別所哲也が福山で還暦記念旅!バラとデニムのまち広島・福山を満喫
2025年6月22日放送の『遠くへ行きたい』では、俳優の別所哲也さんが広島県福山市を訪れ、還暦を迎えた記念旅としてバラの庭園や紙ヒコーキ博物館、そしてデニムの産地としても知られる福山の魅力をたっぷり紹介しました。自然、歴史、技術、ものづくりと、多彩な魅力がつまった旅となりました。
ばらのまち・福山の温かさに包まれて
福山はバラのまち ばら公園と市民の思い
旅の始まりは、広島県福山市のばら公園からです。ここは、福山市が全国に誇る「バラのまち」の象徴として、市民に長年親しまれています。園内には約280品種、5500本以上のバラが植えられており、色とりどりの花々が広がる光景は訪れる人の心を和ませてくれます。
このバラ文化は、1956年に市民の手で1000本のバラ苗木が植えられたことに始まります。戦後の復興期、福山は福山大空襲で市街地の多くを失った背景があり、そこから立ち上がるために「市民の手で花のまちを作ろう」と始まった取り組みでした。
現在、福山市内では以下のような場所にもバラが植えられています。
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小学校や中学校の敷地
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幹線道路の中央分離帯や歩道脇の植え込み
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公園、公共施設の入口や広場
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一般家庭の庭先や商店街の花壇
毎年5月には「福山ばら祭り」が開催され、2日間でおよそ50万人が訪れると言われています。この祭りは市民によって運営されており、地域のボランティアや学生も参加しながら、バラを通じて人と人とがつながる場となっています。
また、バラは「平和」「再生」「希望」の象徴としても親しまれており、まちの景観だけでなく、心の支えとしての役割も果たしています。福山駅や福山城の周辺にもバラの花壇が整備され、訪れた人が自然と足を止めたくなるような、美しい風景が作られています。
このように福山市では、バラは単なる花ではなく、「市民の思いと歴史が根付いた特別な存在」となっており、今もなお新しい世代へとその文化が受け継がれています。
マチモトバラ園で味わう食用バラ
次に訪れたのは、無農薬で食用バラを育てている「マチモトバラ園」です。ここでは、農薬や化学肥料を一切使わずに、自然に寄り添いながらバラを育てています。虫による被害もありますが、それを受け入れながら、手間を惜しまずに夫婦二人三脚で栽培している姿が印象的です。
・栽培されているのは、香りが豊かで食用に適した品種のバラ
・花びらは毎朝、開ききる前の一番香りが立つ時間帯に手摘みで収穫
・農薬を使わないことで、安全に口にできるバラとして販売
園内では、そんな朝摘みのバラを使って作られた「バラジュース」が提供され、ほんのりピンク色のジュースは、見た目にも華やかで優しい香りが広がります。香料や甘味料は加えず、素材そのものの風味を生かしていて、花をそのまま飲んでいるような不思議な感覚です。
さらに、園内ではバラティーも提供されています。乾燥させた花びらを使ったこのお茶は、ほんのりと甘く、口の中に花の香りがふわっと広がります。ティーカップに浮かぶバラの色合いも美しく、味だけでなく視覚でも楽しめるのが特徴です。
・ジュースやティーの提供場所は、園内に設けられた小さなカフェスペース
・バラのアーチや花壇の中で、花を眺めながら味わえる環境
・晴れた日には、バラの香りが風にのって園内全体に広がる
このバラ園では、ただ花を鑑賞するだけでなく、味や香り、色彩までも体験できるのが大きな魅力です。見て、嗅いで、飲んで、まさに五感すべてで楽しむバラ体験ができる場所でした。農薬に頼らないという選択が、結果としてバラ本来の力を引き出し、それを訪れる人が体で感じ取れるようになっています。丁寧に育てられたバラが放つ生命力が、園全体にあふれていました。
歴史が息づく福山城と鉄板の秘密
次に訪れたのは、広島県福山市の歴史的なシンボルである福山城です。市の中心部に堂々と建つこの城は、訪れる人を過去へと誘うような風格を持っています。天守閣に登ると、福山市の街並みが一望でき、城下町の名残や整然とした都市の景観が見て取れます。
なかでも注目されたのは、天守閣の北側に設けられた黒い鉄板の壁です。これは江戸時代初期に、徳川幕府が外様大名を見張るための構造として設けたもので、全国の城でもほとんど例のない非常に珍しい防御形式となっています。
・鉄板は敵の攻撃に備える防御強化の役割があり、鉄製の板が外壁に打ち付けられている
・福山城が1619年(元和5年)に水野勝成によって築城された際に取り入れられた技術
・この鉄板構造は、幕府の意向を色濃く反映した政治的な意味合いも含んでいた
