻な異変が起きています。水揚げの9割が死んだ海域もあり、来季への影響も広がっています。瀬戸内海で何が起きているのか。産地の現状と原因の行方を丁寧に追います。
広島の養殖カキに起きた「大量死」異変
この回の中心は、瀬戸内海の養殖カキが「いつも通りに育たない」という、産地の切実な異変です。
全国有数の産地である広島で、水揚げしたカキの多くがすでに死んでいる海域が出ており、地域によっては“9割が死んだ”と報じられるほど深刻です。
ふだん、広島のカキは「冬のごちそう」として、家庭の鍋やフライ、飲食店のメニューを支えてきました。
その当たり前が、いま足元から崩れています。
番組は、海の上でカキを育てる現場の目線で、死んでしまうカキの量、収入の見通し、来季への不安まで、産地の現状を追う内容になっています。
9割が死ぬ海域も…生産者が直面する現実
「水揚げしてみたら、ほとんどが死んでいた」
こういう状況が続くと、出荷できる量が一気に減ります。
さらに苦しいのは、被害が“今シーズンの分だけ”で終わらない可能性がある点です。
番組情報でも、来季水揚げ予定のカキにまで影響が及んでいる、とされています。
養殖カキは、海に入れてすぐ商品になるわけではありません。
1年もの、2年もの、という言い方があるように、育つ時間が必要です。
だからこそ、途中で大量に死ぬと「今年がダメ」だけでなく「来年も不安」が重なります。
実際、岡山では調査で1年もの・2年ものの死亡率が高い結果も報じられ、被害が広島だけの話ではないことが見えてきます。
なぜ起きたのか:疑われる要因と調査の動き
番組の大きな軸は、「原因は何なのか」です。
現時点で“これが原因だ”と一つに断言しにくいからこそ、産地は苦しんでいます。
報道ベースで挙げられている有力な見立ての一つが、海水温の上昇です。
広島沿岸では、カキの養殖に大事な時期(夏〜秋)の海水温が平年より高かった、というデータにも触れられています。
また、少雨などの天候の偏りが、海の栄養バランスやエサ(プランクトン)に影響しうる、という見方も複数の報道で出ています。
こうした状況を受けて、国や自治体が原因調査や支援を進める動きも報じられています。
ここで、背景の知識を少しだけ足すと、カキは海の中の小さなエサをこし取って育つ生き物です。
だから海が“暑すぎる”“エサが足りない”“海の状態がいつもと違う”となると、体力が落ちたり、弱ったところに別のストレスが重なったりしやすくなります。
番組は、この「原因が一つではなさそう」という苦しさを、現場の声とともに描こうとしている回です。
広がる影響:岡山・兵庫・香川へ波及
番組情報の時点で、被害が岡山・兵庫・香川などにも広がっていることが示されています。
実際に香川でも、県の調査で被害が確認されたという報道があり、イベント中止など“地域のにぎわい”にも影響が出始めています。
カキは、ただの名産品ではありません。
海の仕事、加工場、運送、飲食店、観光の冬メニュー。
いろんな人の暮らしが、一本の糸でつながっています。
その糸が、いま静かに切れかけている。
番組が伝えようとしているのは、まさにそこです。
打開策はあるのか:支援策と産地の模索
番組は「打開策はないのか」「養殖業は存続できるのか」という問いを真正面から置いています。
国の機関などが対策・支援をまとめる動きが報じられており、調査と同時に“産地が続けられる形”を探す段階に入っています。
一方で、現場はすぐに結果がほしいのが本音です。
「原因が分からない」「次の季節が来てしまう」
その時間の速さが、生産者の不安を大きくします。
だからこそこの回は、科学の話だけで終わらず、海の上で手を動かし続ける人の暮らしとして、カキ大量死の重さを伝える内容になっています。
広島が日本一の産地になった理由

ここであらためて、番組の背景として知っておきたい事実を紹介します。広島は全国の養殖牡蠣生産量のおよそ6割前後を占める最大産地です。この数字は長年にわたり日本一を維持してきた実績を示しています。その理由は、単に歴史が長いからではありません。海の条件そのものが、牡蠣を育てるのに非常に適しているからです。広島湾の環境と、そこで培われた養殖の積み重ねが、今の地位をつくってきました。
波が穏やかな広島湾
広島湾は瀬戸内海の一部で、大小さまざまな島に囲まれています。そのため外海からの大きな波が入りにくく、海面が比較的おだやかです。この穏やかな環境は、いかだを浮かべて牡蠣を育てる養殖方法に適しています。強い波が少ないことで、いかだやロープが安定し、牡蠣が落ちにくくなります。また、潮の流れも極端に速すぎず、ゆるやかに海水が入れ替わるため、牡蠣にとって負担の少ない環境が保たれてきました。こうした地形の特徴が、広島湾を養殖に適した海域にしてきたのです。
栄養塩が豊富な海の仕組み
広島湾には太田川など複数の河川が流れ込んでいます。川から運ばれる栄養塩は、海の中で植物プランクトンを増やします。牡蠣はそのプランクトンをこし取って食べる生き物です。つまり、海の中にエサが豊富にあることが、成長の速さや身入りの良さにつながります。広島湾はこの栄養の循環が安定している海域として知られてきました。山から川へ、川から海へとつながる自然の流れが、長年にわたり牡蠣の育成を支えてきました。こうした環境条件が重なり、広島の牡蠣は質・量ともに日本を代表する存在となってきました。
歴史と技術の積み重ね
広島で本格的な牡蠣養殖が広がったのは明治時代以降です。長い年月の中で、いかだ式養殖の技術が改良され、効率よく育てる方法が確立されてきました。種苗の管理や出荷の選別技術も進み、全国に安定供給できる体制が整えられました。冬になると市場や飲食店に並ぶ広島産牡蠣は、こうした歴史と努力の積み重ねの上にあります。だからこそ今、広島の牡蠣に起きている異変は、日本の食卓全体に関わる出来事でもあります。長年築いてきた産地の強さがあるからこそ、今回の危機の重さがいっそう際立っています。


コメント