しかし、1945年の福山大空襲によって、福山城の建物の大部分は焼け落ちてしまいました。当時の鉄板も一部が焼け焦げるなどの被害を受けましたが、再建後の福山城では、その焼けた鉄板の一部が保存展示されています。現在では、戦災の痕跡としてだけでなく、江戸から続く城の歴史と町の記憶を伝える貴重な遺産となっています。
・再建された天守は1966年に鉄筋コンクリートで再建され、今は福山城博物館として公開
・内部では藩政時代の資料や甲冑、古地図などの展示が行われている
・鉄板の一部は展示スペースで間近に見学可能で、戦災と復興を語る重要な証しになっている
この福山城は、防御のためだけでなく、地域の誇りと記憶を未来へつなぐ場所として存在しています。徳川政権下の建築技術と、戦後の復興にかける市民の思いが、ひとつの空間に共存している姿は、訪れる人に深い印象を与えていました。
子どもも大人も楽しめる紙ヒコーキ博物館
次に訪れたのは、広島県福山市にある紙ヒコーキ博物館です。この場所は、ただの遊び場ではなく、紙飛行機の奥深さや技術の魅力を知ることができる学びの場でもあります。館内にはさまざまな形や大きさの紙飛行機がずらりと展示されており、その多くは館長の戸田さん自身が制作した作品です。
戸田さんは、札幌ドームで29.2秒の飛行時間を記録し、ギネス世界記録を持つ紙ヒコーキ名人。紙1枚の設計から飛行バランスまで、全て手作業で調整されており、その精度の高さに驚かされます。
・展示されている飛行機の中には、3メートルを超える巨大な作品もある
・紙の厚さや折り方によって、飛距離・滞空時間・安定性が変わることが説明されている
・過去に制作された飛行機は、子どもでも楽しめるようカラフルなデザインも多い
この日、別所さんも実際に紙ヒコーキ作りに挑戦。折り方を学び、バランスを整えたうえで、体育館に場所を移して実際に飛ばす体験を行いました。飛行時間は4秒でしたが、紙一枚が空を舞う感動と、その背後にある工夫や技術の面白さを肌で感じることができる貴重な時間となりました。
・体育館では、戸田さんの弟子による実演飛行も披露され、飛行の美しさが際立った
・記録を出すためには、無風状態での広い空間が必要で、実際の記録は札幌ドームで達成された
・飛行後には、滞空時間や飛行の軌道についての解説もあり、楽しさと学びが融合していた
この博物館は、紙という身近な素材がもつ可能性や工夫の大切さを伝えてくれる場所です。子どもたちにとっては自由な発想を育む体験の場、大人にとっては懐かしさと驚きが同居する空間となっています。紙ヒコーキというシンプルな遊びの中に、夢や技術が詰まっていることを改めて感じられる時間でした。
日本一の生産量を誇るデニムのまち・福山でジーンズ作り
広島県福山市は、国産デニムの生産量が日本一を誇る地域として知られています。今回、別所哲也さんが訪れたのは、福山市内にあるデニム工房「ミルクリエイト」。ここでは、職人の手で一点一点丁寧に仕立てられるフルオーダーデニムが生み出されています。
この工房では、「プロジェクトボレーガ」という名のもと、オリジナリティあふれるデニム商品を展開しています。スタッフ一人ひとりが製作工程に深く関わり、大量生産ではできない細やかな対応や仕上がりを大切にしているのが特徴です。
・依頼者の体型や好みに合わせて、デザイン・サイズ・カラーなどを自由に選択可能
・デニム地は使い込むほどに味が出るよう、高品質な国産素材を使用
・裁断から縫製、洗い加工に至るまで、すべての工程に専門の職人が携わっている
福山市の特筆すべき点は、こうしたデニム製造に必要な全工程が市内の徒歩圏内で完結できることです。たとえば、ジーンズのボタンホールだけを専門に行う工房、ベルトループのみを縫製する工房、裾上げや洗い加工を担当する業者などがそれぞれ存在し、地域全体で一着のジーンズを完成させているというしくみになっています。
・部品ごとに異なる工房が担当する「分業制のものづくりネットワーク」
・工程間の移動がスムーズで、無駄が少なく、効率的かつ高品質
・それぞれの職人が自分の役割に誇りを持ち、高度な技術を日々磨いている
別所さんも実際に、自分だけのオリジナルジーンズをオーダー。丁寧に仕立てられたズボンを受け取り、現地で試着すると、その履き心地の良さとシルエットの美しさに感心していました。職人技と地域の連携が詰まったジーンズは、ただの衣服ではなく、“着る喜び”を届ける一着として感じられました。
このように、福山市ではデニムがただの産業ではなく、地域の文化やアイデンティティとして根付いていることが、現場を訪れたことでより深く伝わってきました。今後も世界に誇れるデニムのまちとして、多くの人にその魅力が伝わっていきそうです。
福山の文化・歴史・技術が詰まった心に残る旅
今回の『遠くへ行きたい』では、バラとともに生きる街・福山のやさしさと美しさ、歴史の重みを感じる城、未来への遊び心を育てる紙ヒコーキ博物館、そして世界に向けた技術力と情熱が伝わる企業の取り組みまで、幅広い魅力が紹介されました。別所哲也さんの落ち着いた語り口とともに、還暦を迎えた人生の節目にふさわしい、心温まる旅の様子が映し出されました。
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